勉強で成果を出す子と、そうでない子の決定的な違いとは?(写真:Fast&Slow/PIXTA)

【質問】

中2の息子がいます。先日2学期の成績が出ました。結果は1学期と変わらず、ほぼオール3でした。2学期の初めには「2学期は頑張る!」と言っていたものの、これまでと変わらず、口ばっかりの子に私はモヤモヤします。このまま陰ながら様子を見ていていいのか、それとも子どもにもっとサポートをしたほうがいいのでしょうか?

仮名:小倉さん

子どもが言う「頑張る」は信頼できない

3学期制の学校では、先ごろ成績が出たところですね。各家庭では喜び、落胆、イライラ、怒りなどさまざまな感情が渦巻いたことでしょう。そのようなとき、親と先生が子どもに求める典型的な言葉があります。それが「頑張る」です。

筆者はこれまで35年間にわたり、中学生に勉強や勉強法を指導してきましたが、子どもが言う「頑張る」という言葉ほど信頼できないものはないと感じています。

学校の面談で、生徒は先生から今学期の振り返りと次学期の目標を問われ、「次は頑張ります!」という言葉で締めくくることが少なくありません。なぜか大人たちはこの言葉を聞くと安心するようですが、この言葉どおりに実行する子は非常に少ないものです。なぜそのようなことが起こるのでしょうか。

親や先生から、「次はどうするんだ!」と言われると、その後のやりとりの面倒さを避けるために子どもはとりあえず「頑張る」という言葉を使って早く切り上げる傾向にあります。その言葉を真に受け、「頑張ると言ったよね!」と子どもを問い詰める大人もこれまでたくさん見てきました。

一方で子どもが本気で「頑張る」と言っていたとしても、一時的なその場の気分の高揚によって発言していることが少なくありません。その気持ちが持続することはないため、実質的には頑張っていない状態になるわけです。

このように、子どもが親や先生から問い詰められて“言わされた”「頑張る」という言葉はあてになりません。しかしこれは、子ども側に問題があるという意味ではありません。

さて、ここからが本論です。

勉強で成果を出す子たちはココが違う

勉強で成果を出す子たちは、頑張るという言葉を発言するよりも、次の共通した3つのことをやっています。それを知らないと、親は子どもを頑張らせればいいと勘違いをしてしまうことになります。

そこで、今回ご相談くださった小倉さんには、「子どもが自ら勉強するようになり、結果も出していく」ために必要な3つの条件についてお伝えします。ちなみに勉強の成果は次の「3つがすべて揃ったとき」に出ます。どれが欠けてもうまくいきません。

(1)勉強に対するモチベーション(やる気)
(2)成果を出す勉強法(勉強のやり方を知る)
(3)結果につながる教材(何を使って勉強するのか)

(1)勉強に対するモチベーション

この1つ目が最も難しいと思うかもしれません。確かに「やる気」と言われるこの要件をクリアしないといくら勉強しても伸び幅は小さくなります。これまで筆者は5000人以上の中学生の指導を直接行ってきましたが、その中で自分を伸ばしたくないと思っている生徒に1人も出会ったことがありません。つまり、全員が自分を伸ばしたいと思っていました。不登校の子たちともたくさん話をしました。彼らも自分を伸ばしたいと思っています。では、なぜやる気が起こらないのでしょうか。

それは「希望」がないからです。「目の前の勉強1つやったところで何になるのか?」「やったところで自分が成長しているという実感はまったくない」「意味がないことをいくらやっても時間の無駄」と思ってしまうわけです。こうなったら、希望ではなく絶望しかありません。しかし話をすると、子どもたちの心の奥には希望があることがわかります。それを引き出せばいいのです。

そのためには、「やる気は、自分が成長しているという実感が得られたときに湧き起こる気持ち」であることを大人側が理解しておくことが大切になります。

成長実感を得るための方法はいくつもありますが、今回は次の方法を試してください。

「伸びている部分」を探す

成績が上がっていない部分に焦点を当てるのではなく、「伸びている部分」に焦点を当てます。オール3でまったく変化がなければ、成績表のコメント欄で評価が高い部分や、テストでできるようになった部分を褒めます。

それらも一切ないと思う場合は、ただ見えていないだけです。子どもをよく観察していれば、プラスの部分を感じるはずです。ないことはありえません。

極論を言えば、中1より中2の内容のほうが難しくなっているので、同じオール3ということは、成長していることになります。このように成長している部分を言語化して伝えることから、やる気というものが芽生えてきます。欠点の指摘からはやる気は出ません。

(2)成果を出す勉強法

やる気が出たとして、次に必要なことは、成果が出るための勉強法です。筆者は中学生に勉強法講座を行っていますが、勉強の方法を教わったことがない子どもたちがけっこういて驚きます。一方、高得点を取っている子たちは、ほぼ同じ勉強のやり方をしています。実践すれば最短時間で点数につながる、ゲームのように “攻略法”があるのです。しかしそれが広まることはありません。このようにして成果が出る勉強法は一部の子たちの“秘密”として閉じ込められてしまうのです。

筆者の最新刊『中学生の勉強法ver.2.0』でも述べているとおり、最も確実な方法は、テストの2週間くらい前に学校の先生に「どのように試験勉強したらいいですか?」と聞きに行くことです。実技系の科目も同じです。

「試験に出る部分」でも「どこを勉強すればいいか」でもなく、「どうやって試験勉強をしたらいいか」を聞きに行くのです。先生は快く教えてくれるはずです。

(3)結果につながる教材

テストには試験範囲があります。ほとんどのケースでは学校で使用している教科書、問題集、授業プリントなどの教材から試験が作られます。逆に言えば、市販の問題集をいくらやっても点数は伸びないということになります。そのような教材は、学校の教材がマスターできた後に時間が余ったら行うものであって、それを疎かにして、教科書準拠ではない市販の問題集や学校の授業とはかけ離れた教材ばかりやっていても学校のテストの点数にはつながりにくいものです。

努力が報われる具体的方法を知る

以上、3つの条件についてお伝えしてきましたが、これらを直接子どもに伝えたいと親は思うかもしれません。もちろん伝えてもらってもいいのですが、子どもは親からの勉強に関する提案やアドバイスを受け入れないことが少なくありません。つい親はやらせようとして上から目線になってしまったり、指示・命令・脅迫・説得モードで言ってしまったりすることがあるからです。


親のアドバイスによって成功したら、その成果は親の手柄になり、自分の努力の結果ではないと思う子もいるぐらいですから、親子関係では勉強に関して面倒なところがあります。ですから「中学生以上の場合、子どもの勉強には親は介入しないように」と筆者はよくお伝えしていますが、それでは親のイライラやモヤモヤはいつまでも解消することがないかもしれません。そのため、(1)勉強に対するモチベーションを実践された後に、(2)成果を出す勉強法と(3)結果につながる教材を伝聞形(〜らしいよ)と伝えてみてください。第三者の話として伝えると子どもの心に響くかもしれません。

繰り返しになりますが、筆者の経験上どのような子どもたちも自分を伸ばしたいという「希望」を持っていると感じています。その希望が前面に出てくるためには、努力が報われる具体的方法を知る必要があります。
以上、参考になれば幸いです。


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(石田 勝紀 : 教育デザインラボ代表理事、教育評論家)