今後の為替相場はどうなるのでしょうか(写真:Graphs / PIXTA)

一時は152円に迫るも反転し、12月中旬時点では140円台前半まで下落した2023年後半のドル円相場。この動きを大局的な視点で見た場合、どこに向かうのか。独自の分析による長期予測で定評のある、ワカバヤシ エフエックス アソシエイツ代表取締役の若林栄四氏による最新刊『The Ultimate Prediction 2028年までの黄金の投資戦略』を一部抜粋・再構成し、解説します。

※本記事は、上記書籍発行時点での情報に基づいて執筆されたものです。

ドル円相場を支配する16.5年ルール

ドル円相場の今後の為替動向については割合に簡単であると思う。まずは以下のドル円年足チャートをご覧いただきたい。

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください


(図:本書より引用)

ドル円で1ドル360円と決めたのは1949年4月。ここから日柄が始まっている。ここを起点にちょうど29.5年目(59単位の半分)の日柄だった1978年10月、177円までドル安円高になった。

オイルショックを早くも克服した日本と、のろまのアメリカの差が円高を説明するナラティブとして使われ、アメリカではドル暴落の危機が高まることを恐れ、先進国によるドル買い協調介入が実施された。これをカーターショックと名付けている。

それからはチャートを見てのとおり、カーターショックから16.5年後の1995年4月に次の安値、79円75銭の記録的なドル安を記録した。今度はそこから16.5年が経過、日本が東日本大震災に見舞われた2011年10月にドル最安値、75円53銭となった。

これまでのパターンをフォローすると、今度のドル安円高はいつなのかが浮かび上がってくる。

答えは実にシンプルで、そこからさらに16.5年を加えればいいわけだ。2028年4月前後にドル安値がやってくるのを弾き出すことができる。

こうした16.5年ルールについては、おおむね162の黄金律を援用した16.2年、あるいは540÷32=16.875年の場合もある。決して誰かが決めているのではない。筆者自身は、宇宙のルールであるからと納得している。

別にFRBが偉いのでも、誰か特別に権力を持った人が無理やりに為替相場を動かしたわけでもなんでもない。自然にこういうふうになっていくとしか表現しようがない。

次にドル円の高値のほうを見てみよう。チャートの左上のほうに視線を移してほしい。1949年4月にドル円の日柄がスタート、そこから約33年後(約16.5年の2倍)の1982年11月に278円のドル高値をみている。

そこから今度は15年9カ月後の1998年8月に147円のドル高値となった。

これは16.5年よりも若干短いのだが、その次の125円の高値を打ったのが16年10カ月後、2015年6月となった。この2つを合わせると32年7カ月となって帳尻が合う。

したがって、このルールに従うならば、次に到来するドル高円安の時期は2032年あたりとなる。ということで、先に示したドル安円高のルールと併せて勘案すると、2028年の4月頃に向けて強烈な円高が進み、その後は2032年にかけて円安に戻っていく。これがドル円為替の大局観である。

どの通貨に対しても行き過ぎた円安状態

ところで、いま我々はどのような為替のステージにいるのだろうか? 

2022年10月21日に151円95銭というとんでもないドル高値となった。なぜか。その理由を、掘り下げて考えてみよう。

ここで俎上に上げたいのが1995年の4月。これは1968年の米ドル紙切れ化から27年が経ったところであった。27は54の半分だから、日柄分析における大事な数字だ。そのちょうど27年目に超ドル安が起こった。

相対的に滅茶苦茶な円高、超円高と当時言われたものだが、どれぐらい円高だったかと言うと、80円を割って79円台となった。日本のGDPはこのとき、1995年には500兆円程度であった。日本のそれはいまでも500兆円程度だから、この27年間、いったい日本は何をやってきたのかと揶揄される所以でもある。

同じ1995年のアメリカのGDPは7兆ドルだった。当時の為替はどうだったかというと、1ドル80円をちょっと切っていた。1ドル80円で換算すると、80円×7兆=560兆円である。つまり、アメリカのGDP560兆円と日本のGDPが500兆円で拮抗していたのだ。

信じられないが、アメリカと日本のGDPがほぼ並んだ。これは為替相場が1ドル80円と異常に歪んだことからこそ、こうした格好となった。

それはこういうことである。アメリカのような大国と日本とのあいだで、通貨の換算率が異常に捻じ曲がってしまった結果、両国のGDPがほぼ同等の約500兆円になったわけだが、これは冷静に考察するならば、この当時にいかに円高が無理矢理進んでいたかを映し出している。

それではいまはどうなのか。そこから27年が経過した。今度は27.5年で半年ずれたが、2022年10月になると151円95銭と、1995年4月時とは真逆に壮烈な円安となった。ここで述べる円安とは、別に1ドル140円が円安という意味でなく、相対的に世界のどんな通貨に対しても円が弱い、円全面安になってしまったということである。そしてこれが2022年初めからの円の実態といえる。

27年のサイクルで起こっている


要は異常な円高から27年が経って、壮烈な円安になったわけで、今後はおそらく、反動の超円高に向かっていく。相場とはすべて循環に支配されているから、基本的に行きすぎたらまた元のサヤに戻るわけである。それが27年のサイクルで起こっている。

いまの時点においては140円台を挟んで動いているとはいえ、今後は2028年に向けてひたすらに円高が進行する。今度再び、前回の1ドル80円のようにべらぼうな円高になってしまう可能性があるということだ。筆者自身は、1ドル72〜65円あたりまでのドル安円高になると言及している。

それは1ドル360円時代からの計算より弾き出した数字であり、2028年の4月に72〜65円まで円高になるというビッグピクチャーである。

ここまで記してきたように、為替相場をはじめとする相場とは、毎日の金利動向だとか、パウエルFRB議長が何を言ったか言わなかったとかとは、まったく関係のない世界なのである。

要するに相場とは、宇宙のルールに則ってきれいに循環している。それだけの話なのだ。そのいわば儀式的循環がどういうふうに行われているのか。それを見つけ出すために黄金律というツールを使う。そういうふうに申し上げておこう。

(若林 栄四 : ワカバヤシ エフエックス アソシエイツ代表取締役)