日本一の漫才師を決める頂上決戦「M-1グランプリ2023」が12月24日に開催される。今大会では、敗者復活戦の大幅なルール変更や、新・審査員に海原ともこさんが加わることが発表され、女性審査員2人体制になるなど、早くも話題を呼んでいる。

今回、「M-1グランプリ2023」の優勝者を予想してくれるのは、人気声優の久保ユリカさん。普段から、劇場に通ったり、芸人のラジオを視聴しているという生粋のお笑いファンの彼女に、今年の優勝者をがっつり予想してもらいました!

 

久保ユリカ●くぼ・ゆりか…5月19日生まれ。奈良県出身。声優・歌手。これまでの主な出演作に「青春ブタ野郎」シリーズ(梓川かえで役)、「ハイスクール・フリート」シリーズ(知床鈴役)、「せいぜいがんばれ!魔法少女くるみ」(プリマピンク(安土桃山くるみ)役)、「少女終末旅行」(ユーリ役)、「りゅうおうのおしごと」(水越澪役)、「ようこそ実力至上主義の教室へ」シリーズ(櫛田桔梗役)、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」シリーズ(ロキ役)、「大家さんは思春期!」(里中チエ役)、「ラブライブ!」シリーズ(小泉花陽役)など多数。X(旧Twitter)/Instagram/YouTube

 

 【久保ユリカさん撮り下ろし写真】

 

「関西弁を摂取したい…!」東京に出てきて気づいた、当たり前にお笑いがあった日々

──まずは、久保さんがお笑いを好きになったきっかけを教えてください。

 

久保 私は奈良県出身なのですが、やっぱり関西の人がよく言うように、当たり前にお笑いを見ていた環境だったんですよね。テレビをつけたら漫才をやっているとか吉本新喜劇が放送されているという。なので、好きだからわざわざ見ようって感覚は当時は全然なかったんです。でも、東京に出て来てから、例えばシャンプーハットさんの番組が放送されてなくて、びっくりしました(笑)。

 

──関西で当たり前に見ていたお笑いが、東京では放送されていなかった。

 

久保 そうなんです。今まで自然に受け入れていたお笑い番組が関西ローカルだって知ったときは、驚きでした! そこから「関西弁を摂取したい……」という時期が来て、チュートリアルさんやライセンスさんのトークイベントの映像などをラジオ感覚でよく見ていましたね。

 

──当時は、劇場に見に行ったりもしていたんですか?

 

久保 いえ、ちょくちょく足を運ぶようになったのは、実はコロナ禍前くらいからなんですよ。奈良にいた頃も、テレビをつければお笑いを見れる環境だったのもあって、自分から生で見に行ったことはほぼなくて。すごくもったいないことをしていたのかもな、と後から気づきましたね。当時は、和牛さんを応援していて、よく通っていました。なので、今はあの頃を思い出して、ちょっと寂しい気持ちにもなったりして……。

 

──先日、和牛さんは解散を発表されましたよね。

 

久保 悲しいという気持ちもありますが……お2人の今後も応援したいと思っているところです。応援している方には、会える時に、会いにいこうと思いましたね。

 

 

生で見るお笑いの良さ。「知らない芸人さんを知れるのが楽しい!」

──ちなみに、コロナ禍になってからは、どう過ごされていたんですか? 劇場ライブが減ってしまったと思いますが。

 

久保 はい! ですが、代わりに、配信ライブが増えたんですよ。なので、そちらを見るようになりました。コロナ禍でみんな平等にできることが減ってしまった状況の中で、自分一人でも楽しいことがしたい、楽しいものが見たい、と感じるようになって、その選択肢の1つに配信ライブがありました。その期間があって、コロナが落ち着いてからも、引き続き劇場に足を運んでいます。

 

──やはり生で見るお笑いは楽しいですか?

 

久保 テレビで見るのとは違いますよね。劇場に行くといろんな芸人さんを知ることができますし。それでなのか、分からないですが、自分の意志で見に行くようになってから、視野が広がった気がするんです。私は一度好みじゃないかなと思ったら、一生好きにはなれない頑固なタイプだと思っていたんですけど、今では“知らない感覚だ”とか“変な人だ!(笑)”という捉え方をするようになって。好みやセンスが1人ひとり違うのは当たり前ですが、それ拒絶せずに一度受け入れようと思うようになりました。

 

──それは、さらにお笑いを見ることが楽しくなりそうです。

 

久保 まさにそうで、以前は特に刺さらなかったコンビが、後々また見て「え、めっちゃ面白いかも!」って変わっていたりして。より楽しませていただきながら、日々過ごしています。

 

「M-1グランプリ2018」を見て……「毎年緊張して、落ち着いて見れないんです(笑)」

──さて、いよいよ「M-1グランプリ2023」が開催されます。過去の大会で印象に残っている年などはありますか?

 

久保 毎年見てはいるのですが、誰が優勝するか、どんな点数なのか、意識して見るようになったのは霜降り明星さんが優勝した2018年大会からですね。ファイナルに残ったのは、他に和牛さんとジャルジャルさんで。今でも弱ってるときに見ると涙がこぼれてしまうくらい、熱い戦いでした……。思い出に残りすぎてDVDも買っちゃいました(笑)。

 

──印象的な年でしたよね。

 

久保 霜降りさんの勢いと場の空気をガラリと変えた感じは忘れられません。でも、ジャルジャルさんはラストイヤーで気合が入っていて、和牛さんも積み上げてきたものをしっかり発揮されていて……。優勝発表の直後に、和牛の水田(信二)さんとジャルジャルさんが肩を叩いて、称え合っていたのもグッときました。そういう青春感に弱いんですよね……。あの時から、どのコンビにも優勝してほしいけど、誰か1組決めなきゃいけない、それがM-1なんだって意識するようになって。

 

──全員実力はお墨付きですが、やはり賞レースですから最後には明確な順位が決められてしまいます。

 

久保 それで次の年から、何もしない自分まで緊張するようになってしまって(笑)。今まで楽しみだね〜って見てたのに、改めてすごい大会なんだって気づいてしまった。もう落ち着いて見れなくなっちゃいました……!

 

──今年も緊張していますか?

 

久保 はい……ドキドキです。でも今年はクリスマスイブに開催されるじゃないですか。私は、ちょうど自分のイベントでリアルタイムで見れないんですよ! なので、完全に情報をシャットダウンしようと思っています。結果を知らないまま、録画を見れるか……今年はその緊張もありますよ(笑)。

 

決勝進出コンビ9組を解剖。久保さんは「声」に注目!

──それでは、今年の「M-1グランプリ2023」についてお話いただければと思います。まずは、ランダムにコンビを上げてもらい、ネタの印象などを教えてください。

 

【1組目】くらげ

久保 まずは、くらげさんから。実は勉強不足で恐縮なのですが、今回の決勝進出コンビの中で、くらげさんだけ存じ上げてなくて。発表後に、さっそくYouTubeチャンネルでアップされているネタを拝見させていただきました。第一印象としては、見た目と漫才スタイルでギャップがあってちょっと驚きまして…!

 

──ツッコミ担当の渡辺翔太さんのアロハシャツは印象的ですよね。

 

久保 アロハな雰囲気で、勝手にネタっぽい感じなのかしらって思い込んでしまっていたんですけど……良くないですね(笑)。テンポの良いしゃべくり系漫才をされていました。それでいて、ネタの内容はポップで分かりやすい。ポンポンと掛け合いが続いて、心地良かったです。

 

──くらげさんは、いつも新しいシステムや構成を編み出していて、どんなネタをしてくれるのか毎回楽しみなコンビです。

 

久保 いくつか動画を拝見させていただいたのですが、違ったタイプの構成の中でも、どれも共通してワードチョイスがいいなと感じましたね。いい意味で、言葉の選び方がちょうどいいというか。例えば、強い特徴のあるワードが入っていると、何かの伏線なのかなって思って気になっちゃうと思うんですよ。でも、聞きなじみある単語とバランスの取れた会話で、すんなり次のターンに入れている印象がありました。

 

──なるほど! ネタの構成ももちろんですが“言葉選び”も得意なコンビというのは、確かにそうかもしれません。

 

久保 もしかしたら今回の大会で初めて見る方も多いかもしれませんが、テレビの前の方にも親しみやすい漫才なんじゃないかと思います。クリスマスイブに放送されるので、ご家族で見る方も多いと思うんですよ。もしそういった部分まで考えられて、ネタ作りされていたらすごいなと思ってしまいますね。私的には、いつか劇場で生の温度感で拝見したいコンビです。

 

【2組目】カベポスター

──続きまして、カベポスターさんです。

 

久保 昨年大会で、カベポスターさんは1番手で登場されました。めちゃくちゃ落ち着いていて素晴らしかったですね。ですが、もし出順が後だったら……とも思ってしまいました。

 

──M-1グランプリでは出順も大切ですよね。今大会でも生放送中の「笑神籤(えみくじ)」で順番が決まるようです。

 

久保 昨年のネタ、大好きでした。「大声大会」というネタで、単語を重ねて後半どんどん盛り上げていく形で、視聴者の方も「あ、こうやって笑えばいいのね」と分かりやすい作りになっていたと思うんです。

 

──ボケを重ねていく中で、伏線もあって面白かったですね。

 

久保 先日、カベポスターさんが滝音さんと開催されていたイベントを見に行かせていただいたんですが、その際に「あ、今年も決勝に上がってくるだろうな」と感じました。ただ、2年連続で決勝進出となると周囲や審査員の方の期待値が上がってくるのも事実ですよね。

 

──もしかしたらプレッシャーに感じる場合もあるかも、という。

 

久保 そうなんです。ですが、そこを超えてくる実力がカベポスターさんには、もちろんあると思います。あと、これは私の職業柄なのですが、ツッコミの浜田(順平)さんのお声がとても聞き取りやすくて素敵だなと思います!

 

──おお、声優さんの立場から見てもいいお声とは……アドバンテージですね。

 

久保 ちょっと癖はあるんですけど、声質、ボリューム感、とても耳に入ってきやすい、ちょうどいいお声だと思うんです。イケボ、というのとはまた違うと思うんですけど、“通る声”なんですよ。ご本人もそれを自覚されているのか、声量に任せていない感じに好感が持てます。

 

──久保さん的なポイントとしては「声に注目!」というところですね。気にして拝見してみようと思います。

 

【3組目】さや香

久保 声のお話でいうと、さや香さんの声量と勢いには圧倒されますよね。新山さん、すごいボリュームです(笑)。ですが、あれだけがなっているようで、ちゃんと言葉が聞こえるのは、かなりの技術をお持ちだと思います。

 

──スピード感もあるのに、ちゃんと耳に届きます。

 

久保 昨年は準優勝という結果でしたね。関西人で還暦も超えた母親は、さや香さん推しでして(笑)、母親世代でも関西の方にとっては、やっぱり受け入れやすい王道漫才なんですよね。今年は、関西でのテレビ出演が増えたようで、母は「全然興味ない」とか言いつつ「でも2人は仲悪いんやんな」とか情報をちゃんと仕入れてて、めっちゃ好きじゃん! と。

 

──あははは。お母さま、よくご存じで。仲が悪いとご本人たちが公言しているようですもんね。

 

久保 でも、もしかしたら昨年ファイナルまで行ったことで、本当は絆が深まっているのかも? と期待してしまいますね(笑)。私は、個人的に「自分の相方はコイツしかいない」みたいな互いに尊敬し合っているコンビを推したくなってしまうタイプなので。

 

──2年連続で決勝進出というのは、すごいことですから。お互いの力を信頼していないとできないことかもしれません。

 

久保 しかも、昨年はボケとツッコミを入れ替えたパターンでの決勝進出ですよね。ポジションを入れ替えれるなんて、やっぱり2人の信頼と積み重ねてきたものがあるんだな、と感じますね。昨年の悔しさもあると思いますし、今年は更なる熱量を見せてくれるんじゃないかと思います。

 

【4組目】モグライダー

──続いて、モグライダーさんについては、いかがでしょう。

 

久保 モグライダーさんは、2021年大会で初めて決勝進出されて、今回は返り咲きということですね。21年の大会では、1番手で登場されて場の空気を大いに盛り上げて、最高のトップバッターと言われてました。めちゃくちゃ良かった……。

 

──モグライダーさんがいてこその21年大会でした。

 

久保 ボケのともしげさんが噛んだり、ミスをして、それに芝(大輔)さんがツッコミを入れるスタイルの漫才ですが、どこまでが台本で、どこまでがともしげさんのその場のテンション感なのか、分からないところがすごいですよね。でも、ずっとともしげさんが甘噛みしているのは気になっちゃいます(笑)。

 

──声優さんの立場で考えたら、そうかと思います。

 

久保 ですが、それでも成立して、それすらも活かした内容になっているのが、唯一無二のコンビですよね。そして、何より芝さんの安心感が大きい。どうとでもしてあげるぞ、という雰囲気でドーンと構えてくれている感じがあるから、こちらも楽しく笑えるんですよね。ともしげさんも、あの、いい意味で……。

 

──ポンコツ、ですか(笑)。

 

久保 あ、はい……!そう言っていいのか分からなかったんですけど、ちょうどいいポンコツ具合でいらっしゃるというか! あまりにどうしようもなかったら、実際笑えないと思うんでね。なんなら、ともしげさんはすべて計算づくで、普段から狙ってやっているんじゃないか、と思っています。本当のところは分かりませんが。

 

──そこもモグライダーさんの魅力ですよね。

 

久保 返り咲きといいますと、相当ブラッシュアップしているんだろうなと思いますし、実際にパワーアップしているお2人を見せてくれると思います。今年はたくさんテレビにも出演されていたのに、決勝まで上り詰めてきたわけですから、期待大ですね。

 

【5組目】ヤーレンズ

──次に、ヤーレンズさんについて伺いたいと思います。

 

久保 ヤーレンズさんは、昨年大会で初の準決勝進出を果たされていました。私の以前のメモ書きで「生で見たいな」と書いてあったのですが、恐らく昨年の敗者復活戦で拝見した時に書いたものだと思います。

 

──メモを取っていらっしゃるんですね。すごい。

 

久保 いつも取っているわけではないんですけどね。昨年、ヤーレンズさんはラーメン店のネタをされていたんですが、まず初めの方で耳に残るワードが出てきて、それが最後の大オチの手前にもう一度出てきて、伏線回収的な構成になっていたんです。それがすごい面白かったんですが、あえてラストの爆発では使わないんだって思って、そこに“余裕”を感じたんですよ。

 

──大きなオチに持ってきてもおかしくないボケだったということですね。

 

久保 はい。それを見た時に、ヤーレンズさんのそういった作り込みが好きなお客さんの温度感を生で感じてみたいと思ったんです。笑うタイミングとか雰囲気とかを一緒に味わいたいな、と思って。

 

──なるほど。生で見たらまた違った印象を受けるかもしれませんし。

 

久保 そうなんですよね。それもまた楽しそうだな、と思いつつ、まだ拝見できていなくて。ボケの楢原(真樹)さんの強めのキャラクターもぜひ生で見てみたいですね。声を自在に操れる方だと思うので、そこも臨場感ある場で感じてみたい。ちなみに、昨年のメモでは「音を聞かせる」とも書いてありました。

 

──音を聞かせるとは、どういったことでしょう?

 

久保 言葉のボケだけじゃなくて、オノマトペや音まねがうまい方だと思ったんですよ。すると、コント漫才がよりリアルに感じられますよね。ただ、昨年は敗者復活戦が野外ステージだったので、細やかなところまでは聞き取りづらかった。今年は、決勝の舞台で昨年よりはフラットな状態が聞けるので、それも楽しみの1つですね。

 

【6組目】真空ジェシカ

──続いて、今年で3年連続決勝進出となった、真空ジェシカさんはどうでしょう。

 

久保 真空ジェシカさんは、最初1回目に決勝に上がってきたときは、恐縮なんですが存じ上げていませんでした。それもあって、ちょっと初見でお声が聞き取りづらいな、と思ってしまったんですよね(笑)。

 

──確かにツッコミのガクさんは、ご自身でも声がこもっていると仰っていました。

 

久保 ボケの川北(茂澄)さんも、ボソボソッとした感じで、とんでもない数のボケを発してくるじゃないですか。これは完全に自分自身がなじみがなかったせいなのですが、もっとしっかり聞き取れたらな、と後悔したんですよ。でも、後から余裕を持って録画を見たら、こういうボケだったのかとちゃんと理解できて「めっちゃオモロい……!」となりました。知的なボケの応酬で、最初から最後までしっかり笑える漫才でした。

 

──そこから、昨年も再び決勝に上がってこられましたね。

 

久保 めちゃくちゃ失礼なことを言って申し訳ないのですが、昨年の決勝では、前年に見た時が嘘のように聞き取りやすくて、大笑いしました! もしかしたらガクさんも川北さんも、聞き取りやすさや伝わりやすさについてブラッシュアップされた部分もあるのかなと感じました。そうだとしたら、とても真面目な方々なんだって、個人的には「推せる!」と思ってしまいましたね(笑)。

 

──やはり一度、決勝の舞台を経験していると強いですよね。

 

久保 そう思います。ちなみに、私としては、ボケツッコミが明確でとても分かりやすかったのですが、松本(人志)さんには「ツッコミとボケの声量が逆の方がいい」とコメントされていましたね。それぞれの声量を変えてしまうと、ボケのキャラクターの意味合い自体が変わってしまうので難しい指摘だとは思いましたが……。

 

──そういった指摘を受けながらも、今年はなんと3年連続決勝進出となりました。

 

久保 本当にすごいですよね。おそらく昨年の課題をクリアして、パワーアップした状態での決勝進出。楽しみでしかないです。今年は「M-1ツアースペシャル2023」というM-1グランプリ出場者の方々が出演するライブを見に行かせていただいたのですが、真空ジェシカさんが一番自由度が高くて、肩の力が抜けていました。会場の空気を読んで、ステージを作っている感じは、余裕があったというか、場数を踏んでいるんだなと体感しました。その自由な感じを3年目でどう落とし込んでくるのか。ますます注目したいと思います。

 

【7組目】ダンビラムーチョ

──続いての、ダンビラムーチョさんは昨年の敗者復活戦で、楽器を使いながら、森山直太朗さんの「生きとし生けるものへ」を歌うネタを披露して、大きな話題となりました。

 

久保 最高でした。私は、よしもと∞ホールでのライブを見に行った時に、たまたまダンビラムーチョさんが、そのネタをやっていて見たことがあったんです。めちゃくちゃ面白かったので、やるならこれしかないよね! と思っていたのでうれしかったですね。

 

──会場も盛り上がっていた感じでした。

 

久保 テレビの前でも伝わってきましたよね。私は見たことがありましたし、会場も流れをつかんで、どうなるかなんとなく分かっているはずなのに、あの待ち望んでしまう感じ! 一体感がありました。お笑いを見ているって感覚がなくなってしまうくらい(笑)、気持ちの良い素敵な時間だなと感じました。

 

──今年はその歌声が決勝のステージで聴けそうです。

 

久保 まだ正統派な漫才をする可能性ももちろんありますが、昨年見て知った方々は、それが見たいと思っているんじゃないでしょうか。歌ネタは、ちょっと勘のいい人だと、次サビがくるぞ〜ボケがくるぞ〜とちょっと先が読めちゃう。でも逆にみんな、絶対予想どおり来てくれることを待っているまである。そこが、楽しい部分だと思います。

 

──ノーマルな漫才とは違って、やはり特殊な部分はありますね。

 

久保 なので、出順も重要ですよね。トップバッターで来ちゃったら……ビックリする視聴者の方もいるかもしれません! ただ、順番さえ良ければドカンとハマる可能性も大きそうです。さらに、1本目歌ったら、2本目また歌っても絶対面白いじゃないですか!

 

──そこも、みんなの期待に応えて盛り上がるという流れですね

 

久保 そうなんですよ。出順、そして前後のコンビがどうなるか、気になるところです。

 

【8組目】令和ロマン

──令和ロマンさんは、昨年の敗者復活戦で惜しくも2位という結果でした。

 

久保 ネタを見た直後、これは決勝に行ったんじゃないかと思いました。「ドラえもん」を題材にしたネタで、誰もが分かりやすく、笑いやすい漫才でした。たとえ「ドラえもん」を見たことがない人が見ても分かるくらいに(笑)。

 

──テレビを通してでも、会場全体の笑い声が聞こえてきていました。

 

久保 大ウケでしたよね。野外ステージでやってあれだけ笑い声を拾っていた。相当すごかったんでしょうね……。技術力もあると思いますが、ただただ純粋に面白くてウケていた。

 

──今年はどんなネタをしてくれるんでしょうか。

 

久保 令和ロマンさんは、何か題材となる作品やテーマがあって、それを膨らませていくのが得意な方々ですよね。なんなら、どこまででも広げられそうで昨年ももっと見たいと思ってしまいました。こちら側に、題材の知識がなくても、ツッコミの(松井)ケムリさんがしっかりフォローしてくれるので、笑いやすい。あと、お2人ともお声が聞き取りやすいです。

 

──たしかに、小さい声でも響くトーンというか。

 

久保 そうなんです。声を張ったり、そこまで大きな声量でもないのに、しっかり届くタイプです。また、ケムリさんの強すぎないけど、受け止めてるだけでもない、ちょっと不思議な感覚のツッコミも良い。ほかにいらっしゃらないタイプな気がしています。

 

──出順はどのあたりがいいと思いますか?

 

久保 うーん、どこで出てきても安定して面白そうなんですよね。順番に左右されないコンビなんじゃないかな、と思います。ご本人たちも、そういった心構えができていそうです。

 

──令和ロマンさんは、決勝進出者発表の瞬間が「落ち着きすぎている」「すでに王者の風格」と話題になりました。

 

久保 驚きましたよ! もう行くだろうと確信していた雰囲気というか、未来が見えてたんじゃないかと思っちゃいました(笑)。あの瞬間って、性格が出る部分だと思うのですが、令和ロマンさんは、まだまだ読み取れない面白さを秘めているんじゃないかと感じさせてくれましたね。決勝の舞台で、それを爆発させて欲しいです。

 

【9組目】マユリカ

──そして、現段階で決まっているファイナリストでは最後の9組目。マユリカさんについてお聞きしたいです。

 

久保 私は、マユリカさんの冠ラジオ「うなげろりん」のリスナーなんですが、幼なじみで仲の良い2人の掛け合いがいつも本当に楽しくて。実は私もお2人と同い年なので、とても応援しています。あと、マユリカさんのコンビ名は、マユさんとユリカさんというそれぞれ妹さんの名前が由来になっているのですが、私もユリカなので勝手に親近感を持ってますね(笑)。

 

──おお、たしかに! マユリカさんは、漫才でもトークでも息がぴったりで仲の良さが滲み出ています。

 

久保 そうなんですよ。マイクの前に立って、一瞬普通に会話が始まったと思うくらいに自然なキャッチボールで。関係性ができあがっているからこその空気感を醸し出している。彼らは、コント漫才が中心ですが、個人的には、2人ともオバサンの役が似合うなと思っていますね。一見、オバサンの役は中谷さんの方が似合って、良い意味で気持ち悪い感じもするのですが、実は阪本さんも似合うし、ちゃんと気持ち悪い(笑)。

 

──あははは。キャラクターが立っていますね。

 

久保 マユリカさんて、ラジオリスナー的に言うと「気持ち悪い」って安心して言える存在というか、そこが良さというか。いや、駄目なんですけどね!(笑) でも、そういうイジられキャラ的な立場が好感にも繋がっていると思うんです。そう考えると、今回の大会では何位になっても面白くなりそうというか、爪痕を残しそうな気がしていて。たとえ、最下位になってしまっても“おいしい”というか……。

 

──なるほど。昨年も、10位のダイヤモンドさんが大きな爪痕を残していました。

 

久保 もちろん優勝を狙える実力も十分あると思います。今年は、関西から東京進出も果たして、本人たちも気合が入っていて、勢いもある。やってやるぞという気概が感じられる上に、2人で何十年も一緒に積み上げてきた信頼の力もある。そういったストーリーの先に、優勝があったらかっこいいと思いますし、期待しています。

 

運命の敗者復活戦!決勝に進出する10組目のコンビは?

──ここまでファイナリスト9組について、分析を頂きました。ここからは、予想タイムです!  まずは敗者復活戦の予想からお願いしたいと思います。今年は、敗者復活戦のルールががらりと変わります。

※敗者復活戦の新ルール

ABCの3つのブロックに出場コンビが振り分けられ、各ブロックから観客票で勝者を1組ずつ選出。その3組の中から、5人の芸人審査員が最終的なジャッジをして、決勝進出者1組を選出。

久保 今までとは、全く違った緊張感のある闘いになりそうですね。リアルタイムで客席から見たお客さんの“生”の投票であるのと、芸人審査員の5人の方々も、錚々たるメンバーで、決勝さながらのスタイル。こういった形式の審査となると、よりその場のウケ具合が重視されると思うんです。つまりは、本当に面白いネタが評価される。人気や知名度も多少は、お客さんの投票に関わってくると思うのですが、最終的にはとにかく単純に面白かったコンビが勝ち上がるはず。それを踏まえて、私が選んだのは……。

 

★敗者復活枠 ドーナツ・ピーナツ

──おお!これは意外な予想です! ドーナツ・ピーナツさんは、関西の「よしもと漫才劇場」に所属されているコンビですね。

 

久保 やはり関西勢が持つ、勢いとパワーは今年の審査システムの中で、際立ってくるんじゃないかと考えています。その中でも、ドーナツ・ピーナツさんは、勢いだけでなく、ネタがしっかりしていてボケ数が多いので、笑いの総量が多いだろうと考えまして。それに、関東の方にも受け入れてもらいやすそうな掛け合いとテンポだと思うんです。そして、単純にいま「推し」ているので!(笑)

 

──審査システムと実力、そして応援したい気持ちを併せた選択ということですね。

 

久保 はい。より面白いかどうかが重視される評価基準で、私がいま面白いと思っている方々を選ばせていただいた形です。ですが、実はまだドーナツ・ピーナツさんを生で見たことがなくて……。もし決勝まで進んでくれたら、東京でライブをしてくれることも増えると思うんです。そうなったらうれしいなという願望もありますね。

 

──ピーナツさんの癖強めな飄々としたキャラクターと、ドーナツさんの鋭いツッコミのバランス感は、東京でも人気が出そうですね。

 

久保 今は関東での知名度はそこまでですが、ネタ重視の今年の敗者復活戦でなら、2人の質の高い漫才がきっと光ると思います。

 

2023年のM-1グランプリを制するのは? トップ3&優勝コンビ予想を発表!

──では、最後にファイナルラウンドに勝ち上がるトップ3、そして優勝コンビの予想をしてもらいたいと思います! 実際にM-1グランプリでは、視聴者も参加できる「三連単」予想企画が開催されています。もしかしたら、久保さんの予想がピタリと的中するかもしれません!

 

久保 いや〜難しすぎます。正直、全然決められません!(笑) 多分明日には考えが変わっているかもしれないですね……。あと、決勝戦では“出順”と“会場の空気感”がかなり重要だと思うので。そればかりは、本番になってみないと分からないので、予測がつかない……。ですが、決めました。まずは第3位は、このコンビです。

 

★第3位 カベポスター

久保 3位に選んだのは、カベポスターさんです。昨年も決勝戦に進出していて、実力はお墨付きのコンビ。そして、関西勢ながら東京でも受け入れやすいバランスの良い漫才のスタイルは、審査員の方からも支持がありそうだと思ったので。また、昨年は、トップバッターだったこともあって、ファイナルへの切符を逃してしまったんじゃないかな、とやっぱり思うんです。順番が違っていたら、違う未来もあったんじゃなかって。

 

──今年は順番によってはファイナル進出の可能性大ですね。ですが、3位の理由は何でしょうか?

 

久保 どうしても3組に残った時に、他が動きとパワーのあるコンビになったら、カベポスターさんは落ち着いて見えてしまうんじゃないかな、と思います。

 

──なるほど。ファイナルでは、ネタの質ももちろんですが、勢いも大切ですもんね。

 

久保 あと単純にカベポスターさんの2本目のネタが見たいですね。次は何してくれるんだろう! と気になるタイプなので。そんな思いも込めた選出です。

 

──2本目を見れるのも醍醐味ですよね。さて、続いて準優勝となるコンビは?

 

★第2位 ダンビラムーチョ

──おお!昨年の敗者復活戦で話題をさらったコンビが準優勝と予想。その心は?

 

久保 これは、もしダンビラムーチョさんが昨年のような盛り上がりのある歌ネタを披露されたら、会場の支持も得てファイナルまで駆け上がってくれそうだなと思ったんです。それには、正当な理由もあって、2020年大会で、同じく歌ネタのおいでやすこがさんが、準優勝された経緯を踏まえてです。あの時の、審査員と会場中を巻き込んだ一体感、すごかったじゃないですか。歌とお笑いが融合した時のパワーを皆さん肌で感じ取ったと思うんですよね。それを今度は、ダンビラムーチョさんにも起こしてほしいと思っています。

 

──素晴らしい分析です。個別の分析でもお話されていましたが、1本目を見たら、2本目も見たい! という気持ちにさせてくれそうです。

 

久保 もし会場が重い雰囲気でも、ダンビラムーチョさんならガラッと空気を変えてくれそうです。今年の台風の目になると信じています!

 

──楽しみですね。それでは、ついに優勝予想コンビの発表です。久保さんが選んだのは、一体だれなのか! お願いします。

 

★第1位 マユリカ

久保 私の優勝予想コンビは、マユリカさんです!!!!

 

──わー!やっぱり幼なじみパワーは強いと!

 

久保 今年、満を持して上京してきた気合、大阪で磨き上げられた実力、長年培ったお互いへの信頼、そして、私の素直な応援したい気持ちで、大きな期待を込めての優勝予想です! 頑張ってほしいです。

 

──日本一への条件はしっかりそろっていそうですね。

 

久保 ただ、個別の分析でもお話しましたが、何位になっても絶対面白くしてくれると思っています。本当にごめんなさい! とは思っているけど、最下位の姿もやっぱり見てみたい(笑)。そういうエンターテイナーな部分も含めて、素晴らしい結果が出ることを楽しみにしています!

 

──24日が待ち遠しいですね。最後に、今回の予想を振り返りつつ、総評をお願いします。

 

久保 実は、もともとこの予想企画はお受けすることは、めちゃくちゃ悩んだんです。もちろんお笑いは大好きですが、細かいことを話せるわけではないし、あまり深くは考えず楽しい!  という気持ちだけで見ていたり、感情だけで話してしまうことも多いものですから。お笑い好きな皆さんに、え? と思われるかもしれないと思って、躊躇もしていました。

でも、M-1グランプリって普段お笑いに触れない人も見てみようって思うすごい大会じゃないですか。それを考えた時に、私みたいに言葉でうまく表現できなくても、どんな人が出ているか知らなくても、「ただ楽しく、笑いたい」という気持ちがあればいいんだよ、というのを伝えられればと思いまして。全然何も考えずに、楽しんでほしいなって。

今年のキャッチフレーズは「爆笑が、爆発する。」だと聞いて、シンプルだけど、めっちゃいいなと思いました。そう、笑いたいだけ。なので、皆さん、どうぞただ楽しんでください。そして、よかったら劇場に行って、生のお笑いも浴びてみてください。

 

──素敵なお話でした。ありがとうございました!

 

 

構成・撮影/丸山剛史 取材・文/kitsune