よく聞く「すい炎」 実は危険…どんな症状? 完治できる? 原因&治療法を医師に聞いた
「すい炎」という病名を聞くことがあります。お酒をよく飲む人がかかりやすい病気といわれていますが、具体的にどのような病気なのかイメージしにくいと感じたことはありませんか。
そもそも、すい炎とは、どのような病気なのでしょうか。完治は可能なのでしょうか。発症する原因や治療法などについて、きくち総合診療クリニック(神奈川県綾瀬市)院長で、医師の菊池大和さんに聞きました。
すい液が膵臓を消化
Q.すい炎とはどのような病気なのでしょうか。主な症状や発症の原因について、教えてください。
菊池さん「すい炎は、『急性すい炎』と『慢性すい炎』の2つに分類されます。ここでは急性すい炎について、解説します。
急性すい炎は、膵臓(すいぞう)から作られる『すい液』という消化酵素が、膵臓を消化してしまう病気です。アルコールを過剰に摂取すると、すい液の働きが活性化されるため、急性すい炎を引き起こすことがあります。また、アルコール自体に含まれる成分が直接、膵臓の細胞を傷つけることで発症するケースもあるため、注意が必要です。
急性すい炎により膵臓が消化されると、膵臓自体がむくんだり出血したりするため、みぞおちからへそにかけての上腹部に激しい痛みが生じるほか、嘔吐(おうと)や背中の痛みなどの症状を引き起こします。
急性すい炎は男性に多い病気といわれています。発症の原因は、アルコールの過剰摂取が大半を占めており、毎年、飲食や飲酒の機会が多い時期は、患者が増える傾向にあります。このほか、胆のう内で生じた胆石が胆管に詰まることで急性すい炎を引き起こす場合もあります」
Q.すい炎の治療法について、教えてください。完治は可能なのでしょうか。
菊池さん「急性すい炎にかかった場合は、基本的に入院治療で対処します。具体的な治療法は次の4つです」
(1)食べ物や飲み物を摂取しない「絶飲食」を行い、膵臓を安静にする。
(2)輸液による脱水予防、栄養管理を行う。
(3)「たんぱく分解酵素阻害薬」を使用し、膵臓を自己消化している酵素の働きを抑える。
(4)抗菌剤を使い、膵臓周囲の感染を予防する。
すい炎が重症化すると、炎症が他の臓器にも広がるため、集中治療が必要になります。すい炎で命を落とすことも、珍しくはありません。急性すい炎の場合は、早期の治療により完治できますが、お酒を飲んでしまうと、再発する可能性が十分にあります。
Q.すい炎を放置した場合、どのようなリスクが生じる可能性がありますか。
菊池さん「急性すい炎を繰り返してしまうと、正常な膵臓細胞が減っていくことで、膵臓の働きが衰えるため、慢性膵炎に移行してしまいます。
慢性膵炎に一度かかってしまうと徐々に進行していくため、飲酒をやめても完治させることはできません。膵臓内に『膵(すい)石』と呼ばれる石ができるほか、膵臓内に液体がたまる『膵(すい)仮性のう胞』が生じたり、膵管や胆管が狭くなったりするため、治療が必要になります」
年末年始はお酒を飲む機会が増えますが、飲み過ぎには注意しましょう。