2年間、がん治療に耐えてきた女性。のちにがんは元から発症しておらず、全くの誤診だったことが判明した(画像は『Megan Royle 2020年10月11日付Instagram「I’m either the biggest sesh head at the weekend or climbing rocks drinking sparking water.....」』のスクリーンショット)

写真拡大

がん治療には髪の毛を失ったり、生殖機能に影響が出たりとさまざまなリスクが伴う。そんな過酷な治療をイギリスに住むある女性は2年間も耐えてきたが、のちにがんは元から発症しておらず、全くの誤診だったことが判明した。英ニュースメディア『Sky News』などが伝えている。

【この記事の他の写真を見る】

英イースト・ライディング・オブ・ヨークシャー州ビバリー在住のメーガン・ロイルさん(Megan Royle、33)は、2つの医療機関を相手に訴訟を起こしていたが、このほど裁判外の和解となり、彼女は無事に和解金を獲得することとなった。

メーガンさんは29歳だった2019年9月、右腕のホクロが大きくなって痒みを伴い出したため、ファミリードクターの紹介でロンドン市内にある「チェルシー・アンド・ウェストミンスター病院」の皮膚科を受診した。そこで検査を受けた結果、医師は皮膚がんの一種「悪性黒色腫」であることをメーガンさんに伝えた。

メイクアップアーティストであるメーガンさんは、治療に専念するため仕事から一旦離れ、同市内にある欧州最大のがん治療病院「ロイヤル・マースデン病院」で本格的な治療を受けることになった。治療前に再度検査を受けたが、結果は陽性だったという。

その後、がん治療が生殖機能に影響することもあるため、メーガンさんは自分の卵子を凍結保存することにした。そして腕にある悪性腫瘍とみられる組織を2センチ幅で肩から肘の手前まで切除する手術を受けた。手術後は9サイクルの免疫療法を受けており、2021年5月、医師に「がんの兆候はありません」と診断された。

メイクアップアーティストの仕事に本腰を入れようとしたメーガンさんだったが、当時パンデミックということもあり仕事に影響が出たため、現在住むビバリーに引っ越した。そこで初めて受診した病院で、メーガンさんがこれまで受けてきた検査結果やスキャン画像などの記録を調べてもらったところ、医師から衝撃的な言葉を聞くことになった。メーガンさんには元からがんの兆候はなく、全てが完全なる誤診だったというのだ。彼女は当時のことをこう振り返っている。

「医師たちが私を椅子に座らせて、『がんはなかった』と告げた時、私はそれを受け入れるまでかなり時間がかかりました。普通ならすぐに安堵する気持ちになると思われるでしょう。ある意味そうかもしれませんが、この時の私は苛立ちと怒りの感情の方が大きかったのです。」

メーガンさんはその後、医療過誤を専門とする「ハッゼル法律事務所(Hudgell Solicitors)」を介して、「ロイヤル・マースデンNHS財団トラスト」と、最初に検査を受けたチェルシー・アンド・ウェストミンスター病院に病理学サービスを提供する「インペリアル・カレッジ・ヘルスケア・NHS・トラスト」を相手に訴訟を起こした。

そして訴訟がこのほど和解に達したことを受け、ロイヤル・マースデンNHS財団トラストの広報担当者は英メディア『Sky News』のインタビューに応じ、次のように語った。

「メーガンさんが受けた苦痛な経験について、私たちは心から謝罪したいと思います。そして今回、和解が合意されたことを喜ばしく思っておリます。」

また、インペリアル・カレッジ・ヘルスケア・NHS・トラストの広報担当者も「メーガンさんに与えた苦痛を深くお詫びし、犯してしまった過ちについて謝罪いたします。和解が成立したからといって、誤診がメーガンさんに及ぼした被害を埋め合わせることはできませんが、合意に至ったことは嬉しく思います」とコメントした。

メーガンさんの弁護を請け負ったハッゼル法律事務所のマシュー・ガスコイン弁護士(Matthew Gascoyne)は、このように述べている。

「メーガンさんは治療中、つらい思いを経験しました。そして誤診だったと知り、さらなる精神的なショックを受けたのです。これらのことは(誤診がなければ)完全に回避することが可能でした。」

「誤診が発覚したのは、彼女のがんの治療が終わって、その後のケアを別のトラストに所属する病院で受けた時でした。もしこれが発覚していなければ、メーガンさんはがんの再発を恐れて生活する状況にあったかもしれません。」

当のメーガンさんは、10月27日に投稿したInstagramでこれまでサポートしてくれた人々に感謝を伝えつつ、「3年前の今頃はがんと診断されて先が見えない状態だったけれど、今は最高の人生を送っていると思います」と綴っている。

なお、テックインサイト編集部ではメーガンさんに、がん治療を受けた2年間でなにが心の支えになったのか、また誤診が判明した後に健康面やキャリア、私生活で受けた影響についてうかがうべく取材を申し入れている。

画像は『Megan Royle 2020年10月11日付Instagram「I’m either the biggest sesh head at the weekend or climbing rocks drinking sparking water.....」、2019年12月8日付Instagram「The Heal is Real!」、2020年2月11日付Instagram「It’s Day 1 of my Treatment,」』『Irish Mirror 2023年5月10日付「‘Doctors told me I needed to lose weight for years, but I actually had a six stone cyst’」(Image: Paisley Dylan)』『Metro 2023年9月28日付「Dad, 25, dies after doctor ‘thought tumour was a computer error’」(Picture: Eve Pateman / SWNS)、2020年1月3日付「Mum had both breasts removed after being wrongly diagnosed with cancer」(Picture: Sarah Boyle /SWNS)』『The Mirror 2022年8月13日「Mum-of-four who thought she was going through menopause given four weeks to live」(Image: Jam Press)』『real fix 2018年9月24日付「Five-Year-Old Girl Has Been Left Fighting For Her Life After It Took Doctors Two Years To Diagnose Her With CANCER(SWNS/REALFIX)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)