井ノ原擁護、セクハラ…有働由美子、史上最強の女子アナが最近ちょいちょい燃えるワケ
「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。有名人の言動を鋭く分析するライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
【写真】自宅に出入りする有働由美子、独特の私服センスを発揮!
第93回 有働由美子
最近、ユミコの周りが騒がしい。日本一有名なユミコ、それは有働由美子アナウンサー(以下、ユミコ)であります。
日本の公共放送であるNHKのエースアナウンサーで、抜群の知名度と好感度を誇るユミコですが、フリーに転身してから、主にセクハラ系の話題でちょいちょい炎上していることをご存じでしょうか。そんな印象がないのは、彼女の好感度があまりに高いから。そこで、今日は彼女のセクハラ発言を振り返ってみたいと思います。
1.「置き屋の女将」発言
フリーとなったユミコは、「NEWS ZERO」(日本テレビ系)のキャスターに就任しますが、そのお披露目会見で、「嫁に出してくれたNHKの方にも立派にやっているなと言っていただけるように」、この日の衣装の白いスーツを「中途半端なウエディングドレスみたい」とユミコの十八番「結婚できない自虐」を繰り広げます。同番組には若い女性も出演しますが、ユミコは「完全にキラキラする人たちと、置き屋の女将みたいな感じ。そういう構図になるんだろうなと思っていました」と発言。これはユミコがよくやっている「オバチャン自虐」なわけですが、置き屋の女将とは、自らの利益のために芸者に性接待を無理強いすることもある存在です。このため、不適切な発言ではないかと炎上したのでした。
2.「ホルモンが出てきた」発言
北京五輪スノーボード男子ハープパイプ決勝で、金メダルを獲得した平野歩夢選手について、
「久しぶりに女心がキュンキュンとしましたね。残り少ないホルモンが出てきたみたいな気持ちになりましたけども」「素晴らしい演技、素晴らしい滑り以上に、いち日本に住むオバチャンのホルモンって言うといやらしいですけど、気持ちまで若返らせていただきました」と発言し、性的な表現でアスリートを称えるとは何事だとプチ炎上したのでした。
3.「立ってください」発言
最近では元ラグビー日本代表の廣瀬俊朗氏がユミコの「news zero」にラグビーワルドカップの開催地・マルセイユからリモート出演した際、「リモートの場合、上だけきちんとした格好の人も多いよね」という流れから、番組の最後に「廣瀬さん、立ってください」とユミコが促し、廣瀬選手が立ち上がると短パンというオチがついたのでした。廣瀬選手が下着姿など、テレビに出るのに不適切な格好でないことがわかっているからこその「立ってください」発言だったと私は思いますが、ちょっと話題になりました。
セクハラを考えるときに、一つの判断材料となるのが「全く同じ行動を異性が取ったら、どう感じるかを予想すること」だと思うのです。例えば、2のホルモン発言を男女逆にして考えてみると、50代の男性アナウンサーが、20代の女性アスリートを見て「残り少ないホルモンが出てきた、若返った」と言ったら、どう思うでしょうか。おそらく、炎上必至でしょう。3の場合、男性MCに促されて女性出演者が立ち上がり、それが下着ではなく短パン姿だったとしても、やっぱりセクハラっぽい。なぜこんな簡単なことがわからないかというと、ユミコにとって、セクハラは武器だったからだと思うのです。
東京進出したユミコが頭角を現してきた2000年代は、フジテレビ・高島彩アナウンサーや中野美奈子アナウンサーに代表されるように、見た目もスタイルもよい、有名大学出身の楚々とした女子アナが人気でした。そんな中、ユミコはモテないとか結婚できないなど、自虐で注目を集めていきます。女性に上から物を言いたいオジサンにとっては、自虐する女性は「キミのそういうところが悪いんだ」と説教できるため、プライドの高そうなアナウンサーよりも「愛い奴」だったかもしれませんし、キラキラ界のトップ、女子アナを何となくいけすかない存在だと思っていた女性層は、そのぶっちゃけ加減を「サバサバした人、飾らない人」と好意的にとらえたのでしょう。
ユミコは国民的元祖サバサバ女子
女子アナという恵まれた人の高級自虐は珍しく、視聴者の嫉妬を回避するという意味で、有効だったのではないでしょうか。多くの日本人にとって、ユミコは国民的元祖サバサバ女子と言えるでしょう。
が、当方ひねくれ者。ユミコのうまさ、強かさに半月板が損傷する寸前まで膝を打つのでした。一般論で言うならば、自虐する人に「そうだね」という人はおらず、むしろ優しく接してくれるでしょう。そもそも、本当に自分に自信がない人は当時のキラキラの殿堂・テレビ局なんて受けないと思うので、自虐を本気にしたら「あの人に〇〇って言われた」とこちらが恨まれそう。自虐は必ずしも本心ではなく、プライドの高さの裏返しのように思えたのでした。
実際、ユミコは自虐のおいしさに自覚はあったようです。
今年の4月24日放送の「夜明け前のPLAYERS」(日本テレビ系)で、アメリカ・エール大学助教授で経済学者の成田悠助氏と対談。時代の流れについて、以下のように話しています。
「5、6年前までは自虐がウケていたんですよ。私がNHK時代にやっていた『あさイチ』という番組は退職された方とか主婦の方が対象。だけど、私はバリバリのキャリアウーマンで、ニューヨーク特派員から帰ってきました〜みたいな(後略)。それで『お見合いもしたけど、結婚できなくて、子どももいなくて』って、皆さんは思っているけど、私が手にできなかったものみたいなことで視聴者の方に。そうやろうと思ってやったわけじゃないけど、振り返ると自虐すればするほどみんなが喜ぶっていう」
「2015年くらいからは、自虐が嫌味になる。視聴者の気分の変化はすごい早い(後略)」
と分析しています。
ウケないセクハラ的な自虐がやめられない
セクハラ的な自虐がウケないことに気付いてはいるものの、それをやめられないのが今のユミコです。今月8日に歌手・谷村新司さんがお亡くなりになりました。20日放送のラジオ番組「うどうのらじお」(ニッポン放送)で、ユミコは谷村さんとの秘話を明かします。ユミコは紅白歌合戦の司会者として、谷村さんは歌手として共演しましたが、ユミコが舞台袖で衣装さんやメイクさんによって、衣装チェンジしてもらっていたところ、「全部が脱がされたところで、谷村新司さんが『有働ちゃん、頑張って』っていうあの笑顔で。特に驚くでもなく・・・。その全裸を見ても『頑張って』って去っていかれて」と思い出を明かしています。これに似たエピソードは2018年に発売された「ウドウロク」(新潮社)にも掲載されており、同じことだと仮定して補足しますが、舞台の一角にカーテンで仕切っただけの着替え場があり、ユミコが着替えていたところ、谷村さんがひょいとカーテンを開けた、その時、ユミコはほぼ全裸だった(書籍内では、Tバック一丁でした。ユミコ、話を盛った?)そう。ユミコと谷村さんは個人的なおつきあいがあった上での面白エピソードなのだと思いますが、それを知らない人、かつ現代的な感覚で解釈すると「大物歌手が女子アナの着替えている場所に無断で入ってきて、女子アナの全裸を見た」話に聞こえなくもなく、谷村さんがセクハラした話にも思えてきます。亡くなった方を忍ぶエピソードとしては不適切ではないでしょうか。
ジャーナリストとしてはアウト、女子アナとしては大正解
ジャーナリストになりたいとNHKを退局したユミコですが、彼女は史上最強の女子アナなのだと思います。女子アナとは何か。それは実力ある男性のそばに侍って、色気を醸し出しつつ、一線を越えない範囲で大物男性と親しくし、かわいがられること。ユミコはかつて「あさイチ」でタッグを組んだ井ノ原快彦がバッシングされた際、スレッズで「友人として、私が知っているいのっちは、優しくて、その立場にいる人みんなの立場を感じ取って、自分を犠牲にしてでも立ち回る人。そんな姿を毎日隣で見ていた(後略)」と井ノ原をかばって見せました。ずっと一緒に仕事をしてきたユミコが言うのなら、正しいのだと思います。しかし、報道に携わる人がいくらスレッズとはいえ、私情をまるだしにすると「ユミコはジャニーズの味方だ」とみなされ、ニュースの信ぴょう性に関わりかねないでしょう。しかし、この「共演者に肩入れする」という姿勢はジャーナリストとしてはアウトだけれど、女子アナとしては大正解なリアクションなわけです。
けれど、そういう女子アナが求められる時代は完全に終わっていますし、ユミコの最大公約数的なイメージ、サバサバ女子も漫画「ワタシってサバサバしてるから」(小学館)が示すとおり、「サバサバしていると思っているのは本人だけ」と認知されつつあります。そもそも、ニュース番組のメインキャスターを務める人が、頻繁にセクハラで話題になるのはヤバ以外の何物でもない。若い世代にそっぽをむかれないためにも、早急にキャラ変が求められるのではないでしょうか。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」