by NASA/JPL-Caltech

1977年に打ち上げられた宇宙探査機ボイジャー2号のソフトウェアアップデートのため、NASAが18時間かけて行っていたパッチの送信が完了しました。このあと、現地時間の2023年10月28日にコマンド発行が行われ、パッチが正常に動作しているかの確認が行われます。

NASA’s Voyager Team Focuses on Software Patch, Thrusters

https://www.jpl.nasa.gov/news/nasas-voyager-team-focuses-on-software-patch-thrusters



NASA just sent a software update to a spacecraft 12 billion miles away

https://bgr.com/science/nasa-just-sent-a-software-update-to-a-spacecraft-12-billion-miles-away/

ボイジャー2号は兄弟機・ボイジャー1号に先駆けて1977年8月20日に打ち上げられた宇宙探査機です。当初は木星と土星の探査を4年かけて行う予定になっていましたが、その後、天王星と海王星の探査も追加され、1990年には太陽圏外探査へと目的が切り替えられ、これまで50年以上にわたりミッションを遂行しています。

しかし、2022年にボイジャー1号において、探査機のアンテナを地球の方に向けたままにするための姿勢制御システム(AACS)が正常に動作しているにもかかわらず、データが文字化けした状態で送られてくる不具合が発生しました。

Engineers Solve Data Glitch on NASA’s Voyager 1

https://www.jpl.nasa.gov/news/engineers-solve-data-glitch-on-nasas-voyager-1



文字化けの原因は、ACCSが数年前に動作を停止した搭載コンピューターにテレメトリデータを送り込んだことで、当該コンピューターがデータを破損させてしまっていたというものでした。そもそも、ACCSが本来データを送るべきではないコンピューターにデータを送るようになった原因ははっきりしないものの、NASAはACCSが誤ったモードに入ったと判断し、そうならないためのソフトウェアパッチを作成。まだボイジャー2号では問題は起きていませんが、未然に防ぐためにパッチを当てることにしたものです。

ボイジャー1号は地球から150億マイル(約241億km)、ボイジャー2号は120億マイル(約193億km)離れており、ボイジャー2号へのパッチ送信は18時間かけて行われたとのこと。

パッチは無事ボイジャー2号に届き、喫緊の問題が発生しない限りは現地時間10月28日にコマンドが実行され、パッチ適用が行われます。

なお、同時にボイジャー両機の寿命を延ばすため、スラスターのチューブ内に堆積していると考えられる燃料残留物への対応も行われます。

ボイジャーは上下・左右・中心軸の3方向に回転が可能で、観測したデータを地球に送信するため、アンテナを地球の方に向けたままにするように姿勢を保っています。姿勢制御を行うにあたってはスラスターが用いられますが、スラスターを点火するたびに、燃料ラインよりも25倍細いチューブを推進剤が通るため、微量の残留物が蓄積していきます。



by NASA/JPL-Caltech

この残留物の蓄積速度を少しでも遅くするために、スラスター噴射前にボイジャーの回転範囲をこれまでより1度大きくする調整が2023年9月と10月に送信されたコマンドで実施されました。修正によって、スラスターの点火頻度は減少します。

チューブがいつ残留物の蓄積によって詰まってしまうのかを正確に知ることはできないとのことですが、今回の予防策により、少なくとも5年はそういった事態にはならないと予想されています。また、今後数年間で、スラスターの寿命を延ばすためのさらなる追加措置が講じられる可能性もあるとのこと。

ボイジャープロジェクトのプロジェクトマネージャーを務めるスザンヌ・ドッド氏は「ボイジャー1号・2号は、これまでに星間空間で運用された唯一の宇宙船なので、彼らが送り返してくるデータは、私たちのローカル宇宙を理解する上で、他に類を見ない価値があります」と述べています。