増田有華インタビュー「走りだしたら止まらないところは10代の自分に通じるものがあるかも(笑)」映画「Love song」
『全裸監督 シーズン2』(Netflix)での体当たりな演技が話題となり、現在は性に悩める女性の本音を赤裸々に描いたラブコメディ『●●ちゃん』(ABCテレビ)が放送中の増田有華さん。そんな彼女の主演映画「Love song」が10月20日(金)に公開を迎える。
シンガーを夢見る主人公・花(増田)が殺された幼なじみ・猛(青木一馬)の復讐を誓う中、もう1人の幼なじみ・誠(木口健太)と再会。やがて2人は、離れていた時間を取り戻すように愛を奏で始め…というのが本作のストーリー。
「昔の自身と重なる部分が大きかった」という花を、増田さんはどのように演じたのか。AKB48時代のエピソードや20代半ばから芽生えた芝居への思い、30代を迎えての変化なども織り交ぜながら、たっぷり語ってくれた。
◆最初に台本を読んだとき、どんな印象を持ちましたか?
拳銃に薬物、ナイフも出てくるので、衝撃的なお話だと思いました。ただ根本にあるのは、ひたむきに人を愛するという純粋な気持ちで。花は不器用で口下手な分、思いを歌に乗せて伝える子なので、そういった意味でもやりがいのある作品だと思いました。
◆演じる花に共感できるところは?
たくさんありました。思い立ったら即行動、走り出したら止まらないところとか。短気なところも一緒ですね。私はもう大人になったので、ちょっと抑えられるようになりましたけど(笑)。それこそ17、8歳のころの自分は、花みたいな感じで。AKB48のメンバーからは、「有華ちゃんは1人で『バイオハザード』してるの?」なんて言われていました(笑)。
◆当時のAKB48は、“仲間だけどライバル”みたいな感じが強かったですからね。
そうなんです。総選挙があって、順位付けされていたりもしましたし。誰かに負けたくないというか、傷つくのが怖いんです。なので、人が寄ってこないように殺気立って見せたりもしてしまって。花にもそういう部分があるので、共感できるところはありました。
◆役作りの面で撮影前に準備したことは?
花の経歴をノートに書きました。どこに生まれて、どういうふうに育てられたのかを想像して…。考えていること、感じていることは相通じる部分があったので、花の経歴は書きやすかったです。あとは撮影期間が短いということで、本読みの段階からセリフを全て頭の中に入れるようにして。寝ていてもセリフが出てくるような状態にしてから撮影に臨みました。
◆実際、撮影はいかがでしたか?
短期間で一気に撮影したので、ハリケーンの中に入っていた感じでした(笑)。もう本当に、撮影して、帰って、寝て、また現場に行って…の繰り返しで。でも合間にそれなりに皆さんと話す時間はあったので、本田博太郎さんとソファで雑談したり。藤吉久美子さんも気さくに「主演は気を使っちゃダメよ!」と言ってくださって。キャリアのある方々が、そうやって自然体な感じでいてくださったのは私にとって大きかったです。
◆相手役の木口健太さんとはどんな話を?
2人のシーンが多かったので仲良くなりましたし、どういうお芝居にしていくか話し合ったことが作品に投影できたと思います。クランクアップのときには、わざわざお花を買ってきてくださったんです。そんなことをしてもらったことがなかったので、すごくうれしくて。大きな桃の木で、どうやって持って帰ろうかなとも思ったんですけど(笑)。
◆その木口さんとはベッドシーンもありますが、どのように臨みましたか?
木口さんはベッドシーンが初めてで緊張されていたので、「大丈夫。やりたいようにやって」って言いました(笑)。こういうのって、むしろ男性の方が気を使うと思うんです。私自身は恥ずかしい気持ちは全然なく、求められるうちが華というか。自分のベッドシーンがあることで少しでも多くの方に興味を持ってもらって、作品を見てもらえたらうれしいです。
◆体の準備は大変ではなかったですか?
筋トレは一応しました。あまり腹筋バキバキなのも色気がないので、体のラインがきれいに出るように、適度に…という感じですけど。あとは食事に気をつけてサラダやフルーツを摂取するようにしたのと、あとは手元のケアですね。スマホを触るとか、手元は意外と映る機会が多いので大事なんです。私は特に指先が荒れやすいので、毎晩ワセリンを塗りたくって、絹の手袋で保湿してみたいなことをやってました。
◆普段から体のケアには気を使っていますか?
仕事のときだけですね。撮影のために3、4キロ絞るけど、終わるとすぐ5キロ戻っちゃうという、最悪なルーティーンを繰り返しています(笑)。なので体のためには、定期的に肌を露出させる機会があった方がいいんです。じゃないと私、どんどんだらしない体になっちゃいそうな気がするので(笑)。
◆増田さんは、勝ち気でサバサバしているイメージを持たれがちだと思います。でも“本当の私はこうなんです!”と言っておきたいことはありますか?
意外と根暗です(笑)。あと一人っ子というのもあって、甘えん坊だったりもします。逆に世話焼きな一面もあって、友達から熱が出たという連絡が来たら、スーパーで必要なものを買って持って行ったり。要は、尽くすのが好きなんです。
◆それは意中の男性に対しても?
そうですね。「奴隷みたいな男を飼ってるんでしょ?」とか言われるんですけど(笑)、全然そんなことはなくて。尽くすことが好きですし、人からありがとうって言われることも好きで。そこは意外とギャップがあるのかもしれません。
◆ということは、今作に出てくる猛と誠だったら、タイプなのは…?
断然、猛ですね。ヤクザの覚せい剤をだまし取って殺されちゃうってダメダメな人なんですけど(笑)、何か面倒を見てあげたくなる。あと甘えてきてくれるから、自分も甘えやすかったりするんですね。私、目の前の人と鏡みたいな関係になりがちなんです。だから強くて自信満々な人にワーッと言われたら、こっちも言い返しちゃう(笑)。
◆歌唱シーンも見せ場の一つですが、撮影はどうでしたか?
事前にレコーディングして後で乗せる感じなのかなと思っていたら、現場で「はい、歌ってください」という感じで(笑)。どんなふうになるか心配だったんですけど、出来上がってみたらむしろこの現場感がよかったです。もちろん、レコーディングしたものを乗せた方が音も歌声もきれいになるんですけど、現場で撮った方が生っぽさが出るんですよね。
◆増田さんの歌唱力への信頼から、監督はそういう撮り方にしたのかもしれませんね。
確かに歌うことに慣れてはいますが、あれだけ長く撮影の中で歌うのは初めてだったので緊張しました。あと、実は昔から「あの子、歌うまいよね」と言われることへのプレッシャーもあるんです。歌がなかったら私は需要がないのかな、みたいな。25、6歳ぐらいまではそんな感じだったんですけど、最近はお芝居が好きになったことでああいう場面でも力を抜いて歌えるようになったというか。何かあらためて歌を好きになれた気がします。
◆増田さんは、それこそAKB48時代から歌への思いみたいなことはよく口にされていましたが、それは今も変わっていませんか?
昔みたいに「歌で一花咲かせたい!」みたいな感情はなくなったと思います。歌が嫌いになったわけではなく、他にもワクワクできるものができたというか。お芝居でもワクワクできるようになりましたし。もちろん「曲を出しませんか」みたいなお話を頂けたら、張り切ってやりますよ! ベッドシーンと同じで、求められてるうちが華ですから(笑)。
◆では映画のタイトルにちなんで、増田さんの思い出のラブソングを教えてください。
MISIAさんの「キスして抱きしめて」。宇多田ヒカルさんの「First Love」も好きですね。あのころの、こびずに気持ちを伝える感じがすごくいいなと思っていて。カラオケに行ったら必ず歌いますし、ノッたときは2、3曲リピートします。何回歌うんだよ、みたいな(笑)。
◆もう一つAKB48時代の話をさせてください。当時はそこまで演技に対して熱い思いはなかったように思うんですが、何かきっかけがあったんですか?
その点は、私自身もびっくりしていて。昔は自分にお芝居なんてできるとは思わなかったし、歌でやっていくんだろうなと思っていましたから。ただ、ありがたいことにお芝居のお仕事を頂いていざやってみると、正解のない面白さがあることに気づいたんです。歌は、音やリズムに合わせるみたいな基準がありますけど、お芝居はそういうのがないんですよね。例えば「ありがとう」という言葉一つを言うのにも、何百通りとあって。その中でまた私にしかできないお芝居を探すという楽しさに魅力を感じました。
◆お芝居のために何か日々行っていることはありますか?
図書館に行くようになりました。作品には何かしらのバックボーンがあって、それを理解するにはいろいろなことを知らなければいけないなと思って。新聞の政治欄を読んでみたり、歴史の本を手に取ってみたり。理解できないことばかりだったりしますけど、知らないものを知ろうとする姿勢が大事かなと思います。だからわざと、自分が知識のない分野の本を読んでみたりします。
◆最近読んだ印象的だった本は?
「花粉症は治せる!」(笑)。あと腸活関係の本は1冊読んだら興味が湧いて、いろいろ読みました。あまりにも感動しちゃったので、すぐフラクトオリゴ糖を注文して。砂糖の代わりに使ったり、ヨーグルトに混ぜたり。キノコ鍋やバナナを食べる機会も増えました。キノコ鍋はオススメですよ。めちゃくちゃ“快腸”になります!
◆30代になって、増田さんの中で何か変化したことはありますか?
昔から雑に暮らしていたんですけど、そろそろちゃんとしなきゃと思って。自炊をする回数も増えました。キムチも自分で漬けていたりします。最初は何となくの雰囲気で、ナンプラーで漬けていたんです。でも「アミの塩辛」を使ったら味が締まるようになって、これはいいなと。リンゴと玉ねぎを入れることにもこだわっています。これも最初、適当に全部入れればいいやと思って玉ねぎを一玉入れたら、めちゃくちゃ変な味になったんですけど(笑)。
◆今の増田さんの中には、マメさと雑さが同居しているんですね(笑)。
そうなんです、端々にバイオハザード時代が残っていて…(笑)。でも雑にやって失敗しちゃうのもいいかなと思えるようになって、そこも変わったところだと思います。昔は一つのやり方にこだわって、失敗は許されない感じでしたけど。最近は、失敗も一つの糧になる…みたいな。自分も許して他人も許して、嫌なことやつらいことは忘れて、楽しいことだけを覚えているようにしようと。そういう意識になりました。
◆5年後や10年後は、どんなことができるようになっていたいですか?
もっといろいろなことを経験して、苦手な人ともしゃべれるようになっていたらいいなって。私、誰とでも話せるように見えて、相手がしゃべってくれないとダメなんです。人見知りな人を前にすると、自分も人見知りになっちゃう(笑)。そうではなく、ちゃんと相手の良さを引き出せるように、いろいろな話題を身に付けたいです。取りあえず年々自分のことは好きになれているし、もっともっと好きになっていけたらいいなと思っています。
◆最後に、今後やってみたい役があったら教えてください。
映画「万引き家族」を見たとき、すごく衝撃を受けました。皆さんメイクもほとんどせず、樹木希林さんは入れ歯まではずして演じられていて。垣間見える日常をそのままスクリーンに落とし込んでいる感じが素晴らしくて、いつか自分もああいうリアルな家族の1人を演じられるようになりたいです。そのためにはまずすっぴんで画面に映れるように肌活が大事ですし、お肌のためにも腸活が大事になってきますね(笑)。
PROFILE
●ますだ・ゆか…1991年8月3日生まれ。大阪府出身。B型。AKB48の2期生として約7年間活動後、2013年グループを卒業。最近の出演作にドラマ『先生のおとりよせ』『全裸監督 シーズン2』など。現在、『●●ちゃん』(ABCテレビ)に出演中。
作品情報
「Love song」
2023年10月20日(金)より東京・池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
出演:増田有華、木口健太、山口大地
/藤吉久美子、本田博太郎
青木一馬、平山大、牧野裕夢、広瀬彰勇、大川夏凪汰、佐藤真澄、角謙二郎
監督:児玉宜久
脚本:村川康敏、宍戸英紀
企画:利倉亮、郷龍二
プロデューサー:江尻健司、北内健
音楽:Les.R-Yuka
配給:マグネタイズ
映倫:R-15
公式サイト:https://www.legendpictures.co.jp/movie/love-song/
(c)2023「ラブソング」製作委員会
●text/小山智久