(写真・時事通信)

「ボールはJR東海のほうにあると思っている。決して私たちが遅らせているわけではありません。民間企業の決定の自主性を、明確に出していただきたい」

 こう話したのは、静岡県の川勝平太知事。10月10日の定例会見で、残り2年の任期中にリニア問題を解決できるのかと質問され、着工の遅れはJR東海の問題で、県に非はない――との認識を示したのだ。

 川勝知事が静岡工区の着工を認めないため、2027年の開業予定が絶望的となっている、リニア中央新幹線。東京・品川〜名古屋間285kmのうち、静岡工区はわずか9kmだ。そのすべてが、地下深くの南アルプストンネルだが、トンネルの上にある大井川の水量や、工事に伴う残土の置き場、そして自然環境への影響など、さまざまな「課題」が未解決だというのが、川勝知事の言い分だ。

 ちなみに、その南アルプストンネル、標高3000m級の山脈を貫き、地表からの深さは最大1400mになる。東京スカイツリーを2つ並べたより、さらに深い場所ということだ。

 会見で川勝知事は、議論の進捗について問われ「1合目よりは進んだ」と語り、まだまだ問題は山積だとの認識を示した。

「静岡県はリニア着工の課題として、JR東海に対し47の項目を示しています。それに対し、国の有識者会議が設置され、すでに水に関する報告書が出され、2023年9月には、生物に関しても報告書案が示されています。しかし静岡県は『まだ気になる部分がある』とし、川勝知事も『まだ47項目の入り口』と、そのほとんどが未解決だと主張しています。ああ言えばこう言うで、これでは事態がまったく進展しません。要するに、川勝知事にリニア着工を認める気は、さらさらないわけです」(週刊誌記者)

 また、この日の会見では、川勝知事の“本性”ともいえる部分が見えた場面があった。

「会見では、知事の発言の文脈から『ルート変更か、部分開業を求めているのか』という質問も、新聞記者からありました。これに対し川勝知事は、リニア工事を『決めたことを、わき目も振らず邁進して、場合によっては前に崖があるのも知らず突き進み、崖下に落ちるようなことにならないように』とたとえ、『いま、ボールは(JR東海の)丹羽社長、あなたにある』と答えています。やや抽象的ではあるものの、この発言の真意が、ルート変更などを示唆しているのは明らかです。

 リニア沿線の自治体で構成され、建設促進を目指す『期成同盟会』に、静岡県は2022年になってようやく加盟しています。川勝知事はその際、『静岡県は一貫してリニアに賛成している』と述べ、現行ルートでの整備を目指すことを約束して入会を認められたのですが、今回の発言は、その約束を反故にするということにもなりかねません」(同前)

 川勝知事の「私たちが遅らせているのではない」発言に対し、SNSでは

《紛れもなくあんた、川勝平太が遅らせているのだよ。国益を毀損している張本人はあんただよ》

《「私たち」って?静岡県民が遅らせてるみたいじゃん。「川勝知事」個人が遅らせているの間違いでしょ。。。》

《総会屋みたいな静岡知事》

 など、厳しいツッコミが多数みられた。

 会見では「(自分が)JR東海の意思決定者なら、現在の川勝と膝を突き合わせて話し、その場で解決策を出せる、という自信はある」とも話した川勝知事。その解決策とは、まさかルート変更では――。