「百人一首」という言葉は知っていても、実際にどんな内容なのか、詳しく分からないという方も多いでしょう。

本記事では、百人一首の中でも最も有名とされる小倉百人一首にある和歌を、読み方とともに一覧で紹介します。小野小町や清少納言、紫式部など、きっと知っている人の名前や、聞いたことがあるフレーズが入っているはずですよ。

百人一首の起源や、決まり字、上の句・下の句とは何か、競技かるたの遊び方もまとめました。

小倉百人一首の各歌とその読み方や、そもそも百人一首とは何なのか、競技かるたのルールなどを紹介します

百人一首の一覧(ひらがな付き) - 歌番号(年代)順

早速、百人一首の中でも最も有名とされる、小倉百人一首の一覧を紹介します。どの歌も、五・七・五・七・七の短い文字数の中に、詠み手の思いが凝縮されています。

小倉百人一首は、ほぼ年代順に番号が付けられていますので、その順に見ていきましょう。

○【1】秋の田の かりほの庵の 苫を粗み わが衣手は 露にぬれつつ

ひらがな

あきのたの かりほのいほ(お)の とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ

作者

天智天皇(てんじてんのう)

○【2】春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香具山

ひらがな

はるすぎて なつきにけらし しろたへ(え)の ころもほすてふ(ちょう) あまのかぐやま

作者

持統天皇(じとうてんのう)

○【3】あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む

ひらがな

あしひきの やまどりのを(お)の しだりを(お)の ながながしよを ひとりかもねむ(ん)

作者

柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)

○【4】田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ

ひらがな

たごのうらに うちいでてみれば しろたへ(え)の ふじのたかねに ゆきはふりつつ

作者

山部赤人(やまべのあかひと)

○【5】奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき

ひらがな

おくやまに もみぢ(じ)ふみわけ なくしかの こゑ(え)きくときぞ あきはかなしき

作者

猿丸大夫(さるまるだゆう)

○【6】鵲の 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける

ひらがな

かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける

作者

中納言家持(ちゅうなごんやかもち/大伴家持)

○【7】天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも

ひらがな

あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも

作者

阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)

○【8】わが庵は 都の辰巳 しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり

ひらがな

わがいほ(お)は みやこのたつみ しかぞすむ よをうぢ(じ)やまと ひとはいふ(う)なり

作者

喜撰法師(きせんほうし)

○【9】花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに

ひらがな

はなのいろは うつりにけりな いたづ(ず)らに わがみよにふる ながめせしまに

作者

小野小町(おののこまち)

○【10】これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関

ひらがな

これやこの ゆくもかへ(え)るも わかれては しるもしらぬも あふ(おう)さかのせき

作者

蝉丸(せみまる)

○【11】海の原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人の釣舟

ひらがな

わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね

作者

参議篁(さんぎたかむら/小野篁)

○【12】天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ

ひらがな

あまつかぜ くものかよひ(い)ぢ(じ) ふきとぢ(じ)よ を(お)とめのすがた しばしとどめむ(ん)

作者

僧正遍昭(そうじょうへんじょう)

○【13】筑波嶺の 峰より落つる みなの川 恋ぞ積もりて 淵となりぬる

ひらがな

つくばねの みねよりおつる みなのがは(わ) こひ(い)ぞつもりて ふちとなりぬる

作者

陽成院(ようぜいいん)

○【14】陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし われならなくに

ひらがな

みちのくの しのぶもぢ(じ)ずり たれゆゑ(え)に みだれそめにし われならなくに

作者

河原左大臣(かわらのさだいじん/源融)

○【15】君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ

ひらがな

きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ

作者

光孝天皇(こうこうてんのう)

○【16】立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む

ひらがな

たちわかれ いなばのやまの みねにおふ(う)る まつとしきかば いまかへ(え)りこむ(ん)

作者

中納言行平(ちゅうなごんゆきひら/在原行平)

○【17】ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは

ひらがな

ちはやぶる かみよもきかず たつたがは(わ) からくれなゐ(い)に みづ(ず)くくるとは

作者

在原業平朝臣(ありわらのなりひらあそん/在原業平)

○【18】住の江の 岸に寄る波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ

ひらがな

すみのえの きしによるなみ よるさへ(え)や ゆめのかよひ(い)ぢ(じ) ひとめよくらむ(ん)

作者

藤原敏行朝臣(ふじわらのとしゆきあそん/藤原敏行)

○【19】難波潟 短き葦の 節の間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや

ひらがな

なには(わ)がた みじかきあしの ふしのまも あは(わ)でこのよを すぐしてよとや

作者

伊勢(いせ)

○【20】わびぬれば 今はたおなじ 難波なる 身をつくしても 逢はむとぞ思ふ

ひらがな

わびぬれば いまはたおなじ なには(わ)なる みをつくしても あは(わ)む(ん)とぞおもふ(う)

作者

元良親王(もとよししんのう)

○【21】今来むと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな

ひらがな

いまこむ(ん)と いひ(い)しばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな

作者

素性法師(そせいほうし)

○【22】吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ

ひらがな

ふくからに あきのくさきの しを(お)るれば むべやまかぜを あらしといふ(う)らむ(ん)

作者

文屋康秀(ふんやのやすひで)

○【23】月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど

ひらがな

つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど

作者

大江千里(おおえのちさと)

○【24】このたびは 幣も取りあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに

ひらがな

このたびは ぬさもとりあへ(え)ず たむけやま もみぢ(じ)のにしき かみのまにまに

作者

菅家(かんけ/菅原道真)

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○【25】名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで 来る由もがな

ひらがな

なにしおは(わ)ば あふ(おう)さかやまの さねかづ(ず)ら ひとにしられで くるよしもがな

作者

三条右大臣(さんじょうのうだいじん/藤原定方)

○【26】小倉山 峰の紅葉葉ば 心あらば いまひとたびの みゆき待たなむ

ひらがな

を(お)ぐらやま みねのもみぢ(じ)ば こころあらば いまひとたびの みゆきまたなむ(ん)

作者

貞信公(ていしんこう/藤原忠平)

○【27】みかの原 わきて流るる いづみ川 いつ見きとてか 恋しかるらむ

ひらがな

みかのはら わきてながるる いづ(ず)みがは(わ) いつみきとてか こひ(い)しかるらむ(ん)

作者

中納言兼輔(ちゅうなごんかねすけ/藤原兼輔)

○【28】山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば

ひらがな

やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもへ(え)ば

作者

源宗于朝臣(みなもとのむねゆきあそん/源宗于)

○【29】心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花

ひらがな

こころあてに を(お)らばやを(お)らむ(ん) はつしもの おきまどは(わ)せる しらぎくのはな

作者

凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)

○【30】有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂うきものはなし

ひらがな

ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし

作者

壬生忠岑(みぶのただみね)

○【31】朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪

ひらがな

あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき

作者

坂上是則(さかのうえのこれのり)

○【32】山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり

ひらがな

やまがは(わ)に かぜのかけたる しがらみは ながれもあへ(え)ぬ もみぢ(じ)なりけり

作者

春道列樹(はるみちのつらき)

○【33】ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ

ひらがな

ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづ(ず)ごころなく はなのちるらむ(ん)

作者

紀友則(きのとものり)

○【34】誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに

ひらがな

たれをかも しるひとにせむ(ん) たかさごの まつもむかしの ともならなくに

作者

藤原興風(ふじわらのおきかぜ)

○【35】人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける

ひらがな

ひとはいさ こころもしらず ふるさとは はなぞむかしの かににほ(お)ひ(い)ける

作者

紀貫之(きのつらゆき)

○【36】夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ

ひらがな

なつのよは まだよひ(い)ながら あけぬるを くものいづ(ず)こに つきやどるらむ(ん)

作者

清原深養父(きよはらのふかやぶ)

○【37】白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける

ひらがな

しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける

作者

文屋朝康(ふんやのあさやす)

○【38】忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな

ひらがな

わすらるる みをばおもは(わ)ず ちかひ(い)てし ひとのいのちの を(お)しくもあるかな

作者

右近(うこん)

○【39】浅茅生の 小野の篠原 忍ぶれど あまりてなどか 人の恋しき

ひらがな

あさぢふ(う)の を(お)ののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこひ(い)しき

作者

参議等(さんぎひとし/源等)

○【40】忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで

ひらがな

しのぶれど いろにいでにけり わがこひ(い)は ものやおもふ(う)と ひとのとふ(う)まで

作者

平兼盛(たいらのかねもり)

○【41】恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか

ひらがな

こひ(い)すてふ(ちょう) わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもひ(い)そめしか

作者

壬生忠見(みぶのただみ)

○【42】契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは

ひらがな

ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ すゑ(え)のまつやま なみこさじとは

作者

清原元輔(きよはらのもとすけ)

○【43】逢ひ見ての のちの心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり

ひらがな

あひ(い)みての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもは(わ)ざりけり

作者

中納言敦忠(ちゅうなごんあつただ/藤原敦忠)

○【44】逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし

ひらがな

あふ(おう)ことの たえてしなくは なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし

作者

中納言朝忠(ちゅうなごんあさただ/藤原朝忠)

○【45】あはれとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな

ひらがな

あは(わ)れとも いふ(う)べきひとは おもほ(お)えで みのいたづ(ず)らに なりぬべきかな

作者

謙徳公(けんとくこう/藤原伊尹)

○【46】由良の門を 渡る舟人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かな

ひらがな

ゆらのとを わたるふなびと かぢ(じ)をたえ ゆくへ(え)もしらぬ こひ(い)のみちかな

作者

曽禰好忠(そねのよしただ)

○【47】八重むぐら 茂れる宿の 寂しきに 人こそ見えね 秋は来にけり

ひらがな

やへ(え)むぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり

作者

恵慶法師(えぎょうほうし)

○【48】風をいたみ 岩打つ波の おのれのみ 砕けて物を 思ふころかな

ひらがな

かぜをいたみ いは(わ)うつなみの おのれのみ くだけてものを おもふ(う)ころかな

作者

源重之(みなもとのしげゆき)

○【49】御垣守 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ ものをこそ思へ

ひらがな

みかきもり ゑ(え)じのたくひの よるはもえ ひるはきえつつ ものをこそおもへ(え)

作者

大中臣能宣朝臣(おおなかとみのよしのぶあそん/大中臣能宣)

○【50】君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな

ひらがな

きみがため を(お)しからざりし いのちさへ(え) ながくもがなと おもひ(い)けるかな

作者

藤原義孝(ふじわらのよしたか)

○【51】かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを

ひらがな

かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひ(い)を

作者

藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん/藤原実方)

○【52】明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな

ひらがな

あけぬれば くるるものとは しりながら なほ(お)うらめしき あさぼらけかな

作者

藤原道信朝臣(ふじわらのみちのぶあそん/藤原道信)

○【53】嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る

ひらがな

なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる

作者

右大将道綱母(うだいしょうみちつなのはは/藤原道綱母)

○【54】忘れじの ゆく末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな

ひらがな

わすれじの ゆくすゑ(え)までは かたければ けふ(きょう)をかぎりの いのちともがな

作者

儀同三司母(ぎどうさんしのはは)

○【55】滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ

ひらがな

たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なほ(お)きこえけれ

作者

大納言公任(だいなごんきんとう/藤原公任)

○【56】あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの 逢ふこともがな

ひらがな

あらざらむ(ん) このよのほかの おもひ(い)でに いまひとたびの あふ(おう)こともがな

作者

和泉式部(いずみしきぶ)

○【57】めぐり逢ひて 見しやそれとも 分かぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな

ひらがな

めぐりあひ(い)て みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よは(わ)のつきかな

作者

紫式部(むらさきしきぶ)

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○【58】有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする

ひらがな

ありまやま ゐ(い)なのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする

作者

大弐三位(だいにのさんみ)

○【59】やすらはで 寝なましものを さ夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな

ひらがな

やすらは(わ)で ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな

作者

赤染衛門(あかぞめえもん)

○【60】大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立

ひらがな

おほ(お)えやま いくののみちの とほ(お)ければ まだふみもみず あまのはしだて

作者

小式部内侍(こしきぶのないし)

○【61】いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重ここのへに 匂ひぬるかな

ひらがな

いにしへ(え)の ならのみやこの やへ(え)ざくら けふ(きょう)ここのへ(え)に にほ(お)ひ(い)ぬるかな

作者

伊勢大輔(いせのたいふ)

○【62】夜をこめて 鳥のそら音は 謀るとも よに逢坂の 関は許さじ

ひらがな

よをこめて とりのそらねは はかるとも よにあふ(おう)さかの せきはゆるさじ

作者

清少納言(せいしょうなごん)

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○【63】今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな

ひらがな

いまはただ おもひ(い)たえなむ(ん) とばかりを ひとづてならで いふ(う)よしもがな

作者

左京大夫道雅(さきょうのだいぶみちまさ/藤原道雅)

○【64】朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木

ひらがな

あさぼらけ うぢ(じ)のかは(わ)ぎり たえだえに あらは(わ)れわたる せぜのあじろぎ

作者

権中納言定頼(ごんちゅうなごんさだより/藤原定頼)

○【65】恨みわび 干さぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ

ひらがな

うらみわび ほさぬそでだに あるものを こひ(い)にくちなむ(ん) なこそを(お)しけれ

作者

相模(さがみ)

○【66】もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし

ひらがな

もろともに あは(わ)れとおもへ(え) やまざくら はなよりほかに しるひともなし

作者

前大僧正行尊(さきのだいそうじょうぎょうそん/行尊)

○【67】春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなくたたむ 名こそ惜しけれ

ひらがな

はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かひ(い)なくたたむ(ん) なこそを(お)しけれ

作者

周防内侍(すおうのないし)

○【68】心にも あらで憂き世よに 長らへば 恋しかるべき 夜半の月かな

ひらがな

こころにも あらでうきよに ながらへ(え)ば こひ(い)しかるべき よは(わ)のつきかな

作者

三条院(さんじょういん)

○【69】嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の 錦なりけり

ひらがな

あらしふく みむろのやまの もみぢ(じ)ばは たつたのかは(わ)の にしきなりけり

作者

能因法師(のういんほうし)

○【70】寂しさに 宿を立ち出でて ながむれば いづくも同じ 秋の夕暮

ひらがな

さびしさに やどをたちいでて ながむれば いづ(ず)くもおなじ あきのゆふ(う)ぐれ

作者

良暹法師(りょうぜんほうし)

○【71】夕されば 門田の稲葉 訪れて 葦のまろ屋に 秋風ぞ吹く

ひらがな

ゆふ(う)されば かどたのいなば おとづ(ず)れて あしのまろやに あきかぜぞふく

作者

大納言経信(だいなごんつねのぶ/源経信)

○【72】音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ

ひらがな

おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでの ぬれもこそすれ

作者

祐子内親王家紀伊(ゆうしないしんのうけのきい)

○【73】高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山のかすみ 立たずもあらなむ

ひらがな

たかさごの を(お)のへ(え)のさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなむ(ん)

作者

前中納言匡房(さきのちゅうなごんまさふさ/大江匡房)

○【74】憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ 激しかれとは 祈らぬものを

ひらがな

うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はげしかれとは いのらぬものを

作者

源俊頼朝臣(みなもとのとしよりあそん/源俊頼)

○【75】契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋も去ぬめり

ひらがな

ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あは(わ)れことしの あきもいぬめり

作者

藤原基俊(ふじわらのもととし)

○【76】わたの原 漕ぎ出でて見れば ひさかたの 雲居ゐにまがふ 沖つ白波

ひらがな

わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもゐ(い)にまがふ(う) おきつしらなみ

作者

法性寺入道前関白太政大臣(ほっしょうじにゅうどうさきのかんぱくだいじょうだいじん/藤原忠通)

○【77】瀬を早み 岩にせかるる 滝川の 割れても末に 逢はむとぞ思ふ

ひらがな

せを(お)はやみ いは(わ)にせかるる たきがは(わ)の われてもすゑ(え)に あは(わ)む(ん)とぞおもふ(う)

作者

崇徳院(すとくいん)

○【78】淡路島 通ふ千鳥の 鳴く声に いく夜寝覚めぬ 須磨の関守

ひらがな

あは(わ)ぢ(じ)しま かよふ(う)ちどりの なくこゑ(え)に いくよねざめぬ すまのせきもり

作者

源兼昌(みなもとのかねまさ)

○【79】秋風に たなびく雲の たえ間より 漏れ出づる月の 影のさやけさ

ひらがな

あきかぜに たなびくくもの たえまより もれいづるつきの かげのさやけさ

作者

左京大夫顕輔(さきょうのだいぶあきすけ/藤原顕輔)

○【80】長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は ものをこそ思へ

ひらがな

ながからむ(ん) こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもへ(え)

作者

待賢門院堀河(たいけんもんいんのほりかわ)

○【81】ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる

ひらがな

ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる

作者

後徳大寺左大臣(ごとくだいじのさだいじん/藤原実定)

○【82】思ひわび さても命は あるものを 憂きに耐へぬは 涙なりけり

ひらがな

おもひ(い)わび さてもいのちは あるものを うきにたへ(え)ぬは なみだなりけり

作者

道因法師(どういんほうし)

○【83】世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる

ひらがな

よのなかよ みちこそなけれ おもひ(い)いる やまのおくにも しかぞなくなる

作者

皇太后宮大夫俊成(こうたいごうぐうのだいぶしゅんぜい/藤原俊成)

○【84】長らへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき

ひらがな

ながらへ(え)ば またこのごろや しのばれむ(ん) うしとみしよぞ いまはこひ(い)しき

作者

藤原清輔朝臣(ふじわらのきよすけあそん/藤原清輔)

○【85】夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり

ひらがな

よもすがら ものおもふ(う)ころは あけやらで ねやのひまさへ(え) つれなかりけり

作者

俊恵法師(しゅんえほうし)

○【86】嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな

ひらがな

なげけとて つきやはものを おもは(わ)する かこちがほ(お)なる わがなみだかな

作者

西行法師(さいぎょうほうし)

○【87】村雨の 露もまだ干ぬ 槙の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮

ひらがな

むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆふ(う)ぐれ

作者

寂蓮法師(じゃくれんほうし)

○【88】難波江の 葦の仮寝の ひとよゆゑ 身を尽くしてや 恋ひわたるべき

ひらがな

なには(わ)えの あしのかりねの ひとよゆゑ(え) みをつくしてや こひ(い)わたるべき

作者

皇嘉門院別当(こうかもんいんのべっとう)

○【89】玉の緒をよ 絶えなば絶えね 長らへば 忍ぶることの 弱りもぞする

ひらがな

たまのを(お)よ たえなばたえね ながらへ(え)ば しのぶることの よわりもぞする

作者

式子内親王(しょくしないしんのう)

○【90】見せばやな 雄島の海人 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変はらず

ひらがな

みせばやな を(お)じまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかは(わ)らず

作者

殷富門院大輔(いんぷもんいんのたいふ)

○【91】きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣片敷 ひとりかも寝む

ひらがな

きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ(ん)

作者

後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん/藤原良経)

○【92】わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし

ひらがな

わがそでは しほ(お)ひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし

作者

二条院讃岐(にじょういんのさぬき)

○【93】世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ 海人の小舟の 綱手かなしも

ひらがな

よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのを(お)ぶねの つなでかなしも

作者

鎌倉右大臣(かまくらのうだいじん/源実朝)

○【94】み吉野の 山の秋風 さ夜よ更けて ふるさと寒く 衣打つなり

ひらがな

みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり

作者

参議雅経(さんぎまさつね/藤原雅経)

○【95】おほけなく 憂き世の民に おほふかな わが立つ杣に すみ染めの袖

ひらがな

おほ(お)けなく うきよのたみに おほ(お)ふ(う)かな わがたつそまに すみぞめのそで

作者

前大僧正慈円(さきのだいそうじょうじえん/慈円)

○【96】花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり

ひらがな

はなさそふ(う) あらしのには(わ)の ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり

作者

入道前太政大臣(にゅうどうさきのだいじょうだいじん/藤原公経)

○【97】来ぬ人を 松帆の浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ

ひらがな

こぬひとを まつほのうらの ゆふ(う)なぎに やくやもしほ(お)の みもこがれつつ

作者

権中納言定家(ごんちゅうなごんていか/藤原定家)

○【98】風そよぐ 楢の小川の 夕暮れは 禊ぞ夏の しるしなりける

ひらがな

かぜそよぐ ならのを(お)がは(わ)の ゆふ(う)ぐれは みそぎぞなつの しるしなりける

作者

従二位家隆(じゅにいいえたか/藤原家隆)

○【99】人も愛し 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに もの思ふ身は

ひらがな

ひともを(お)し ひともうらめし あぢ(じ)きなく よをおもふ(う)ゆゑ(え)に ものおもふ(う)みは

作者

後鳥羽院(ごとばいん/後鳥羽上皇)

○【100】百敷や 古き軒端の しのぶにも なほ余りある 昔なりけり

ひらがな

ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なほ(お)あまりある むかしなりけり

作者

順徳院(じゅんとくいん)

そもそも百人一首・小倉百人一首とは

百人一首の起源を見てみましょう

そもそも百人一首とはどんなもので、いつ、どのように生まれたのでしょうか。

百人一首は、100人の歌人の和歌を一首ずつ選んで集めた歌集や、それをカルタにしたもののことを言います。特に鎌倉初期に成立した「小倉百人一首」のことを指すのが一般的です。

小倉百人一首は、天智天皇から順徳院までの100人の和歌を一首ずつ集めたもので、藤原定家が選んだといわれています。『明月記』には、宇都宮頼綱(蓮生)が、小倉山麓中院の山荘の障子に貼る色紙に和歌を染筆するために選定を依頼したという記載があり、これが起源ではないかといわれています。

江戸時代以降は、歌留多(かるた)として人々に広く親しまれるようになりました。

小倉百人一首には、季節ごとの自然の風景を詠んだ歌の他、恋の歌も多くあります。

百人一首(競技かるた)のルール - 上の句・下の句、決まり字とは

競技かるたのルールについても確認しておきましょう

小倉百人一首のかるたの札を使って行う、競技かるたというゲームがあります。

ルールを簡単に説明すると、読み手が読み札を読むので、競技者2人は自分たちの前に並べた取り札の中から、対応するものを早い者勝ちで取ります。

このとき、読み手は各歌の中の「上の句」を読みます。上の句とは五・七・五・七・七のうちの、最初の五・七・五の部分です。取り札には「下の句」、つまり五・七・五・七・七のうちの七・七の部分が書かれています。

そして読み札を読む際に、取り札を特定できる文字のことを「決まり字」と言います。

例えば、百人一首の中に「む」から始まる歌は「村雨の 露もまだ干ぬ 槙の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮」の1つしかありません。この場合、一字読んだだけでどの取り札(下の句)を取ればいいのかがわかります。これを一字決まりと言います。同様に二字目まで読めば特定できるものを二字決まり、三字目まで読めば特定できるものを三字決まりと言います。

百人一首で勝負に勝つためには、100個の歌を覚え、決まり字までを聞いた時点で素早く動けるかが大切です。

なお競技者の2人は最初に、それぞれ25枚ずつの取り札を自分の陣地に並べます。相手の陣地の札を取った場合は、自分の陣地にある任意の札を、相手陣地に送れます。早く自分の陣地から取り札が無くなった方が勝ちです。

○百人一首を読み、覚えて、詠み手の心情を想像してみよう

百人一首は、いわば当時の「和歌ベスト100」と言えるものです。優れた歌人たちの歌を読み、覚えることで、彼らがどんな気持ちで物事を見ていたり、感じていたりしたかを想像してみましょう。

機会があれば、競技かるたに挑戦してみるのもいいですね。