Soul Gloが語る、絶対に知っておくべきハードコア最重要バンドの哲学と成長過程
Soul Glo(ソウル・グロー)の初来日ツアーが10月26日〜31日にかけて京都・大阪・名古屋・神奈川・東京で開催される。2022年に名門Epitaphからリリースした最新アルバム『Diaspora Problems』が世界中で絶賛され、今年のコーチェラ・フェスティバルでも圧倒的な存在感を放った「今絶対見ておくべき」ポストハードコアバンドはどのように生まれたのか? 米ローリングストーン誌が発表した、音楽産業の刷新をリードする25組「Future 25」にも選ばれた彼らの最新インタビューをお届けする。
様々なジャンルを横断するロック界の無頼漢、Soul Gloが2014年に結成された頃、フロントマンのピアース・ジョーダンはワイルドで実現不可能であろうバンドのビジョンについて冗談混じりに語っていた。「コーチェラに出演することになったら、素っ裸でステージに立つ」と彼は当時語っている。今年、フィラデルフィアの荒くれ者たちが遂に同フェスへの出演を果たしたことで、それはもはやギャグではなくなった。というのも、ジョーダンはTバック一枚という裸同然の格好でステージを駆け回ったからだ。
自身の友人たちも含む多くの人は、Soul Gloがコーチェラに出演できるはずがないと言ったが、ジョーダンはそういったネガティブな意見を気に留めなかった。「言いたいやつらには言わせておけばいいんだよ。そうすれば、目標が実現した時に、より気分爽快だからな」。自宅からZoomインタビューに応じてくれた彼は、いかにも着心地が良さそうなヒョウ柄のバスローブ姿でそう語った。「俺たちはいろんな目標を達成してきたから、最近じゃそんな風に言うやつらもいなくなったけどね」
ここ数年で、Soul Gloは数多くのスクリーモ系バンド(バンド名は映画『星の王子ニューヨークへ行く』に出てくる偽のコマーシャルにちなんでいる)の一つという位置付けから、ハードコアパンクとメタル、そしてヒップホップを奇想天外かつニュアンスに満ちた方法で融合させる、道なき道の開拓者へと成長した。一筋縄ではいかないその音楽は、しばしば脱線したり回り道をするものの、鬱の克服とアメリカにおける人種差別をテーマとするジョーダンの歌詞とシャウトを支える土台となっている。
昨年発表されたバンドの最新作『Diaspora Problems』は、20th Century Fox社のドラムビートさながらに、ブクブクという水中の気泡の音で幕を開ける。ファンキーなベースが唸るセクシーな「Spiritual Level of Gang Shit」、ロブ・ベース&DJ EZ Rockの「It Takes Two」をサンプリングした「Coming Correct Is Cheaper」、強烈なホーンのラインが印象的な「Thumbsucker」、そして全曲に共通する切れ味抜群のギターリフを擁する同作を、本誌は年間ベストメタルアルバム1位に選出した。
メンバーたちは常にその音楽性に自信を持っていたが、Soul Gloの活動が軌道に乗るまでには長い年月を要した。「このバンドの当初の目的は、フィラデルフィアのパンクやハードコアシーンに居場所を見つけられずにいた他のバンドたちと一緒に、この街でライブ活動をすることだった」とジョーダンは話す。バンドが2014年に発表した無題のデビューEPの収録曲名は、ジョーダンの視点を明確に反映していた。ヘヴィメタルのグルーヴを掴もうとギアを上げていくクルマのような「Violence Against Black Women Goes Largely Unreported」、マイナー・スレットの「Guilty of Being White」をアップデートした突進する貨物列車のような「Guilty of Being…Wait」がいい例だ。その音楽性は、シティ・オブ・キャタピラー、オーキッド、ページ99といったバンドに象徴される、2000年代初頭のスクリーモを彷彿させた。当時から『Diaspora Problems』まで一貫して在籍しているのはジョーダンとギタリストのルーベン・ポロのみだったが、ポロは元彼から欺瞞によるレイプ(ポロは否定している)を理由に告訴されたことがきっかけでバンドを脱退した。
ジャズ風のギターコードを導入するなどして、そのサウンドに磨きをかけた2016年発表の無題作に収録された「Untitled 4」で、ピアースはウィリアム・ブレイクの『The Little Black Boy』の一節をシャウトする。「白人として生まれたかったと思うのか?」という自身に向けた問いに、彼はこう回答する。「むしろ透明な抜け殻でありたいと願わずにいられない」
2017年にはマルチ奏者でベースとサンプリング担当のG.G.ゲラ、その翌年にはTJ・スティーヴンソンがドラマーとしてバンドに加入する。2019年作『The Nigga in Me Is Me』で、バンドはヒップホップとノイズ、そしてフュージョンジャズのギターを融合させたスタイルを追求し始める。歌詞は以前と変わらず極めてパーソナルな内容であり、同時代の出来事に対するジョーダンの見解が表現されている。ハードコアパンクとヒップホップを足して2で割ったような「31」で、ジョーダンは「お前がご執心の白いニガーどもはすぐにブチ切れる」とシャウトする。「電話越しに泣きついてきたお前は、俺らが友達同士だと思ってたのか?/やつの命は俺らの手にかかってた、それとも当時の俺らは『犯罪者』だったと言いたいのか?」
「パンクとハードコアの歌詞の大半は外界に向けられてる」とジョーダンは話す。「それそれでクールだ。でも俺は、むしろ自分自身の真実と向き合いたかった」
最新アルバムでの覚醒、パンクから学んだこと
Soul Gloは『Diaspora Problems』で、様々なジャンルが溶け合ったバンドの音楽的言語から生み出されるアイデアの数々を具現化してみせた。攻撃的な音楽に惹かれる理由についてジョーダンに尋ねると、実際に診断されたわけではないものの、自分はおそらくADHDを患っていると語った。「常に気持ちが昂っているんだ。攻撃的な音楽は、自分のそういう部分に訴えるんだと思う」と彼は語る。父親はジョーダンのいう「忙しないジャズ」を好んでいたが、彼自身はシステム・オブ・ア・ダウンやリンキン・パークとの出会いによって人生が大きく変わった。「大人が大声で叫んでいるのを聴いて、自分の中の何かに火がついた」と彼は話す。「両バンドにとっての『ジャンル』は、自分を惹きつける異なる要素を組み合わせて新しい何かを生み出すことなんだよ。俺はそれこそが音楽の意義だとずっと思ってる」
その後、デスメタルやハードコア、そして『Diaspora Problems』に見られるあらゆるスタイル(同作では故ポップ・スモークと故ジュース・ワールドへのシャウトアウトが見られる)の発見を通じて、彼はあることに気がついた。それは「ヘヴィであること」はジャンルとは無関係だということだ。ジェームス・ブラウンのシャウトや、1975年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでのエタ・ジェイムズの「Id Rather Go Blind」に、ジョーダンはヘヴィネスを感じるという。彼は幸運にも、そのビジョンを共有できるバンドメンバーと巡り会うことができた。
ミュージシャン、そしてリリシストとしてキャリアを重ねる中で、彼はそれまでとは異なる考え方をするようになったという。2000年代の後半にジョブ・フォー・ア・カウボーイやスーサイド・サイレンス等のデスコアのバンド(後者の見た目はエモの要素が強い)を知った時、彼の友人たちはその音楽を「ゲイ・メタル」と呼んでいたという。「髪がふわっとしてるとか細身のパンツを履いてるってだけで、そのバンドは曲がどれだけヘヴィでも『ゲイ』だとみなされてた」と彼は話す。「同性愛者嫌悪について知るまでは、俺自身もその一人だった。今となっちゃクソ笑えるけどね、俺自身がディスられる側になったわけだから。でも、異なるタイプの音楽やミュージシャンについて何気なしに同性愛嫌悪や人種差別ともとれる発言をしてたやつらも、世界と一緒に少しずつ変わってるんだよ。社会を変えようとするいくつものムーヴメントから学んで、俺らも人として成長してるんだ」
ジョーダンはDIYのパンクシーンを通じて、どんなことでも達成できるということをバンドメンバーと共に学んだという。「音楽は世界の縮図みたいなもんなんだよ」と彼は話す。「大衆が買ったり売りつけられたりしているものに惑わされずに、ますます多くの人々が本当の自分を見つけようと格闘し始めてる。ハードコアを好きになる人の数も増えてるけど、それは馴染みのないジャンルで新鮮だからというだけじゃなくて、他の音楽には見られないメッセージや感情をそこに見出してるからなんだ。バンドに興味があるやつは、今すぐ始めるべきさ」と彼は付け加えた。「自分自身を理解し、他人から理解されたいと思っているなら、とにかくやってみればいいんだよ」
From Rolling Stone US.
Soul Glo JAPAN TOUR 2023
2023年10月26日(木)京都・磔磔
サポート・アクト:LASTEND
2023年10月27日(金)大阪・LIVEHOUSE ANIMA
サポート・アクト:TIVE
2023年10月28日(土)名古屋・新栄シャングリラ
サポート・アクト:Some Life
2023年10月29日(日)神奈川・横浜B.B.street
サポート・アクト:tatara
2023年10月31日(火)東京・渋谷クラブクアトロ
サポート・アクト:SHAPESHIFTER
公演詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=4003
自身の友人たちも含む多くの人は、Soul Gloがコーチェラに出演できるはずがないと言ったが、ジョーダンはそういったネガティブな意見を気に留めなかった。「言いたいやつらには言わせておけばいいんだよ。そうすれば、目標が実現した時に、より気分爽快だからな」。自宅からZoomインタビューに応じてくれた彼は、いかにも着心地が良さそうなヒョウ柄のバスローブ姿でそう語った。「俺たちはいろんな目標を達成してきたから、最近じゃそんな風に言うやつらもいなくなったけどね」
ここ数年で、Soul Gloは数多くのスクリーモ系バンド(バンド名は映画『星の王子ニューヨークへ行く』に出てくる偽のコマーシャルにちなんでいる)の一つという位置付けから、ハードコアパンクとメタル、そしてヒップホップを奇想天外かつニュアンスに満ちた方法で融合させる、道なき道の開拓者へと成長した。一筋縄ではいかないその音楽は、しばしば脱線したり回り道をするものの、鬱の克服とアメリカにおける人種差別をテーマとするジョーダンの歌詞とシャウトを支える土台となっている。
昨年発表されたバンドの最新作『Diaspora Problems』は、20th Century Fox社のドラムビートさながらに、ブクブクという水中の気泡の音で幕を開ける。ファンキーなベースが唸るセクシーな「Spiritual Level of Gang Shit」、ロブ・ベース&DJ EZ Rockの「It Takes Two」をサンプリングした「Coming Correct Is Cheaper」、強烈なホーンのラインが印象的な「Thumbsucker」、そして全曲に共通する切れ味抜群のギターリフを擁する同作を、本誌は年間ベストメタルアルバム1位に選出した。
メンバーたちは常にその音楽性に自信を持っていたが、Soul Gloの活動が軌道に乗るまでには長い年月を要した。「このバンドの当初の目的は、フィラデルフィアのパンクやハードコアシーンに居場所を見つけられずにいた他のバンドたちと一緒に、この街でライブ活動をすることだった」とジョーダンは話す。バンドが2014年に発表した無題のデビューEPの収録曲名は、ジョーダンの視点を明確に反映していた。ヘヴィメタルのグルーヴを掴もうとギアを上げていくクルマのような「Violence Against Black Women Goes Largely Unreported」、マイナー・スレットの「Guilty of Being White」をアップデートした突進する貨物列車のような「Guilty of Being…Wait」がいい例だ。その音楽性は、シティ・オブ・キャタピラー、オーキッド、ページ99といったバンドに象徴される、2000年代初頭のスクリーモを彷彿させた。当時から『Diaspora Problems』まで一貫して在籍しているのはジョーダンとギタリストのルーベン・ポロのみだったが、ポロは元彼から欺瞞によるレイプ(ポロは否定している)を理由に告訴されたことがきっかけでバンドを脱退した。
ジャズ風のギターコードを導入するなどして、そのサウンドに磨きをかけた2016年発表の無題作に収録された「Untitled 4」で、ピアースはウィリアム・ブレイクの『The Little Black Boy』の一節をシャウトする。「白人として生まれたかったと思うのか?」という自身に向けた問いに、彼はこう回答する。「むしろ透明な抜け殻でありたいと願わずにいられない」
2017年にはマルチ奏者でベースとサンプリング担当のG.G.ゲラ、その翌年にはTJ・スティーヴンソンがドラマーとしてバンドに加入する。2019年作『The Nigga in Me Is Me』で、バンドはヒップホップとノイズ、そしてフュージョンジャズのギターを融合させたスタイルを追求し始める。歌詞は以前と変わらず極めてパーソナルな内容であり、同時代の出来事に対するジョーダンの見解が表現されている。ハードコアパンクとヒップホップを足して2で割ったような「31」で、ジョーダンは「お前がご執心の白いニガーどもはすぐにブチ切れる」とシャウトする。「電話越しに泣きついてきたお前は、俺らが友達同士だと思ってたのか?/やつの命は俺らの手にかかってた、それとも当時の俺らは『犯罪者』だったと言いたいのか?」
「パンクとハードコアの歌詞の大半は外界に向けられてる」とジョーダンは話す。「それそれでクールだ。でも俺は、むしろ自分自身の真実と向き合いたかった」
最新アルバムでの覚醒、パンクから学んだこと
Soul Gloは『Diaspora Problems』で、様々なジャンルが溶け合ったバンドの音楽的言語から生み出されるアイデアの数々を具現化してみせた。攻撃的な音楽に惹かれる理由についてジョーダンに尋ねると、実際に診断されたわけではないものの、自分はおそらくADHDを患っていると語った。「常に気持ちが昂っているんだ。攻撃的な音楽は、自分のそういう部分に訴えるんだと思う」と彼は語る。父親はジョーダンのいう「忙しないジャズ」を好んでいたが、彼自身はシステム・オブ・ア・ダウンやリンキン・パークとの出会いによって人生が大きく変わった。「大人が大声で叫んでいるのを聴いて、自分の中の何かに火がついた」と彼は話す。「両バンドにとっての『ジャンル』は、自分を惹きつける異なる要素を組み合わせて新しい何かを生み出すことなんだよ。俺はそれこそが音楽の意義だとずっと思ってる」
その後、デスメタルやハードコア、そして『Diaspora Problems』に見られるあらゆるスタイル(同作では故ポップ・スモークと故ジュース・ワールドへのシャウトアウトが見られる)の発見を通じて、彼はあることに気がついた。それは「ヘヴィであること」はジャンルとは無関係だということだ。ジェームス・ブラウンのシャウトや、1975年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでのエタ・ジェイムズの「Id Rather Go Blind」に、ジョーダンはヘヴィネスを感じるという。彼は幸運にも、そのビジョンを共有できるバンドメンバーと巡り会うことができた。
ミュージシャン、そしてリリシストとしてキャリアを重ねる中で、彼はそれまでとは異なる考え方をするようになったという。2000年代の後半にジョブ・フォー・ア・カウボーイやスーサイド・サイレンス等のデスコアのバンド(後者の見た目はエモの要素が強い)を知った時、彼の友人たちはその音楽を「ゲイ・メタル」と呼んでいたという。「髪がふわっとしてるとか細身のパンツを履いてるってだけで、そのバンドは曲がどれだけヘヴィでも『ゲイ』だとみなされてた」と彼は話す。「同性愛者嫌悪について知るまでは、俺自身もその一人だった。今となっちゃクソ笑えるけどね、俺自身がディスられる側になったわけだから。でも、異なるタイプの音楽やミュージシャンについて何気なしに同性愛嫌悪や人種差別ともとれる発言をしてたやつらも、世界と一緒に少しずつ変わってるんだよ。社会を変えようとするいくつものムーヴメントから学んで、俺らも人として成長してるんだ」
ジョーダンはDIYのパンクシーンを通じて、どんなことでも達成できるということをバンドメンバーと共に学んだという。「音楽は世界の縮図みたいなもんなんだよ」と彼は話す。「大衆が買ったり売りつけられたりしているものに惑わされずに、ますます多くの人々が本当の自分を見つけようと格闘し始めてる。ハードコアを好きになる人の数も増えてるけど、それは馴染みのないジャンルで新鮮だからというだけじゃなくて、他の音楽には見られないメッセージや感情をそこに見出してるからなんだ。バンドに興味があるやつは、今すぐ始めるべきさ」と彼は付け加えた。「自分自身を理解し、他人から理解されたいと思っているなら、とにかくやってみればいいんだよ」
From Rolling Stone US.
Soul Glo JAPAN TOUR 2023
2023年10月26日(木)京都・磔磔
サポート・アクト:LASTEND
2023年10月27日(金)大阪・LIVEHOUSE ANIMA
サポート・アクト:TIVE
2023年10月28日(土)名古屋・新栄シャングリラ
サポート・アクト:Some Life
2023年10月29日(日)神奈川・横浜B.B.street
サポート・アクト:tatara
2023年10月31日(火)東京・渋谷クラブクアトロ
サポート・アクト:SHAPESHIFTER
公演詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=4003