俳優・浜田学、凄まじかった韓国映画撮影。共演したチャン・ドンゴンの“可愛い”一面には…ほっこり「みんなで大笑いした」
『太陽にほえろ!』の復活版のドラマスペシャル『七曲署捜査一係』(日本テレビ系)で俳優デビューし、『葵 徳川三代』、『武蔵 MUSASHI』、『功名が辻』、『龍馬伝』、『江〜姫たちの戦国〜』、『平清盛』、『軍師官兵衛』、『花燃ゆ』、『西郷どん』など多くの大河ドラマ(NHK)に出演していることでも知られている浜田学さん。
映画『レジェンド&バタフライ』(大友啓史監督)、映画『わたしの幸せな結婚』(塚原あゆ子監督)に出演。2023年10月21日(土)に新宿K’s cinemaで初主演映画『道で拾った女』(いまおかしんじ監督)が公開される。
◆オーディションで韓国映画に出演
2011年、浜田さんは映画『岳 -ガク-』(片山修監督)に出演。この作品は、高度なクライミング技術を持つ山岳救助ボランティア・島崎三歩(小栗旬)の活躍と、山岳救助隊に配属された新人女性救助隊員・椎名久美(長澤まさみ)の成長を描いたもの。浜田さんは、山岳救助隊のメンバー・関勇を演じた。
――『岳 -ガク-』の山岳救助隊も合っていましたね。
「ありがとうございます。関役は筋トレマニアという設定だったので、からだを鍛えて欲しいと監督から要望がありました。救助隊の詰所に筋トレ器具なども置いて筋トレをするシーンも撮ったんですけど、カットされてしまいました(笑)。結構頑張って筋トレもしていたんですけどね」
――冬山のシーンも結構あったので、撮影が大変だったのでは?
「白馬に行って登山したり、ロケも多かったですが、僕はそんなに大変というほどではなかったです。(主演の)小栗(旬)さんは相当大変だったと思います」
2012年、浜田さんは韓国映画『マイウェイ 12,000キロの真実』(カン・ジェギュ監督)に出演。この作品は、戦時下で日本、ソ連、ドイツの3カ国の軍服を着て戦い、何度も捕虜になりながらも生き抜いた男の実話を映画化したもの。
祖父は憲兵隊司令官、父は医者という裕福な家庭に育った主人公・長谷川辰雄役にオダギリジョーさん。長谷川家の使用人の息子キム・ジュンシク役にチャン・ドンゴンさん。浜田さんは長谷川の副官・向井少佐を演じた。
――雪のシーンというと『マイウェイ 12,000キロの真実』も多かったですね。
「そうですね。あの雪はほとんど作りものなんです。すごく寒かったですけど、本物の雪のシーンは、そんなに多くなかったですね。
雪のシーンより、オダギリジョーさんとの登場シーンを韓国の海沿いの埋め立て地のようなところで撮影したのですが、風がものすごく強くて、軍服だけだったので、すごく寒くてしんどかった記憶があります。
捕虜時代は、いろいろ分厚い上着などを着ていたので何とか大丈夫だったんですが、捕虜になる前の軍服のときのほうが寒くて大変でした。軍服の下にカイロも入れていたのですが、それでもやっぱりめちゃくちゃ寒かったですね」
――韓国の冬の寒さは厳しいですものね。
「何か日本の寒さとちょっと違うんですよね。みんなホッカイロをたくさん貼っていたんですけど、あのときチャン・ドンゴンさんのシャツの間から可愛いキャラクターのピンク色の服が出てきて、みんなで大笑いしたということもありました(笑)」
――壮絶なシーンの裏でそんなことがあったのですね。
「そうなんです。彼(チャン・ドンゴン)とはいくつか共通点があって、サッカーより野球が好きなところ、口数があまり多くないところ、実は役とは程遠いぐらいおっとりしているところなど、なのでこういう渋い役をやるのは大変だろうなあと思いながら見ていました」
――浜田さんは、渋い役を演じるのはきついですか?
「うーん、どうなんでしょう。自分とは違うタイプの役という意味でやりがいがすごくあります。考えてみたら高校のときもおっとりとしていたはずなんですけど、顔が怖いから勝手に怖い人だと思われて(笑)。その期待に応えようと、厳しい先輩だったかもしれません」
――その頃から演じていたということでしょうか。
「自分では演じているつもりはないですけど、何か違う自分に陶酔しちゃっていたんじゃないですかね(笑)。だからやっぱり違う人物を演じるということは、すごく楽しいです。ただ、陶酔はしないようにしていますけど」
◆爆破シーンの火がすぐ近くに…
韓国映画と言えば、迫力のアクションシーンで知られているが、爆破シーンの火薬の量もすごかったという。
「この映画はアクションにものすごく力を入れていて、戦争の爆破シーンの撮影がすごかったんです。何千万円もするらしい戦車もまるごと何台も作っていました。
その戦車を走らせて爆破するのですが、火薬の量がすごくて撮影をしていても熱を感じるんです。ブワーッと燃えていて、埋め立て地で撮影をしていたので、風が強いからその火がすぐ近くまで来て見えるんですよ。
熱いけど、芝居を続けていなきゃいけない状況がたくさんあったので、『凄まじいなぁ』と思いながらやっていたのですが、韓国のスタッフは『ケンチャナヨ(大丈夫)、ケンチャナヨ』って言うんですよ。『いやいや、大丈夫じゃないだろう』って(笑)。当時日本では、ここまで踏み込んだアクションは経験したことがなかったので、すごく勉強になったし、何よりも楽しかったですね。
待つ時間もかなり長かったです。2、3時間かけて戦車の下に爆発物を置いて爆破して破壊させようとしたら、それが全然、画的に良くなかったんです。全然爆発しているように見えなくて(笑)。
『じゃあ、どうしようか?この戦車の下のここを削ってなくして、そうすればいろんなところから煙が出るはずだから、今から削ろう。3時間はかかるな』という感じなんですよ。それで、3時間待ってやり直して…、時間の使い方が贅沢だなって思いました」
――浜田さん演じる向井少佐は、戦争が終わって帰国したら父親と一緒にこけし作りをするという夢があったのに、部下を守って亡くなってしまいます。
「はい。山から転げ落ちて死んでしまう。あれは、本当は転げ落ちて木に激突したときに、枝が頭に突き刺さって目から飛び出すという設定だったんです。それで人形を作って、後頭部を木に打ち付けて枝が突き刺さって目から…という映像を撮ったんですけど、結局使われなかったんですよね。
それで、『どうして使わなかったのですか?』って監督に聞いたら、『あまりにも怖いから使わないことにした』って言われました。どのくらい怖かったのか見てみたかったですけどね」
――初めての韓国映画でしたが、いかがでした?
「撮影方法はもちろん違いましたけど、オダギリジョーさんや山本太郎さんをはじめ、日本のキャストもいましたので、毎日が充実した日々でした」
――山本さんが演じた野田曹長は、ものすごくエキセントリックな差別主義者でした。
「そうですね。でも、最初に僕がやりたいと思ったのは、野田曹長役だったんです。オンラインでのオーディションだったのですが、僕は山本さんの役がやりたくて、山本さんは僕の役をやりたかったんです。だから、やりたい役と印象って違うんだなあって(笑)。
撮影が終わった頃に山本さんに『実は太郎さんの役がやりたかった』って言ったら、山本さんが『お前、何言っているんだよ。俺は学くんの役がやりたかったんだよ』って言っていました(笑)」
――おもしろいものですね。出来上がった作品をご覧になっていかがでした?
「あのスケールはやっぱりすごかったですよね。台本がかなり分厚かったので、出演シーンをカットされる可能性もあるなという危機感を持っていたんです」
――オダギリジョーさん演じる主人公を支える副官ですからそれはないでしょう?
「だけど、後ろにいるだけという感じに編集でしようと思えばできるわけですよ。外国映画ですし、そういう危機感を持って過ごしていましたけど、ほぼほぼ出ていたので、自分のことに対してはとてもホッとしました。
あの長さの台本を、どのエピソードもほとんど殺さず、編集して繋げていたので、テンポもあったしそれはすごいなって思いました。
――海外の作品を経験されたことで変化はありました?
「カン・ジェギュ監督は、あまり(演技や動きを)注文しない監督で、まずやってみてという感じだったんです。わりと自由にやらせてくれて、役者に責任を持たせてくれる監督だったのですごくやりがいがありました」
――辞めたいと思ったことはありますか。
「それはあります。やっぱり2カ月ぐらい仕事がなかったときは、辞めたいと思うこともありました。それで、また仕事が入ると大丈夫かなって徐々に思ってきたり…。
役者として自分がステップアップできてないんじゃないかって思ったときに、このまま続けられるかなという不安はありました。ちょっともう無理なんじゃないかなって思う時期は何度かありましたね。
保障はない仕事ですからね。最近ありがたいなって思うのは、ちょっと重要な役をやらせてもらえることが増えてきたかなって思うので、それはすごく感謝しています」
浜田さんは、『日本沈没ー希望のひとー』(TBS系)、『探偵ロマンス』(NHK)、映画『あいたくて あいたくて あいたくて』(いまおかしんじ監督)、映画『レジェンド&バタフライ』(大友啓史監督)に出演。
2023年10月21日(土)には新宿K’s cinemaで初主演映画『道で拾った女』が公開される。次回は、その撮影エピソードなども紹介。(津島令子)