164cmの小兵MF三戸舜介は異例の存在 J2→J1のステップアップに「大きな壁、大きな挫折はまだない」
サッカー日本代表「パリ世代」インタビュー10
三戸舜介(アルビレックス新潟/MF)前編
今季プロ3年目を迎えた三戸舜介のJリーグデビューは、2021年2月のこと。ルーキーシーズンのJ2開幕節にして、早くも記念すべき第一歩を踏み出した身長164cmの小兵は、以来、アルビレックス新潟で着実に力をつけ、チームの勝利に貢献してきた。
所属クラブでなかなか出場機会を得られない、あるいは、自身は活躍できても所属クラブの成績が芳しくない──そんな苦労を味わう選手が少なくない"パリ世代"にあって、三戸の存在は異例と表現してもいいほどだ。
1年目の一昨季は、高卒ルーキーながら20試合を超えるリーグ戦に出場。2年目の昨季は5月のJ2月間MVPに選ばれる活躍を見せたばかりか、チームもJ2制覇。3年目の今季は戦いの舞台をJ1へと移し、さらなる飛躍を遂げるべく充実のシーズンを送っている。
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三戸舜介(アルビレックス新潟)2002年9月28日生まれ
── 三戸選手がサッカーを始めたきっかけは?
「幼稚園の頃からボールを使う遊びが好きで、なかでもサッカーが好きだったので(本格的に)やりたいなと思ったのがきっかけだと思います。(最初に入った)原サッカースポーツ少年団は小学校の部活みたいな感じで、小3の時に入りました」
── 小3というと、比較的遅めですね。
「小学校に入った頃から、親には『やりたい、やりたい』と言っていたんですけど、家のことをしなかったり、宿題をしなかったりで、親から『ちゃんとできるようになるまではダメ!』って言われて......(苦笑)。小3になった時、2歳上の兄も一緒にやるっていうので『じゃあ、入ろうか』ということになりました」
── その後、山口県宇部市出身の三戸選手が、なぜJFAアカデミー福島に進むことになったのですか。
「親と中学の進路について話した時に『プロを目指したい』ということを伝えて、最初は山口県のなかで(中学生の)チームを探していました。でも、これといったところがなく、どうしようかと悩んでいた時に、親がたまたまたテレビでJFAアカデミー福島の特集を見たらしくて」
── テレビで、ですか。
「(JFAアカデミー福島を卒業した)田中陽子選手が山口県出身ということで特集が組まれていたみたいで。それを見た親から『ここへ行ったらどうかな』と言われて、自分も『全国から選手が集まるし、レベルが高いんだろうな。入れるなら入りたいな』と思って、試験を受けることにしました」
── プロを目指すなら、Jクラブのアカデミーという選択肢もあったのでは?
「小さいころは、ただただサッカーが好きでやっていて、Jリーグの試合もそんなには見ていなかったので、当時は(隣県にある)サンフレッチェ広島が強かったですけど、そういうところに行きたいとも思っていなかったんです。
そんな時に、『全国から選手が集まる学校があるよ』っていうのを聞いて......、親から洗脳されたのかもしれないですけど(苦笑)、自分も『そこしかない!』みたいな感じになって、(JFAアカデミー福島に)行きたいと思いました」
── JFAアカデミー福島には中・高の6年間通ったわけですが、その間、プロを目指す気持ちは揺らぎませんでしたか。
「最初はそう思っていても、だんだんと『なりたいけど、なれるのかな』に変わっていったのが、実際のところでした。チーム内では試合に出させてもらっていても、ほかのチームを見て『ぜんぜん、すごいヤツがいるな......』というのは、ずっと思っていたので」
── プロになれるという手応えを感じ始めたのは、いつごろですか。
「高2の時にU-17ワールドカップに出たんですけど、その大会は高校に上がる時に『これに出られたらプロに行けるんじゃないか』って、ひとつの目標にしていた大会でした。親とも『がんばってU-17ワールドカップに出ようね』っていう話をしていましたし。
その目標が達成できたので、『これでプロになれるのかな』って考えが変わってきましたね。(U-17日本代表では)周りも(ほとんどの選手が)プロになっている環境でもあったので、自分も現実的になってきました」
── アルビレックス新潟からの獲得オファーを受けたのは、いつですか。
「U-17ワールドカップが終わってすぐだったので、高2の冬でしたね。それまでは、親が心配性なのでセカンドキャリアのことも考えて『大学へ行ったほうが選択肢も広がるんじゃないか』ってめちゃめちゃ言われていましたし(苦笑)、プロを目指しながら大学も視野に入れていたんですけど、新潟から話があってからはプロ1本で考えました」
── ほかにもオファーがあったと聞きますが、なぜ新潟を選んだのですか。
「その時アルビはJ2でしたけど、やっているサッカーがいいなと思ったし、スペインのサッカーが好きで(当時の)監督がスペイン人のアルベルト(・プッチ・オルトネダ)だったので、その下でやってみたいなっていうのがありました」
── 高校3年時には特別指定選手として、すでに新潟の練習にも参加しています。
「その年は(新型コロナウイルス感染拡大で中断期間が長く)過密日程の連戦だったので、試合にも出られるんじゃないかという気持ちもあって、練習に参加させてもらいました。1回目は2週間、2回目は1カ月くらいだったので、トータルで1カ月半くらいでしたね。結局、試合には出られなかったですけど、いい経験になりました」
── 高校生がプロの練習に参加してみて、課題を感じたことはありましたか。
「正直、あのころが一番、体が動いていた感じがあって......。うーん......プロでやっていけそうにないなと思うことはなかったです。そこで自信がついたというか、いけそうだなって感じていました」
── 実際、プロ1年目から25試合に出場。その感覚は間違っていなかったことになります。
「でも、特別指定で練習参加した時より、プロに入ってからのほうが、そこでの厳しさや難しさを感じました。時間が経つにつれて気づいた......という感じです。練習参加の時はあまり考えていなかっただけ......なのかもしれないですけど(苦笑)。
たぶん(それまで試合に出ていたのに)試合に出られなくなったり、ちょっとの時間しか出られなかったり......という状況になってみて、初めて感じ出したんだと思います」
── それでも2年目もJ2で24試合に出場し、3年目の今季はJ1昇格。理想的なステップアップを続けているように見えます。
「まさに、そのとおりじゃないかなと思います。本当に理想的というか、つまずいていないというか。もちろん、小さな壁にはぶつかっていますけど、そこまで大きな壁、大きな挫折はまだないので。
本当にこのクラブを選んでよかったと思うし、タイミングがよかったというか、恵まれているなって思っています。ただ、あまりにも(順調に)ポンポンときて、ほとんど挫折を感じていないので、ここからが少し怖いですね」
── 今季プロ3年目を迎え、自分なりに成長を感じる部分はどんなところですか。
「技術的なところはどうなのかわからないですけど、プロの世界に慣れ、気持ち的なところでも余裕を持てるようになったので、強気のプレーが出てきているのは成長したところじゃないかなと思います」
── 今季初めてJ1でプレーしてみて、どんなことを感じていますか。
「やっぱり(プレーの)強度が違うなって感じています。今は慣れてきたのでそこまでではないですけど、最初のころは筋肉痛になるくらい、しんどい試合もありましたから。
あとは(プレーの)クオリティですね。J2とは質が違うなっていうのは感じます。ひとつミスしたらそこで(ゴールを)決められちゃうとか、こっちが優勢だったのに一気に逆転されてしまうとか、そういうところは(J2とは)違いがあると思います」
── 当初はサイドでプレーすることが多かった三戸選手ですが、伊藤涼太郎選手(シント・トロイデン/ベルギー)が移籍して以降、中央のポジションに入るようになりました。
「わからないことだらけですね、正直(苦笑)。どこに動いたらいいのか、ポジショニングは一番わからないところです。自分が思うように自由に動いてやってはいるんですけど、それが試合中にいい方向に行くこともあれば、悪い方向に行くこともあるので......。
自由に動くことにプラスして、もう少し周りを見ながらやれるように。もっとポジショニングのところを勉強していかないといけないなって、やっていて思います」
── 今季の新潟は、内容的には高い評価を受けながらも、なかなか結果に結びつかないもどかしさも味わっています。
「自分たちのサッカーをやってきて、できている部分はありますけど、やっぱり勝てていない、勝ち点を積み重ねられていない、というのが現状です。そこは自分も含めて、点を取れていないのが要因だと思っています。
本当に「(伊藤)涼太郎くん以外、取っていないんじゃないか」っていうくらい、前線の選手が点を取れていない。うしろは本当によく守ってくれているのに、それじゃあ勝てない。
だから、前(の選手)が点を取るしかない。もちろん細かいところはもっとやっていかないといけないとは思いますけど、チームとしては松橋(力蔵)監督がやろうとしているアルビのサッカーはできているので、自分自身、もっとゴール数を増やしたいですね」
(後編につづく)
◆三戸舜介・後編>>見据えるパリ五輪の先「海外行きたい欲がもう、バカみたいに...笑」
【profile】
三戸舜介(みと・しゅんすけ)
2002年9月28日生まれ、山口県宇部市出身。中学校進学と同時にJFAアカデミー福島に加入。2020年から特別指定選手としてアルビレックス新潟の練習に参加し、翌年に加入する。同年2月のギラヴァンツ北九州戦でJリーグデビュー。日本代表には2017年より各カテゴリーで選ばれ、2019年にはU-17ワールドカップも経験している。ポジション=MF。身長164cm、体重60kg。