6人の日本人選手がクループステージの舞台に立つ2023−24のヨーロッパリーグ(EL)。その組み合わせ抽選会が現地時間の9月1日、モナコで行なわれ、以下のように決まった。

グループA
ウエストハム(イングランド)、オリンピアコス(ギリシャ)、フライブルク(ドイツ)、TSC(セルビア)

グループB
アヤックス(オランダ)、マルセイユ(フランス)、ブライトン(イングランド)、AEKアテネ(ギリシャ)

グループC
レンジャーズ(スコットランド)、ベティス(スペイン)、スパルタ・プラハ(チェコ)、アリス・リマソール(キプロス)

グループD
アタランタ(イタリア)、スポルティング(ポルトガル)、シュトルム・グラーツ(オーストリア)、ラクフ・チェンストホヴァ(ポーランド)

グループE
リバプール(イングランド)、LASKリンツ(オーストリア)、ユニオン・サン・ジロワーズ(ベルギー)、トゥールーズ(フランス)

グループF
ビジャレアル(スペイン)、スタッド・レンヌ(フランス)、マッカビ・ハイファ(イスラエル)、パナシナイコス(ギリシャ)

グループG
ローマ(イタリア)、スラヴィア・プラハ(チェコ)、シェリフ・ティラスポリ(ウクライナ)、セルヴェット(スイス)

グループH
レバークーゼン(ドイツ)、カラバフ(アゼルバイジャン)、モルデ(ノルウェー)、BKヘッケン(スウェーデン)

 日本人が同じ組で戦うのはグループEで、リバプール(遠藤航)とユニオン・サン・ジロワーズ(町田浩樹)である。リバプールに電撃的に移籍した遠藤はこれまで先発で1試合、交代出場で1試合出場しているが、これからどれほど出場機会を得られるか、視界良好とは言い難い、楽観的にはなれない厳しい情勢にある。

 リバプールがELに出場するのは2015−16シーズン以来8年ぶり。対戦相手の顔ぶれは、これまでチャンピオンズリーグ(CL)で戦ってきた相手よりだいぶ落ちる。プレミアリーグの相手を下回る可能性さえある。ブックメーカーは事実、リバプールを断トツの優勝候補に挙げている。

【遠藤航の出場機会は増えるはず】

 南野拓実が在籍していた時にはなかった緩い環境である。とりわけELのグループステージには、CLのようにベストメンバーを送り込む必然性がない。

 ユルゲン・クロップ監督の現在の遠藤への評価がどれほどなのか定かではないが、そのELでの出場機会は増えると思われる。南野より有利だろう。遠藤には、皮肉にも昨季のリバプールの不振(プレミア5位)が幸いしている。

 30歳にして初めて欧州のコンペティションに出場する遠藤と、8シーズンぶりにELの舞台を戦うリバプール。遠藤の2階級特進ぶりをそこに見ることができる。

 一方、町田が所属するサン・ジロワーズは、2年連続のEL出場だ。しかし町田の出場歴は1試合のみ。昨季の準々決勝レバークーゼン戦のセカンドレグに限られる。国内リーグでスタメンを続ける今季は楽しみである。リバプール戦はまさにキャリアハイとなる一戦になる。


初めてのヨーロッパリーグに挑む三笘薫(ブライトン)

 三笘薫所属のブライトンは、ブックメーカーによればリバプール、ローマ、ビジャレアル、レバークーゼンに次ぐ5番人気を誇る。つまり、グループBでライバルとなるアヤックス、マルセイユより力は上と見られている。欧州のコンペティションに初めて出場するチームが、これほどの評価を得た過去はあっただろうか。プレミア6位は欧州内でどれほどなのか。32チーム中5番人気という下馬評に、その位置づけの高さが見て取れる。

 とはいえ、このB組は全8組の中で1番の激戦区だ。2位チームはCLのグループステージで3位になったチームと、ベスト16入りを懸けたプレーオフを戦わなければならないレギュレーションも輪を掛ける。2位では危ないのである。

 最も興味深い試合はやはり、サッカーのコンセプトが一致するアヤックス戦になる。両ウイングを使った深みのある攻撃。ブライトンの左ウイング三笘に、アヤックスファンが大層なシンパシーを抱いても不思議はない。アヤックス出身のかつての名ウイング、マルク・オーフェルマルスをイメージする人もいるだろう。アヤックスが金満クラブなら、三笘はすぐにでもほしい選手に違いない。

【プレミア優勢の構図】

 ブライトンはシーズン前、アヤックスの中心選手であるモハメド・クドゥス(ガーナ代表)に食指を伸ばしていた。両者の上下関係をそこに見て取ることができた。クドゥスは結局、同じく昨季までアヤックスの中心選手として活躍したエドソン・アルバレス(メキシコ代表)ともども、今季のELでグループAを戦うウエストハムに移籍していった。

 ウエストハムは、昨季のカンファレンスリーグ(ECL)覇者の資格で今季のELに出場する。プレミアでの昨季の順位は14位だった。アヤックスはそこにさえ金銭的な上下関係で劣っていることになる。クラブの名門度では天と地ほどの差があるというのに、だ。ブライトンはアヤックスに負けたら格好悪いということだ。

 だが、中心選手を抜かれても、アヤックスには、カルロス・フォルブス(19歳・FW)、ヨレル・ハト(17歳・CB)、ベンヤミン・タヒロヴィッチ(20歳・MF)など、名前を覚えておきたい優秀な若手がいる。まさにロベルト・デ・ゼルビ監督が引き抜きたくなるような選手たちだ。

 ブライトン対アヤックスは、ELグループリーグ屈指の好カードと言える。ブライトンでは、バルサから期限付き移籍で加わったアンス・ファティと三笘の関係が気になる。ポジションが重なる2人をデ・ゼルビ監督はどう使い分けるのか。冬の移籍で三笘は移籍するのか。

 堂安律所属のフライブルクは昨季のブンデスリーガで5位だった。しかしグループAの前評判ではウエストハム(プレミア14位)に劣る。ウエストハムがクドゥス、E・アルバレスをアヤックスから獲得したことも輪をかけるが、ここにもプレミア優勢という欧州サッカー界の縮図が見て取れる。堂安はELの舞台でプレミアの金満クラブに目をつけられるような活躍ができるか。こちらにも目を凝らしたい。

 それはグループDを戦うスポルティングの守田英正にもあてはまる。昨季、守備的MFとしてともにCLを戦ったマヌエル・ウガルテ(ウルグアイ代表)は、今季パリ・サンジェルマンに高額で買われていった。だが、負けず劣らずの活躍を見せた守田はスポルティングに残った。

 また、そのCLで同じ組に振り分けられて対峙した日本代表の同僚、鎌田大地はフランクフルトからラツィオに移籍。今季もチャンピオンズリーガーとしてプレーする。守田にとって、今季は欧州の階段をもう一歩昇ることができるかどうかの正念場である。このグループDで前評判の高いアタランタに負けるわけにはいかない。

 運を感じるのは常本佳吾だ。つい2カ月ほど前まで鹿島アントラーズでプレーしていた常本。グループGのセルヴェットは昨季のスイスリーグ2位チーム。CLの予備予選で3回戦に進んだことでELの出場権を得たわけだが、そこに常本は関与していない。さらに言えば、好選手ではあるが、日本代表歴はない。またとないチャンス到来である。