8月14日に開幕したフランスのリーグ・アン。伊東純也に加え、今シーズンから中村敬斗が加入してふたりの日本代表がプレーするスタッド・ランスは、第3節を終えて2勝1敗。現在リーグ3位に食い込むなど、上々の滑り出しを見せている。

 とりわけ別格のパフォーマンスでスポットライトを浴びているのが、リーグ・アンで2年目を迎えた伊東だ。


開幕戦でゴールを決めて喜ぶ伊東純也

 まずは第1節のアウェーでの強豪マルセイユ戦。昨シーズン同様、4-2-3-1の右ウイングで先発した伊東は、開始10分にMFマーシャル・ムネツィのヘディングの折り返しに対し、テクニカルな右足ボレーで直接ネットに突き刺し、新シーズン挨拶代わりの一撃をお見舞いした。

 38分には、右サイドからMFアミール・リチャードソンの落としたボールを、ボックス手前で右足一閃。シュートはブロックに入った相手の足をかすめて、ネットを揺らした。

 残念ながら、このゴールはリチャードソンが受けた縦パスがタッチラインを割っていたことで幻となった。だが、国内屈指の熱狂度を誇るマルセイユサポーターを2度にわたって黙らせた伊東は、1-2で試合には敗れたもののチーム内でベストのプレー内容だった。

 さらに第2節のクレルモン戦では、本拠地スタッド・オーギュスト=ドローヌが"伊東劇場"と化した。

 前半17分のムネツィの先制ゴールは、伊東のコーナーキックから生まれたもの。そして1-0のまま迎えた後半84分、自陣からのロングカウンターに抜け出した伊東は、MFテディ・テウマからのロングパスを、スピードを落とさないまま抜群のコントロール。2タッチ目でファーサイドにピンポイントクロスを配球すると、走り込んだFWモハメド・ダラミーがきっちりゴールに押し込み、ダメ押しの2点目を決めた。

 このゴールが決まったあとのスタジアムの大歓声は、おそらくダラミーの加入後初ゴールへの称賛もあっただろうが、そのほとんどは伊東の絶品トラップからのアシストを目撃した感動と興奮によるものだったと見ていいだろう。

【大事な場面で必ずビッグプレーを見せてくれる】

「ブラスター(熱線銃)と化した伊東」

 翌日の『レキップ』紙は、そんな見出しで伊東を称賛。マルセイユ戦に続き、チーム内最高の7点をつけた。

 直近の第3節モンペリエ戦では、ユニオン・サン=ジロワーズ(ベルギー)時代に三笘薫のチームメイトでもあった新戦力MFテウマの左足が炸裂し、2ゴール1アシストと主役の座は移ったが、チームは3-1で勝利。伊東の見せ場は少なかったが、3試合連続のフル出場を果たして任務を遂行した。

 ここまでのパフォーマンスを見るかぎり、伊東は昨シーズン以上の充実ぶりで、完全にチームの中心選手になった様子だ。しかも、昨シーズンの快進撃の主役だったFWフォラリン・バログン(今シーズンはモナコに移籍)が退団したこともあり、スタッド・ランスの攻撃は伊東なくして成立しない状況になっている。

 際立っているのが、伊東が試合を決定づけるビッグプレーを見せるようになったことだ。

 チームの大黒柱になるような選手は、必ず大事な場面でビッグプレーを見せてチームを助けてくれる。アウェーでの難しいマルセイユ戦の先制ゴールも、追いつかれるかもしれないような展開だったクレルモン戦の終盤に生まれたダメ押しゴールのお膳立ても、大黒柱ならではの大仕事だった。

 試合を動かす選手に進化しつつある伊東は、この調子を持続すれば、お世辞抜きでリーグ・アンを代表する選手になるだろう。

 一方、加入初年度の中村は、マルセイユ戦の後半60分に左ウイングのMFレダ・カドラに代わって開幕戦デビューを飾ると、第2節と第3節は4-3-3の左ウイングでスタメン出場を飾っている。

 もちろん、まだ何も結果を残したわけではないので、手放しでは喜べない。だが、それでも初めてのリーグ・アンで確実に前進していることは間違いなく、そういう意味ではここまで順調に推移している。

 昨シーズン、オーストリアのLASKリンツでリーグ戦14ゴールをマークし、今夏にステップアップ移籍を果たした中村にとって、最初のハードルになるのは「リーグ・アンのサッカーに適応すること」だ。

【中村敬斗がレギュラーに定着する可能性は十分】

 その点については、チームメイトに同胞の先輩がいることは大きなアドバンテージになるだろう。それがあったからこそ、2試合目でスタメンの座を掴めたのかもしれない。

 ここまでのプレー内容を見ると、まだ接近戦で自分の間合いでプレーできていないことが課題として挙げられる。それがわかっているから、なるべく相手と距離をとってプレーをするケースが多いのだが、それだけだと無難なプレーはできるが、なかなか相手の脅威にはなれない。

 今後、試合を重ねるごとに、接近戦でどのような変化が見られるようになるかは、中村の活躍度を計るバロメーターのひとつになりそうだ。

 また、左SB(ジョシュ・ウィルソン=エスブランド)とのコンビネーションも課題のひとつに挙げられる。ただし、初先発したクレルモン戦と比べると、第3節のモンペリエ戦のほうが局面におけるお互いのプレーゾーンの棲み分けが整理されつつあったので、この点については改善中と見ていい。

 伊東と違い、激しいポジション争いを強いられる中村にとって、当面のライバルになるのは開幕戦で先発したカドラと、中村と同じ移籍金で新加入したダラミーだ。

 特に伊東のアシストで初ゴールを記録したダラミーは、いいプレーとミスがはっきりしているタイプのアタッカーである。そこでウィル・スティル監督は、現時点では中村をスタメンで起用し、勝負をかける時にダラミーを投入するというカードの切り方を選択している。

 それだけに、この采配が続いている間に、中村としては何としてもゴールやアシストといった結果を残すことが重要になるだろう。いずれにしても、前途洋々とは言えないまでも、レギュラー定着の可能性は十分に残されている、というのが中村の現状か。

 ともあれ、チームの大黒柱になりつつある伊東と、今後の成長が期待できそうな中村がともにプレーするスタッド・ランスは、日本のサッカーファンにとって必見のチームと言えるだろう。