50代で大腸がんになった妻。今までどおり浮気する夫に初めて抱く感情:セックスレス・聡美さんの場合1
日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「長年連れ添えば、見た目も生活も変化していくのは当然なのに…」と語るのは聡美さん(仮名・50代)です。大病、夫の風俗通い、セックスレス…。やるせない悲しみのなかにいる心境を打ち明けてくれました。
一年前に発覚した大腸がん。抗がん剤治療中に夫は…
27歳になった息子さんは2年前から海外赴任中。50代で夫婦2人の時間がまた増えて第二の人生が始まったと思っていた聡美さん。大病を患ってしまい、セックスレスになってしまったそう。
●子育てが落ち着いて、再就職したいと思っていた矢先
パッと目を引く、目鼻立ちのはっきりした顔立ちの聡美さん。「子どもが小さかったときは、とにかく寝不足で大変だった」と言いながらめくる古いアルバム。そこに写る若き日の彼女の写真は、芸能人かと見まごうほどの美貌です。
「専業主婦だったので、平日の日中は、近所のママ友と予定を合わせて、買い物やお茶に行くのが楽しみでした」
子どもが成人してからもママ友たちとのつき合いは続いたといいます。
「また就職したいなと思っているのですが、専業主婦というブランクが長すぎて、なかなか正社員でいい働き口がありません。大手の企業だと、ほとんど書類で落ちてしまいます」
それでも経営者である夫の稼ぎはかなりよく、夫は「あわててブラックなところで働く必要はないよ」と言ってくれたといいます。ただ社会復帰をしたいと考えている聡美さんとしては、暇があれば常に求人サイトを閲覧していたそう。そんな日々はある日、病気になったことで一転します。
●胃腸炎かと思ったら大腸がんだった
「おなかが痛くて病院へ行ったのですが、胃腸炎と言われて、薬を飲みながら2か月ほど様子を見ていたもののぜんぜんよくならず。その年のお正月、あまりにもおなかが痛くてぜんぜん食事を食べていない私を心配した親戚たちに説得され、夫につき添われて別の病院で精密検査を受けたら、腸閉塞になっていることが判明。そこでもしかしたら腸を塞いでいるのはがんかもしれないということで、すぐに大きい病院へと転院したところ、大腸がんの診断を下されました」と聡美さん。
毎年受けていた健康診断の便潜血で引っかかっていなかったので、ご自身は大腸がんの可能性は低いだろうと思い込んでしまっていたそう。後から専門医に、便潜血検査では大腸がんの前がん病変である「大腸ポリープ」や「早期がん」の発見は困難であると聞いて、安易な自己判断をしてしまったことを悔やんだそう。
「結局、近所のクリニックでは胃腸炎という診断で2か月くらい引っ張られて。あそこでもっと別の病院を受診するという選択をしていればこんなに進行しなかったかもしれません」
そしてさらに驚いたのが、がんを告知されてからの聡美さんの夫の行動です。
●平気で浮気をする夫といつも許してきた妻
聡美さんは視線を落としながら、がんが発覚したときのいちばんショックだったという出来事を話してくれました。
「がんが分かってから、夫とギクシャクしちゃっているんです。お金のかかる病気だし、これから抗がん剤治療をするから、向こうもいろいろストレスだったんだと思います」
若い頃から、もともと女ぐせが悪かったという聡美さんの夫。仕事柄、銀座通いは日常茶飯事。ママ友たちに、夫の女性問題に関する愚痴を話したこともあったのですが、周囲からは「私だったらもう別れるレベルだよ」と言われることもしばしば。けれど聡美さんは「子どもがいるし、相手はいつもプロの女性。本気でのめり込んでいるわけじゃないから」と許してきたそう。
ですが、抗がん剤治療は、長期の入院生活を余儀なくされます。
「またあの人浮気しそうだわ〜」とこぼしていた聡美さんの悪い予感はすぐに的中してしまいました。
●妻の入院中に、夫が夜のお店へ
聡美さんが闘病で動けないなか、夫がまた風俗通いを始めたのです。「今回ばかりはいくらお金で割りきった関係とはいえ、本当にやるせない気持ちです」という聡美さん。
まさに抗がん剤治療に挑んで、いちばん苦しい時期。手のひらの血色が少し悪い感じはしましたが、言われなければそんな大変な治療をしているなんてわからないほど。
「この間、病棟の看護師さんに『なんでも話してくださいね』って言われて、ふと『がんを患ってから夫とうまくいっていないんです』ってレスになっている話をしたんです。そういう話、なかなか親戚や友達にもできないし。初めて話しました。そしたら『もう50代なのに、いまだに毎週あったんですね!』とビックリされてしまって…。でも看護師さんのお知り合いの70代の奥様は、ご主人が今も元気で毎週していて大変だとも言っていました。人によるとは思いますが、病気とかしなければ性欲が落ちず、若いときとペースも変わらないんですね」
ただ、夫の行動は、いくらなんでも思いやりがなさすぎると看護師さんも心配されていたそう。女性の立場からすれば、到底許せるものではありません。
しかし、聡美さんは「今は離婚する気はありません。病気だけでも大変なので、環境はできるだけ変えたくない」とキッパリ。
しかし、人生の中でリアルに「死」がよぎったことで、価値観が大きく変わったといいます。体調が落ち着いてから改めて聡美さんに、今後の夫婦関係についてどう考えているのか、インタビューしたお話はまた次回。