危険です。何もないところでつまずくことが増えたら、疑ってほしい病気とは

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「最近、手脚が細くなった気がする」「何もないところでつまずいたり転んだりすることが増えた」「重いものが持ちにくくなった」このようなお悩みはありませんか?

日本人を含むアジア人は、欧米人に比べてやせ型の人が多く、生まれながらに筋肉量が少ない傾向にあります。そのため、高齢になると筋肉量や筋力が低下した状態である「サルコペニア」を発症しやすいと言われています。

今回は、サルコペニアの定義や原因、普段の生活に取り入れやすい対処法などについて解説します。

サルコペニアとは

サルコペニアとは、加齢に伴い筋肉量や筋力が低下していく現象です。サルコペニアになると、歩行や立ち上がる動作が難しくなったり、寝たきりの状態になったりするリスクが増えてしまいます。

サルコペニアは、高齢者の病気と思われがちですが、リスクを回避するためには40〜50代のうちから予防を意識することが大切です。

サルコペニアの原因

サルコペニアの原因はさまざまで、主に次のようなものが考えられます。

・加齢

・運動不足

・栄養不足

・成長ホルモンや性ホルモンの減少

病気(がん、心臓や腎臓などの重症臓器不全、炎症性疾患など)

加齢以外に明らかな原因が認められないものを「一次性サルコペニア」、運動不足や栄養不足、病気などが原因のものを「二次性サルコペニア」といいます。

サルコペニアの予防には食事と運動の工夫が大切

40〜50代のうちからサルコペニアを予防し、健康的な毎日を過ごすためには、食事と運動の両面からの対策が重要です。

食事面

サルコペニアの診療ガイドラインによると、筋肉の材料であるタンパク質がサルコペニア予防に役立つとされています。

タンパク質の1日の摂取目安は体重1kgあたり1.0g以上で、体重が50kgの方だと1日に50g以上摂取する必要があります。食材から摂れるタンパク質量の目安は、肉類だと手のひら片手分の大きさで約20g、卵1個で約6gです。

タンパク質は日々の生活のなかでも不足しがちな栄養素なので、肉や魚、卵、大豆などを使った料理を積極的に摂るようにしましょう。

腎機能が低下している人はタンパク質の摂取を制限される可能性があるため、かかりつけ医にご相談ください。

運動面

日頃から無理のない程度に筋肉に負荷をかけることで、サルコペニアの予防効果が期待できるでしょう。

とくに大きな筋肉のある「脚」や「腰」のレジスタンス運動(筋肉に負荷をかける運動を繰り返しおこなうこと)がおすすめです。ひざの屈伸運動やスクワットなどを、仕事や家事の休憩がてらおこなってもよいでしょう。

サルコペニアの対策には漢方薬もおすすめ!

サルコペニアを漢方で改善していく場合、次のような働きをもつものを選びます。

・胃腸を温めてからだや筋肉に栄養を与える

・全身に栄養を届け、筋肉の機能を回復する

・栄養を補うことで加齢により衰えた筋肉の機能を整える

からだの内側からやさしく働く漢方薬なら、毎日飲むだけで不調の解消と根本的な体質改善を目指せるでしょう。

サルコペニア対策におすすめの漢方薬

・牛車腎気丸(ごしゃじんきがん):加齢により衰えた筋肉や骨に栄養分を与えて温め、さらに水分の滞りにも働きかけ、からだの生理機能を整えます。四肢の冷えや、しびれ、腰や下肢の痛みなどがある方におすすめです。

・人参養栄湯(にんじんようえいとう):からだのエネルギーや栄養を補うことで、疲労倦怠や虚弱体質に働きかけて元気を取り戻すサポートをしてくれます。食欲不振や手足の冷え、貧血などの症状がある方にも向いています。

*漢方薬は比較的安全だといわれていますが、きちんと合ったものでないと十分な効果を得られないだけでなく、場合によっては副作用が生じることもあります。どの漢方薬が適切か見極めるには、専門家のアドバイスに従いましょう。

文・監修/稲嶺千春(いなみね・ちはる)●薬剤師。製薬企業や調剤薬局に勤務する中で、根本治療の大切さを広めたいと考え、精度の高い漢方の情報発信を行う。