勉強ができる子には共通点がある!30億件のデータから見えた真実
親であれば我が子の学力はどうしても気になるもの。
勉強がすべてではないが、できないよりはできた方がいいのはまちがいない。でも、子どもの学力を伸ばすために親は何ができるのか。
『小学生30億件の学習データから導かれる 算数日本一のこども30人 を生み出した究極の勉強法』(文響社刊)は、全世界でオンライン教育事業を展開する「RISU」が各国の小学生から収集したデータをもとに、子どもの成績を大きくアップさせる学習メソッドや子どもへの親の接し方を解説していく。
今回は著者であり同社の代表取締役社長の今木智隆さんにお話をうかがい、子どもの成績や学力が伸びる勉強法や日本の教育の問題点について語っていただいた。
■勉強ができる子には共通点がある!30億件のデータから見えた真実
――『小学生30億件の学習データから導かれる 算数日本一のこども30人を生み出した究極の勉強法』は「子どもの学力を伸ばす」をテーマにした本が溢れるなかで、膨大なデータをもとに正しい勉強法や、正しい親の接し方を解説していきます。この本を通じて今木さんが伝えたかったのはどんなことでしょうか。
今木:世間には教育にまつわる俗説が溢れていて、親御さんとしては自分の子どもに苦労させたくないと、試行錯誤しているでしょう。ただ、小学校でも6年間しかないわけですから、子どもの時間は短い。貴重な時間で試行錯誤をしている時間はありません。データに基づいた正しい学習法で最短ルートを辿って欲しいと考えています。
特に算数は「積み上げ式」の教科ですから、一度つまずいてしまうとその先もできなくなってしまうケースが多いんです。一方で苦手な子どもが多い教科である反面、得意なら効率よく勉強ができる教科でもある。たとえば2桁の筆算ができれば、3桁の筆算も同じ要領じゃないですか。3桁の筆算にも同じ時間をかけずにどんどん先に進めていけばいいです。すべてを同じ時間かけて均等にやる必要はないわけですから。
そうやって効率よく勉強していけば、算数に費やしていた時間を余らせて子どものうちにしかできない貴重な体験をする時間に充てることもできるはずです。
――30億件もの膨大なデータをもとにして書かれている本書ですが、このデータはどのように収集されたものなのでしょうか。
今木:今回の本は弊社が提供している算数タブレット教材「RISU算数」の現在までの利用者が取り組んだ学習データをもとにしています。
いつどのくらいの時間学習したか、どこで何度間違っているかといったお子さまの学習状況を常時把握しているだけでなく、蓄積もしています。
――教育内容としては日本の子ども向けにも海外の子ども向けにも同じものを提供しているんですか?
今木:そうですね。使う言語が異なりますが、内容の方は多少の違いはあれど基本的には同じです。
――日本の小学生と他の国の小学生で学び方に違いはあるのでしょうか。
今木:算数でいえば、アメリカやシンガポールでは「□+1=2」や、「答えが2になる組み合わせを探す」というような学び方が多いのですが、日本ではひたすら「1+1=□」という形の出題で解を出す訓練を繰り返す傾向があり、「計算が早くできることが良いこと」という思い込みがあります。
算数は図形もあれば文章題もあります。計算を特に重視するのは、サッカーでパスやドリブルなど身につけるべきことが他にもあるなかでリフティングだけ練習させるようなものです。「RISU」では計算以外にも様々な問題があり、それこそ先ほどのような、□+1=2といったような問題も出題しています。
学び方、というところで言うと、中国では過熱する教育事情に対して政府が2021年に「宿題、学習塾」を禁じました。日本の子どもも習い事をいくつも掛け持ちして、大人より忙しくしている子もいます。本でも書きましたが、これは決していいことではないと考えています。
――日本の算数教育のお話が出ましたが、「こう変えるべき」という提案はありますか?
今木:日本の教育がそう簡単に変わるとは考えていないので、特に提案はありません。時代が大きく変化しているのに、教育はいつまでも変わらないことへの問題意識が弊社の創業のきっかけの一つになっています。
わかる子もわからない子も同じ授業を受けるのが日本の教育の問題点の一つだと考えているので、「RISU」ではそれぞれの子どものペースで学習できるのはもちろん、わかる子は学年を超えてどんどん勉強を進められるようになっています。
――勉強ができる子や、成績のいい子には生活習慣や学び方、親の接し方などに共通項があるものなのですか?
今木:あります。本でも紹介していますが、親が手を出しすぎない(=我慢ができる)で、子どもを尊重して自主性を伸ばすこと。子どもの勉強時間は意外と短時間であること、自分の力で乗り越える習慣があること、などです。
――「手を出す」というのは具体的にどんなことを指すのですか?
今木:子どもの勉強に関して「こうやってやるんだよ」とか「なんでできないの?」と過度に口出ししたりといったことです。親は状況を見守って「今はこういうところをやっている」とか「ここが苦手なんだな」ということだけ把握して、適切な声がけや励ましはしても、基本的にはあまり口は出さないというのが、成績がいい子の親に共通しています。
ゆっくり考える子もいますし、パパっと解ける子もいます。ゆっくり考えている途中にそうやって口出しされてしまうと、子どもが自分で考える力が伸びにくいのです。
――考える過程で子どもの方から「ここがわからないから教えてほしい」と言われたら、親は教えてあげていいんですか?
今木:もちろんです。そういう子どもからの質問は逆に放置してはいけません。聞かれてもいないのに親の方から口を出すのは良くないということですね。
――そして勉強時間は短時間で済ませる子が多い。
今木:データを見てみると、成績優秀なお子さんは時間帯としては朝の15分、20分くらいの時間で勉強していることが多いです。
勉強時間は長ければいいというものではありませんし、細切れの時間や隙間時間を活用することは大切なのですが、時間が5分あるから5分だけやろうというのはあまり効果がないというデータもあります。
また朝の時間の勉強が効率よい事もわかっています。子どもにとって睡眠は重要なものなので、早く寝て朝勉強する習慣をつけるといいと思います。
(後編につづく)
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勉強がすべてではないが、できないよりはできた方がいいのはまちがいない。でも、子どもの学力を伸ばすために親は何ができるのか。
『小学生30億件の学習データから導かれる 算数日本一のこども30人 を生み出した究極の勉強法』(文響社刊)は、全世界でオンライン教育事業を展開する「RISU」が各国の小学生から収集したデータをもとに、子どもの成績を大きくアップさせる学習メソッドや子どもへの親の接し方を解説していく。
今回は著者であり同社の代表取締役社長の今木智隆さんにお話をうかがい、子どもの成績や学力が伸びる勉強法や日本の教育の問題点について語っていただいた。
――『小学生30億件の学習データから導かれる 算数日本一のこども30人を生み出した究極の勉強法』は「子どもの学力を伸ばす」をテーマにした本が溢れるなかで、膨大なデータをもとに正しい勉強法や、正しい親の接し方を解説していきます。この本を通じて今木さんが伝えたかったのはどんなことでしょうか。
今木:世間には教育にまつわる俗説が溢れていて、親御さんとしては自分の子どもに苦労させたくないと、試行錯誤しているでしょう。ただ、小学校でも6年間しかないわけですから、子どもの時間は短い。貴重な時間で試行錯誤をしている時間はありません。データに基づいた正しい学習法で最短ルートを辿って欲しいと考えています。
特に算数は「積み上げ式」の教科ですから、一度つまずいてしまうとその先もできなくなってしまうケースが多いんです。一方で苦手な子どもが多い教科である反面、得意なら効率よく勉強ができる教科でもある。たとえば2桁の筆算ができれば、3桁の筆算も同じ要領じゃないですか。3桁の筆算にも同じ時間をかけずにどんどん先に進めていけばいいです。すべてを同じ時間かけて均等にやる必要はないわけですから。
そうやって効率よく勉強していけば、算数に費やしていた時間を余らせて子どものうちにしかできない貴重な体験をする時間に充てることもできるはずです。
――30億件もの膨大なデータをもとにして書かれている本書ですが、このデータはどのように収集されたものなのでしょうか。
今木:今回の本は弊社が提供している算数タブレット教材「RISU算数」の現在までの利用者が取り組んだ学習データをもとにしています。
いつどのくらいの時間学習したか、どこで何度間違っているかといったお子さまの学習状況を常時把握しているだけでなく、蓄積もしています。
――教育内容としては日本の子ども向けにも海外の子ども向けにも同じものを提供しているんですか?
今木:そうですね。使う言語が異なりますが、内容の方は多少の違いはあれど基本的には同じです。
――日本の小学生と他の国の小学生で学び方に違いはあるのでしょうか。
今木:算数でいえば、アメリカやシンガポールでは「□+1=2」や、「答えが2になる組み合わせを探す」というような学び方が多いのですが、日本ではひたすら「1+1=□」という形の出題で解を出す訓練を繰り返す傾向があり、「計算が早くできることが良いこと」という思い込みがあります。
算数は図形もあれば文章題もあります。計算を特に重視するのは、サッカーでパスやドリブルなど身につけるべきことが他にもあるなかでリフティングだけ練習させるようなものです。「RISU」では計算以外にも様々な問題があり、それこそ先ほどのような、□+1=2といったような問題も出題しています。
学び方、というところで言うと、中国では過熱する教育事情に対して政府が2021年に「宿題、学習塾」を禁じました。日本の子どもも習い事をいくつも掛け持ちして、大人より忙しくしている子もいます。本でも書きましたが、これは決していいことではないと考えています。
――日本の算数教育のお話が出ましたが、「こう変えるべき」という提案はありますか?
今木:日本の教育がそう簡単に変わるとは考えていないので、特に提案はありません。時代が大きく変化しているのに、教育はいつまでも変わらないことへの問題意識が弊社の創業のきっかけの一つになっています。
わかる子もわからない子も同じ授業を受けるのが日本の教育の問題点の一つだと考えているので、「RISU」ではそれぞれの子どものペースで学習できるのはもちろん、わかる子は学年を超えてどんどん勉強を進められるようになっています。
――勉強ができる子や、成績のいい子には生活習慣や学び方、親の接し方などに共通項があるものなのですか?
今木:あります。本でも紹介していますが、親が手を出しすぎない(=我慢ができる)で、子どもを尊重して自主性を伸ばすこと。子どもの勉強時間は意外と短時間であること、自分の力で乗り越える習慣があること、などです。
――「手を出す」というのは具体的にどんなことを指すのですか?
今木:子どもの勉強に関して「こうやってやるんだよ」とか「なんでできないの?」と過度に口出ししたりといったことです。親は状況を見守って「今はこういうところをやっている」とか「ここが苦手なんだな」ということだけ把握して、適切な声がけや励ましはしても、基本的にはあまり口は出さないというのが、成績がいい子の親に共通しています。
ゆっくり考える子もいますし、パパっと解ける子もいます。ゆっくり考えている途中にそうやって口出しされてしまうと、子どもが自分で考える力が伸びにくいのです。
――考える過程で子どもの方から「ここがわからないから教えてほしい」と言われたら、親は教えてあげていいんですか?
今木:もちろんです。そういう子どもからの質問は逆に放置してはいけません。聞かれてもいないのに親の方から口を出すのは良くないということですね。
――そして勉強時間は短時間で済ませる子が多い。
今木:データを見てみると、成績優秀なお子さんは時間帯としては朝の15分、20分くらいの時間で勉強していることが多いです。
勉強時間は長ければいいというものではありませんし、細切れの時間や隙間時間を活用することは大切なのですが、時間が5分あるから5分だけやろうというのはあまり効果がないというデータもあります。
また朝の時間の勉強が効率よい事もわかっています。子どもにとって睡眠は重要なものなので、早く寝て朝勉強する習慣をつけるといいと思います。
(後編につづく)
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