作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセイ。毎年この季節、梅仕事に没頭する高橋さんに、梅酢や梅しその活用方法を教えてもらいました。

第100回「去年の梅酢どうしてる?」

あっという間に、一年が過ぎて、去年の梅干しまだ余ってますねえ。はい、余ってます。一緒に梅を拾いにいく友人に尋ねると、

「え、もう全部食べちゃいましたよ。母親にもあげたら喜んでくれて」

「すごい! お母さんそりゃ喜ぶやろー。梅酢はどうしてる? 捨ててる?」

「いや、お湯で割って母が毎日少しずつ飲んでるらしいんですよ」

「え! しょっぱくないの?」

「お湯で割るから大丈夫なんじゃないですか。美味しいし、体にいいらしいんですよ」

そうか、むしろ梅のエキスである梅酢の方が体にいいんだ。彼女が言うには、血液をさらさらにしたり、免疫力を上げたり、血圧を下げたり、クエン酸効果で夏バテ防止にもなる。本当にいろんな効能があるらしい。塩分はちょっと気になるけど、お湯で割って飲むなら丁度いいだろう。

●梅酢の活用方法

私も去年の梅酢がたんまり。捨てるのがもったいなくて、酒瓶に移して日常でよく使っている。たとえば、一番最初に母に教えてもらったのが、紅生姜だ。新生姜の出る時期に、この梅酢に薄く輪切りにした生姜を漬け込むだけ。薄ピンク色の紅生姜が完成。食べる前に千切りにして、お好み焼とか和物、炒めものにすぐ使うことができる。

これなら生姜を食べきれなくて腐らすこともないので、保存方法としても最適。ただ、梅干しが残っているところに入れてしまうと、梅もぴりから生姜味になってしまうので、別の容器に梅酢を移して漬ける方がいい。

それから、簡単なピクルスもできる。タマネギをスライサーでスライスして、梅酢と穀物酢を1:1で割り、好みで少しハチミツも加える。そこに、タマネギをどぼんと漬け込むだけ。一緒に千切りにした人参、切ったトマトを入れてもおいしい。

これで、冷蔵庫で一日寝かせたら、簡単ピクルスの出来上がり。お塩が元々入っているので、ゴマをかけてこのまま食べられるし、このピクルスを、レタスやオクラなど他の野菜のサラダの中に混ぜ込んで食べると、アクセントになっていい感じだよ。

冷蔵庫で2週間くらいは持ちます。

この間、レバーを煮るときにも梅酢を入れました。お肉が柔らかくなるし、下処理のときに梅酢につけておけば臭みが取れます。梅酢をフル活用するようになって、酢を買う頻度が少なくなった。

●赤しそもとても便利

「梅の中に入れていた赤しそはどうしてる?」

と友人に聞いてみた。私は、7月に梅を天日に干したあと、もう一度元の梅酢の中に梅を戻してやるが、干したあとは戻さないで梅を保管するという方法もある。

そうなると、この時点で梅酢も赤しそもいらなくなるわけですね。しそは、この暑い時期にしっかり干して、ゆかりを作ってストックしましょう。塩がしっかりついているため海水浴のあとみたいにベタベタして完全に乾くことはない。なので、まあよきところで、フードプロセッサーにかけて(もしくは自力でカットして)細かくして保存。常温でも腐る心配はありませんが、すぐべたべたになるので、冷蔵庫保存がおすすめ。

これ、本当に便利です。そして、市販のゆかりご飯より濃厚なので、夏に料理する気がないわーというとき、ぜひほかほかご飯に混ぜて食べてみて!

おかずはなくとも、これだけでかなりおいしい!!!

それが面倒だわという方、大丈夫です。友人は、

「しそ、干さずにそのまま温かいご飯にのせて食べてますよ。十分おいしいんですよ」と!

そうなんだ。なにも、手間をかけてゆかりにする必要はないんだなあ。

ということで、せっかく手間暇かけて漬けた梅からでた梅酢や紫蘇は、捨てずに活用しましょう。もしかしたら、梅よりも栄養があるのではないかというくらい、梅酢って体に良いそう。瓶に入れておけば常温で数年は保存できます。すでに塩も入っているので万能調味料としていろんな場面で活躍しそうですね。

本連載をまとめた書籍『暮らしっく』(扶桑社刊)でも、梅の話をたっぷり紹介しています。