ビニール袋に入れられた黄色い尿をポリタンクに入れる女性。これで234円は高いか安いか…

 世は空前のSDGsブーム。太陽光発電や昆虫食など“エコ”な取り組みが流行るなか、お隣の中国では究極のリサイクルが流行している――。

妊婦さんのおしっこの買い取りが、一大ブームなんですよ」

 と語るのは、中国事情に詳しい、もがき三太郎氏だ。

「おもに中国の農村部でおこなわれており、いつから始まったものなのか定かではありません。ただ、SNSの普及にともない、買い取り業者がSNSに『尿募集!』といったショートムービーをアップしている影響で、最近、さらに認知されるようになりました。都市部では、仰天ニュースとして話題になっていますよ」

 業者のアップした動画には、大量のポリタンクが積まれたボロボロのトラックが映っている。妊婦の住む家々をまわり、尿を集めているのだ。

「尿を詰め替える様子や農村部で回収する姿を見るに、廃品回収などと同じで、少人数でおこなう小商いのようです。価格は、業者によって異なりますが、1リットルあたり12元(日本円で約234円)ほど。現地の報道によると、ある村では、妊娠した女性がいないか業者がつねにチェックしていて、お金ではなく日用品と引き換えに、尿を集めているそうです。『かさ増しして稼ごうとする不届き者がいるから、現金はダメだ』とインタビューに答えていました。集めた尿は、あらためて妊娠検査薬でチェックしますし、妊婦からは数カ月にわたり継続的に買い続けるので、水を混ぜたり、家族の尿を混ぜるなどして突然、尿の量が増えれば不審がられるはず。不正をするスキはなさそうです」(同前)

 そもそも一部のマニアを除き、いったい妊婦の尿にどのような需要があるのだろうか。

妊婦の尿には絨毛(じゅうもう)性ゴナドトロピン(HCG)という成分が含まれており、これを抽出して、不妊症の治療や女性の黄体機能不全、さらには早期妊娠検査薬に利用しているそうです」(同前)

 まさに、妊婦から妊婦へのエコな循環……。しかし、こうした医薬品は日本でも製造されているはず。まさか妊婦の尿が使われているのだろうか。不妊治療に詳しい、三軒茶屋ARTレディースクリニックの坂口健一郎院長が解説する。

「日本でも尿由来の製剤は流通していますよ。しかし、適切な抗菌処理や滅菌が講じられないと、感染症のリスクがありますし、安定供給も難しい。現在では、遺伝子組み換えによって人工的に製造したものに置き換わりつつあります。製薬メーカーが、下請け企業に対し、尿を提供する妊婦さんの感染症を含めた健康状態など、情報管理がきちんとできてない状態で集めさせているとすれば問題です」

 中国で多くの妊婦が尿を売る背景に、都市部と農村の経済的な格差があると指摘するのは、香港在住のジャーナリスト・角脇久志氏だ。

「習近平政権は、2016年に策定した5カ年計画で『約1億人いる貧困人口を、2020年までにゼロにする』という目標を掲げました。そして2020年12月に目標の達成を発表し、翌年には脱貧困について“全面勝利を収めた”と宣言しました。しかし、その実態は、地方の官僚が中央政府から高く評価をしてもらうため、住民の収入を改ざんするなどの“嘘の数字”の上に成り立っている可能性があると指摘されています。中国では、年収620ドル(約8万6800円)未満を極貧と位置づけていますが、こうした人々が消えたとは到底思えませんし、極貧生活を送る人たちからすれば、1リットル234円は非常においしい収入なんです。中国経済は、約3年続いた厳しいコロナ政策により減速しており、2023年4月の若者の失業率は20%を超えました。もともと貧しい農村では、非常に厳しい生活を強いられているはずです」

“持続可能”なおしっこではないみたい。

写真・すべて中国のSNS「微博」より