『紅の豚』“アジトのポルコ”のヴィネットを筆塗りで製作!【達人のプラモ術<アジトのポルコ>】

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【達人のプラモ術】
ファインモールド
紅の豚 アジトのポルコ
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さて今回のお題は、ファインモールドが発売した「スタジオジブリ ヴィネットコレクションNo.1 紅の豚 ポルコ・ロッソ『アジトのポルコ』」(4180円)。今年3月に発売された、海洋堂とのコラボレーションキットとしても注目のプラモデルです。そのまま組んでもよし! 塗装にこだわってもよし! というキットですが、そこはひと捻り、アクリルガッシュを使った筆塗りでヴィネットの魅力を引き出していこうと思います。ではでは製作スタート!(全4回の1回目)

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」でもレビューを配信中。

 

■注目! スタジオジブリヴィネットコレクションシリーズ

映画『紅の豚』は、スタジオジブリが制作し1984年に公開されアニメ映画です。監督は宮崎駿氏で「飛べない豚はただの豚だ」の台詞でもよく知られています。

今年2023年は劇場公開からもう30年になるんですね。達人的には劇場で3回、その後TVやDVD、ブルーレイも購入して20回以上は観た作品です。

プラモデルメーカーのファインモールドは以前からスタジオジブリ作品を模型化しており、『紅の豚』ポルコ・ロッソの愛機「サボイアS.21」や劇中でのライバルとなるカーチスの「カーチス3C-0水上戦闘機」などもキット化しています。

そんな同社のスタジオジブリシリーズに新たに加わったのが、劇中シーンをモチーフに、フィギュア制作のパイオニアにして最大手の造形集団でもある海洋堂とのコラボレーションによりプラモデル化された、“スタジオジブリ ヴィネットコレクション”です。

その第1弾が、この「紅の豚 ポルコ・ロッソ『アジトのポルコ』」。劇中冒頭のシーン、空賊マンマ・ユート団の登場を知らせる電話をアドリア海の無人島にあるアジトで連絡を受けるポルコ・ロッソを、香川雅彦氏のハンドメイド彫刻による原型をデジタライズにより金型加工、劇中のイメージそのままに立体化。作りやすさも重視した、ビギナーでも楽しめるキットとなっています。

 

■「ヴィネット」とは

ヴィネットという言葉、あまり耳慣れないかもしれませんが、ジオラマ…「情景模型」のひとつです。ひとつのシーンを切り取って、テーマとなる素材にそれを引きたてる要素を最小限にまとめて、作品の世界観を魅せる凝縮した情景モデルになります。以前このプラモ術で製作したブガッティ エアレーサーもヴィネットとして制作していました。

▲紅の豚 ポルコ・ロッソ『アジトのポルコ』の完成サンプル。劇中冒頭のシーン無人島のアジトで連絡を受けるポルコを、キットでは見事なヴィネットにまとめ上げている

 

■いざ製作!

見た目も斬新なブックスタイルの箱がいい感じなんですよ。箱を開けると、4枚のランナーに配されたパーツが目に飛び込んでくるんですが、思いのほかパーツが少ない印象です(パーツ数33個+デカール)。

ちなみに今回のキットはノンスケールモデルなのですが、組み上げるとビーチチェアから足を投げ出したポルコのサイズが10センチ程と、ちょうどいいお手ごろサイズのヴィネット(情景モデル)になります。

パーツは4色で成形されており、また塗装だと難しいポルコの顔やサングラス、ビーチチェアのストライプなどはデカールで再現されているので、塗装をせずともそれなりに雰囲気のある仕上がりを得られます。なのでモデラーじゃないから塗装は苦手、はたまたジブリ好き、紅の豚好きといったユーザーにもオススメできるキットになっています。

▲パーツ数はポルコを含めて33点。パーツ分割も塗装しやすさを考慮しており、極力マスキングをしなくて済むようによく考えられている。またデカールを活用することで塗装をせずに組みあげても劇中のイメージは損なわれない

▲ポルコの顔も別パーツ化されているので塗装も楽

▲ゴーグル、サングラス、さらに鼻やヒゲは付属のデカールで再現できる

▲ポルコ本体も塗装しやすく分割され、色プラで別パーツ化された顔や飛行帽にブーツ、そして胴体部も、パーティングライン(接着面)が目立たない分割となっている

▲塗装をせず仮組みした状態(デカールは貼っていない)でも、それなりに雰囲気のあるヴィネットを楽しめる

▲パーツを見ると、テーブルやビーチチェア、そしてポルコ自体にもパースがつけられており、劇中のシーンを模型的に破綻なく再現している

▲ポルコのフィギュアも単体で見ると上半身から頭にかけて絞り込まれ、投げ出した足のブーツが大きいといったディフォルメがなされているのが分かる

 

■サクサク組んで塗装を楽しむ

もちろんキットは、塗装して劇中のシーンをよりリアルに楽しむことができます。インスト(説明書)に、Mr.カラーやタミヤカラー等の詳細な塗装指示が記載されているのもありがたい限り。しかし今回は筆塗りがテーマでもあるので、あえて模型用塗料ではなく、近年模型の塗装でも注目を集めているアクリルガッシュを使用してアジトのポルコを塗っていきます。

▲今回、アクリルガッシュの定着性を良くするためにベース部分にのみオキサイトレッドサーフェイサーで下塗りをしている。しかしターナー製のアクリルガッシュはプラにもしっかりと定着するため、他のパーツ類は下塗りなしで直に塗装している

▲アクリルガッシュを使い筆塗りで仕上げたヴィネットのベース

▲乾燥していれば、上から色を重ねても下地が溶けてこないので、青で塗装した波部分などは、ドライブラシで色を重ねている

▲ビーチチェアの木製部分は、塗装面でアクリルガッシュをブレンディング(複数の色をパーツ上で混ぜ合わせる)することで、使い込んだ気の質感を再現している

▲ビーチチェアのストライプはデカールで再現

▲雑誌の表紙もデカールで再現できる

▲テーブル上のラジオとワインボトルはこんな感じで塗装

 

■アクリルガッシュとは?

簡単にいえば、水性の絵の具です。模型用のアクリル塗料とは違います。しかし近年模型塗装シーンでアクリルガッシュが注目されるようになってきました。

特徴としては

・いろいろな素材に塗れる(当然プラスチックにも)
・速乾性で発色が良く隠ぺい力が高い
・筆塗りでムラが出にくい
・乾燥すると耐水性になる
・水性なので溶剤臭がない

といった点が挙げられます。

そして模型塗装に使う場合での注意点としては、

・塗装面がツルツルの平滑面だと剥離しやすいためサーフェイサー等の下地塗装が必要
・乾燥後完全つや消しとなるためトップコート等でのツヤの調整が必要
・模型用塗料のような軍用色は出ていないので自身で調色しなくてはいけない

これらが挙げられます。使用しているのはターナーのアクリルガッシュで、画材店で入手できます。最近では一部量販店のホビーコーナーでも取り扱っています。

▲使用しているのはターナー製アクリガッシュ。水性で匂いもなく、なにより発色が良く隠ぺい力が高い

▲ターナー色彩「アクリルガッシュ 24色セット」(6820円)

▲模型用塗料としてアクリルガッシュを使用する上での注意点は、乾燥すると完全にマットな仕上がりになることだ(画像右側が筆塗りで乾燥させた状態、左側がトップコートのセミグロスクリアーをオーバーコート塗装した状態)。ツヤのコントロールは専用のメディウムが同社から発売されているが、模型用のトップコートでも問題なく使用できる。オーバーコート塗装した場合、色によっては色味が濃くなるのも要注意だ

 

■ポルコの愛機サボイアS.21も作ります!

さて次回の達人のプラモ術は〜、お題は“アジトのポルコ”のヴィネットなんですが、せっかく『紅の豚』を作るのだから劇中に登場するポルコの愛機も作らなアカン(何故か関西弁)!

ということでサボイアS.21も同時に製作を進めていきます。キットは同じくファインモールドから発売されています。入手したのは「1/48 サボイアS.21F後期型」(3080円)。激中でエンジン不調のところをカーチスに急襲されて大破してしまったサボイアS.21をピッコロ社で修理。その際にエンジンを換装、フィアットAS2フォルゴーレを搭載したタイプです。

お楽しみに!

▲1/48サボイアS.21F後期型のキットにはジーナとフィオのフィギュアも付属する

 

■メーカー紹介

ファインモールドは戦闘機をはじめ戦車や艦船モデルを得意とするプラモデルメーカーですが、『紅の豚』の飛空挺をはじめ『ラピュタ』『風立ちぬ』などスタジオジブリ作品に登場する飛行艇やロボット兵などのプラモデルを発売しています。初のヴィネットプラモとなる『アジトのポルコ』は、海洋堂とのコラボレーションで、誰もが楽しめるキットとなっています

>> ファインモールド

原型制作: 香川雅彦 デジタル調整: 海洋堂造形部(C) Studio Ghibli企画/スタジオジブリ・ファインモールド発売/ファインモールド

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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