東京競馬場を舞台にした5週連続GI開催もついに最終週。フィナーレを飾るのは「春のマイル王決定戦」となるGI安田記念(6月4日/東京・芝1600m)だ。

 過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は3勝、2着3回、3着2回と安定した成績を残している。だが、伏兵の台頭も頻繁に見られ、波乱の多い一戦と言える。実際、3連単はすべて万馬券。6万円超えの高配当が8回もある。

 しかも今年は、マイル路線で力を発揮してきた実力馬がズラリと顔をそろえたうえ、スプリント路線、中距離路線のGI馬も参戦。例年以上にひと筋縄とはいかない一戦となっており、どの馬からいっても好配当が見込めそうだ。そうした状況を受けて、スポーツ報知の坂本達洋記者もこう語る。

「今年はGI馬10頭が集結し、かなりの豪華メンバーがそろいました。なかでも、今春のGI大阪杯(4月2日/阪神・芝2000m)を制したジャックドール(牡5歳)、前走のGIIマイラーズC(4月23日/京都・芝1600m)を快勝して復活をアピールしたシュネルマイスター(牡5歳)、そして実力、注目度ともにトップクラスのソダシ(牝5歳)が人気を集めそうですが、GIヴィクトリアマイル(5月14日/東京・芝1600m)を勝って連覇を狙うソングライン(牝5歳)に、昨秋のGIマイルCS(11月20日/阪神・芝1600m)の覇者セリフォス(牡4歳)らもいて、人気は相当割れるのではないでしょうか。

 他にも、中央、地方交流合わせてダートGI3勝のカフェファラオ(牡6歳)、昨年のGI高松宮記念(中京・芝1200m)を勝ったナランフレグ(牡7歳)など、ダート界やスプリント路線からも実績馬が出走。多彩すぎる顔ぶれで、馬券的な妙味は増しています」

 坂本記者は続けて、激戦必至のレースにおける狙い目についてこんな見解を示す。

「一昨年の覇者であるダノンキングリーは、それまでは主に中距離路線を歩んできた馬でした。それを思えば、能力と仕上がりのよさ次第で、どの馬からでも狙い目は立ちそうな気がします。

 そこで過去のレースを振り返ると、昨年の3着馬サリオスは8番人気ながら3着に食い込みましたが、前走の高松宮記念15着という結果から軽く見られたのでしょう。ですが、その結果も不向きな距離でのこと。もともとは、マイルのGI勝ちがあり、海外GIの香港マイル(香港・芝1600m)でも3着と好走した実績がありました。

 また、2017年の勝ち馬サトノアラジンも7番人気でしたが、前哨戦のGII京王杯スプリングC(東京・芝1400m)で9着だったことが評価を下げた要因でした。しかしそれも、不得手な重馬場だったことが敗因でした。

 そもそも馬券的な妙味がある一戦ですが、こうした例から、実力があるのに軽視されやすいタイプを狙っていきたいところ。今年もそういった人気薄馬が高配当を演出するような気がします」

 そうして、坂本記者は2頭の穴馬をピックアップした。


安田記念での一発が期待されるメイケイエール

「1頭目はメイケイエール(牝5歳)です。左前脚のフレグモーネのため、ヴィクトリアマイルを回避。その後の回復が順調ということで今回の参戦が決まりましたが、高松宮記念の敗戦(12着)に加えて、そうした経緯もあって、ますます人気を落としそうなのがオイシイように感じます。

 元来、重賞6勝の実力派。秘める能力は一級品と言えるでしょう。以前は折り合いの難しさが課題となっていましたが、年齢を重ねるごとに収まりがつくようになり、手の内に入れている池添謙一騎手が手綱をとるのは心強い限りです。

 前走の高松宮記念は不得意な不良馬場に泣かされて、不完全燃焼の一戦でした。良馬場の東京なら力を発揮できるでしょうし、雨予報の週末でいくらか馬場が渋っても、先週からCコース替わりできれいな東京の馬場なら、対応してくれると思いたいです。

 また、気性的に短距離志向が強いのはわかりますが、母系の血統からしてマイルくらいまではこなせるタフさがあると踏んでいます。変わり身を期待したいところです」

 坂本記者が推すもう1頭は、GINHKマイルC(5月7日/東京・芝1600m)で戴冠を遂げたシャンパンカラー(牡3歳)だ。

「グレード制導入後、安田記念における3歳馬の勝利は2011年のリアルインパクトだけ。近年、馬券圏内(3着以内)に好走したのも、一昨年の3着馬シュネルマイスターくらいです。おかげで(3歳馬は)歴戦の古馬相手では分が悪いと見られていますが、古馬牡馬が斤量58kgを背負うのに比べて、こちらは斤量54kg。4kgもの斤量差があるのは、大きな利があると見ます。

 状態面についても、道悪馬場で激走した前走の反動が心配されましたが、問題はなさそう。同馬を管理する田中剛調教師と、1週前追い切りに騎乗した内田博幸騎手が『全然、疲れがないですね』と口をそろえていました。出来に関しては、中3週でも不安はありません。

 そして何より、東京マイルは3戦3勝と相性抜群の舞台。優れた心肺能力を武器に長く脚を使えるのは非常に魅力で、軽視は禁物だと思いますよ」

 気になる馬の名前を挙げれば、誰もが十指に余るのではないか、と思われるほどの大激戦となった今年の安田記念。とすれば、ここでピックアップした2頭がアッと驚くような激走を果たしても、何ら不思議ではない。