高木豊の2023年プロ野球「助っ人診断」

セ・リーグ編

 外国人選手の出来は各チームの浮沈に大きな影響を及ぼす。シーズンはまだ序盤だが、新加入を含めた助っ人たちの働きぶりは識者からどう見えているのか。

 かつて大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)で活躍し、現在は野球解説者やYouTubeでも活動する高木豊氏が、外国人選手(野手/投手)の評価をチームごとに4段階【◎、〇、△、×】で評価した。


5月3日の広島戦で初勝利を挙げたDeNAのバウアー

※順番は昨シーズンの上位から。成績は5月8日時点。高木氏に取材した時点で一軍での出場がない選手、出場試合数が少ない選手は評価を省略。また、育成選手は評価の対象外。

◆ヤクルト【野手◎/投手〇】

「打つほうでは(ホセ・)オスナが頑張っていますね。調子が上がらない打線をひとりで引っ張っていて、今年も安定した成績を残してくれる期待感があります。(ドミンゴ・)サンタナはオープン戦にあまり出られず、開幕後も最初はよくなかったですが、ちょっと調子を上げてきました。村上宗隆もやっと打ち始めましたが、両外国人が健在じゃないとヤクルトは困りますからね。

 投げるほうでは、サイスニードはここ数試合は失点していますけど、よくやっていると思います。打線がなかなか打てない状況で3勝しているのは大きいですよ。日本での経験も豊富ですし、これから調子を上げていくと思います。

 新加入の(ディロン・)ピーターズは、オープン戦を見た段階からすごく期待していたんです。制球力やボールのキレがよく、変化球もブレーキが効いています。まだ勝ち星はついていませんが、今後に勝っていけるピッチャーだと思います」

<評価対象となった助っ人の成績>

(野)オスナ 30試合 打率.308 6本塁打 15打点 出塁率.375 OPS.908

(野)サンタナ 29試合 打率.276 4本塁打 10打点 出塁率.330 OPS.789

(投)サイスニード 5試合 3勝1敗 防御率3.08 QS率40.0

(New/投)ピーターズ 3試合 0勝0敗 防御率2.20 QS率33.3

◆DeNA【野手△/投手◎】

「(ネフタリ・)ソトは(5月5日の)ヤクルト戦でやっと1本目のホームランを打ちましたけど、ホームランが彼の魅力なので物足りない。WBC組(プエルトリコ代表)ですから、調整がうまくいかなかったのかもしれませんが、最近はスタメンを外されることもあるので評価は△ですね。

 投手の(ロバート・)ガゼルマンはよく投げています。制球力があり、どんどんストライクゾーンで勝負していくタイプで、ボールをよく動かすので打ち損じを狙える。自滅するタイプではないので安心感があります。(エドウィン・)エスコバーは結果が出ていませんが、チームに少ない左腕なのも含めて大きい存在です。彼がいるだけで、相手チームが代打で左バッターを出しにくくなる。本来の投球ができるようになるとリリーフ陣はより強固になりますね。

 新加入の(J.B.)ウェンデルケンは、まだ調子が出ていない感じですが、DeNAはリリーフ陣が豊富なので困っていないでしょう。厚みがあるに越したことはないですから、調子を上げていってほしいです。同じく新加入の(トレバー・)バウアーは(5月3日の)初登板を見ましたが、さすがでした。勝負所での集中力がすごいですし、バッターに向かっていく闘争心も感じる。ランナーの動きなど周囲の状況もよく見えていますし、今後のピッチングも期待できます」

<評価対象となった助っ人の成績>

(野)ソト 20試合 打率.196 1本塁打 9打点 出塁率.297 OPS.618

(投)ガゼルマン 5試合 3勝0敗 防御率2.73 QS率60.0

(投)エスコバー 9試合 0勝0敗4ホールド0セーブ 防御率15.63

(New/投)バウアー 1試合 1勝0敗 防御率1.29 QS率100.0

(New/投)ウェンデルケン 9試合 0勝0敗4ホールド0セーブ 防御率2.00

◆阪神【野手〇/投手△】

「(シェルドン・)ノイジーは広角に打てるバッターとして阪神に加わりましたが、1、2番の近本光司と中野拓夢があれだけ出塁しているのに打点が寂しいですね。ただ、日本の野球は世界一を獲るぐらいレベルが高い、と考えると、そこそこやれているほうだと思います。

 投げるほうは△です。まず(カイル・)ケラーは、いい時もあれば悪い時もあり、投げてみなければわからない。まだ完全に打ち込まれた場面はないですし、使えばある程度の成績は残すと思いますが、なかなかその場を与えられません。(ジェレミー・)ビーズリーは悪くはないですが、特別にいいわけでもない。当初は三振をとれるピッチャーという触れ込みでしたが違いましたし、クイックが苦手なようなので接戦で使うのは厳しそうですね」

<評価対象となった助っ人の成績>

(New/野)ノイジー 28試合 打率.252 2本塁打 9打点 出塁率.300 OPS.624

(投)ケラー 7試合 1勝0敗2ホールド0セーブ 防御率2.57

(New/投)ビーズリー 8試合 0勝0敗0ホールド0セーブ 防御率0.00

◆巨人【野手〇/投手〇】

「(ルイス・)ブリンソンは長打も期待できますし、僕の評価は◎なのですが、チーム内での評価はそんなに高くないのかなと。コンスタントに打っていた時でも先発を外されていましたから。暴走があった時も外していましたけど、彼は使い続ければ打てると思いますよ。

 一方の(アダム・)ウォーカーも、使い続ければ20本塁打くらいは打つでしょうが、守備の不安を考えると使えません。ブリンソンがいて秋広優人の調子がよく、不調の丸佳浩を復活させないといけないと考えると使いどころが難しいです。

 新加入の投手、(フォスター・)グリフィンはいいですね。球のキレがよく、抜くボールもいい。巨人が低迷しているので目立っていませんが、僕はいいピッチャーだと思います。

 同じく新加入の(タイラー・)ビーディは、開幕戦も含めた最初の3試合ぐらいまでは試合を作っていてよかったんですが、そこで打線の援護がなくて勝てず、おかしくなってしまいました。勝ち星はついていませんが、僕の評価は〇です。開幕投手は、その後も各チームのエースと当たっていくことになるので、なかなか打線も点が取れないですから......そこは気の毒ですね」

<評価対象となった助っ人の成績>

(New/野)ブリンソン 26試合 打率.256 4本塁打 16打点 出塁率.273 OPS.738

(野)ウォーカー 15試合 打率.286 1本塁打 6打点 出塁率.333 OPS.798

(New/投)グリフィン 6試合 3勝1敗 防御率2.91 QS率50.0

(New/投)ビーディ 5試合 0勝4敗 防御率5.47 QS率20.0

◆広島【野手〇/投手◎】

「(ライアン・)マクブルームは昨シーズンよりも慣れてきています。今は打率が低いですが、もっと打率を上げていきそうな気がします。新加入の(マット・)デビッドソンは打ち方がいい。長くタイミングが取れるんです。もう少し気温が上がっていく時期には、打率は上がらなくてもホームランがさらに出るようになるんじゃないかと。最終的な打率は.250前後でも、30本くらい打てる可能性を秘めていると思います。

 投げるほうでは(ニック・)ターリーも日本の野球に慣れてきました。スピードボールがいいですし、角度があるのも嫌ですね。手薄な中継ぎ陣を支える存在だと思います。(ロベルト・)コルニエルは個人的に◎です。勝ち星がついていないのがおかしいくらい。昨シーズンまでは中継ぎで、真っ直ぐとカーブ、ツーシームぐらいでしたが、今シーズンから先発に回ってカーブやスライダーを織り交ぜ、ものすごく投球の幅ができた。このピッチャーは勝てると思いますよ」

<評価対象となった助っ人の成績>

(野)マクブルーム 28試合 打率.222 2本塁打 13打点 出塁率.273 OPS.626

(New/野)デビッドソン 28試合 打率.185 6本塁打 11打点 出塁率.230 OPS.643

(投)ターリー 14試合 2勝0敗8ホールド1セーブ 防御率1.46

(投)コルニエル 2試合 0勝1敗 防御率1.32 QS率100.0

◆中日【野手×/投手◎】

「(ダヤン・)ビシエドはしばらくぶりに一軍に上がってきましたが、得点圏打率が.000 で打点が0なので×です。それが首脳陣に評価されていた部分ですからね。ただ、今の打線を考えると必要不可欠な存在なので、巻き返しに期待しています。

 新加入の(オルランド・)カリステは、我慢して使えばそこそこ対応できる選手だと思うのですが、チームがそういう状況ではない。同じ新加入の(アリスティデス・)アキーノは、侍ジャパンとのWBCの壮行試合で2戦連続ホームランを打ったので注目していましたが、まずバットに当たりませんし、守備もよくないです。

(ソイロ・)アルモンテはビシエドがよくないから再び獲ったんだと思いますが、あまりモチベーションが高いように見えません。期待値が高かっただけに、現状の成績も厳しいですね。一方、クローザーの(ライデル・)マルティネスは今シーズンもいいですね。実力と実績も十分ですし、信頼感と安定感を兼ね備えています。ただ、チームがリードした展開をなかなか作れないので、"宝の持ち腐れ"になっていますが......」

<評価対象となった助っ人の成績>

(野)ビシエド 14試合 打率.255 0本塁打 0打点 出塁率.283 OPS.577

(New/野)カリステ 14試合 打率.139 0本塁打 1打点 出塁率.184 OPS.351

(New/野)アキーノ 20試合 打率.154 1本塁打 6打点 出塁率.176 OPS.438

(野)アルモンテ 18試合 打率.167 1本塁打 2打点 出塁率.167 OPS.444

(投)マルティネス 12試合 0勝1敗1ホールド10セーブ 防御率0.00

(パ・リーグ編:パ・リーグ助っ人22名の評価は? 「文句なし」「期待外れ」など4段階評価で明暗も>>)

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に解説したYouTubeチャンネルも人気を博している。