Jリーグ4月のベストイレブンを独自選考 「屈指のクオリティ」「他を圧倒する存在感」「手がつけられない破壊力」を見せた選手たちは誰か
スポルティーバJ1月間ベストイレブン
識者による独自選考のJリーグ月間ベストイレブンを発表。4月の11人は、スポーツライターの篠幸彦氏に選んでもらった。複数あった好調チームのなかで、すばらしい活躍を見せた選手は誰だったか。
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4月のJ1ベストイレブン。好調な各チームを支えた選手が出そろった
FW/ドウグラス・ヴィエイラ(広島)、大迫勇也(神戸)、アンデルソン・ロペス(横浜FM)
MF/伊藤涼太郎(新潟)、奥埜博亮(C大阪)、米本拓司(名古屋)、武藤嘉紀(神戸)
DF/藤井陽也(名古屋)、荒木隼人(広島)、アレクサンダー・ショルツ(浦和)
GK/ランゲラック(名古屋)
第10節を終え、守備の堅いクラブが上位を席巻する傾向が強い序盤戦。守備の要となる選手はもちろん、カウンターからのチャンスをものにしてきたエースたちの活躍も印象に残る4月となった。そんななかで月間ベストイレブンに以下の11人を選出した。
GKは西川周作(浦和レッズ)、大迫敬介(サンフレッチェ広島)、前川黛也(ヴィッセル神戸)など候補が多いなかで、アウェーの第8節川崎フロンターレ戦で終盤の猛攻をしのぎ、引き分けもよぎる展開でビッグセーブによって勝ち点3にしたランゲラック(名古屋グランパス)を評価したい。
DFは荒木隼人(広島)、藤井陽也(名古屋)、アレクサンダー・ショルツ(浦和)の3人。
広島は、3月から続いた5連勝のうち3勝を含む、4勝1敗と大きく勝ち越して、4月を駆け抜けた。その好調を支えた要因のひとつが、J1のなかで屈指のクオリティを誇る3バックだ。荒木を中心に、右に塩谷司、左に佐々木翔で構える最終ラインは高さ、強さ、速さ、いずれにおいても隙がない。そのなかで高いカバーリング能力でバランスを取る荒木を選んだ。
同じく堅守によって好調を維持する名古屋も、広島同様に強力な3バックが支えている。藤井は今季から左センターバック(CB)に移ったことでより強く前へ出ていき、ライン間でパスを受ける相手を潰し、攻撃においても推進力を生む存在感を示した。
名古屋と並んで無敗で4月を乗りきった浦和も守備が安定。その中心を担うアレクサンダー・ショルツは、対人守備やカバーリング、ビルドアップのクオリティは相変わらず高い。マリウス・ホイブラーテンとのCBコンビは安定感がある。それに加え、第8節の北海道コンサドーレ札幌戦では流れのなかから先制点を奪取するなど、得点でも大きく貢献した。
【プレーの鋭さや存在感を感じさせたMF陣】MFは武藤嘉紀(神戸)、米本拓司(名古屋)、奥埜博亮(セレッソ大阪)、伊藤涼太郎(アルビレックス新潟)を選出。
首位の神戸において、武藤のコンディションのよさは際立っていた。強みであるフィジカルとスピードを生かして右サイドを支配し、相手のラインを幾度も押し込んだ。第6節京都サンガF.C.戦での、ドリブル突破から大迫勇也へのアシストは圧巻で、第8節鹿島アントラーズ戦での2ゴールも調子のよさを感じさせた。
名古屋の米本は守備の強度とカバーエリアの広さ、切れない集中力によるプレーの連続性、鋭いインターセプトは他を圧倒する存在感があった。第8節、アウェーの川崎戦で先制点の起点となったインターセプトは、米本の好調さを象徴するシーンだった。稲垣祥と並び、毎試合約12kmを超す運動量で名古屋の堅守を牽引する存在だ。
C大阪の奥埜は、今季から新たに取り組む4−3−3システムのインサイドハーフに入っている。持ち味の豊富な運動量は相変わらずで、攻守の局面のどこへでも顔を出す献身性はチームの屋台骨である。そのなかでより高い位置にポジションを取ることで、第6節横浜FM戦のアシストや第8節FC東京戦での2ゴールなど、フィニッシュの局面で質の高いプレーで貢献した。
新潟の伊藤は、なんと言っても第8節アビスパ福岡戦で逆転を呼び込んだハットトリックだろう。1点目の直接FKが見事なのはもちろんだが、後半アディショナルタイムで決めた流れからの2点目、こぼれ球を押し込んだ3点目は、チームを勝たせる執念とクオリティを見せつけた。
【ゴールでチームを牽引したFWたち】FWは大迫勇也(ヴィッセル神戸)、アンデルソン・ロペス(横浜F・マリノス)、ドウグラス・ヴィエイラ(サンフレッチェ広島)を選出。
大迫は首位・神戸を象徴する存在で、4月は5試合4得点とエースとして結果でチームを牽引した。その上で違いを見せたのは卓越したキープ力である。大迫の相手を背負いながらでも起点を作るプレーは、神戸の攻撃を迷いなく縦へ突き動かす前提条件だ。献身的なプレッシングでも守備のスイッチを入れ、かつての輝きを取り戻したようなハイパフォーマンスを披露した。
4月に5試合5得点とゴールを量産したアンデルソン・ロペスは、現在シーズン7得点。6得点の大迫、伊藤、町田修斗(湘南ベルマーレ)らを凌いでランキング単独首位につけた。とりわけ圧巻だったのは、首位神戸との対戦となった第9節。終盤の逆転を呼び込んだアンデルソン・ロペスの2ゴールは、王者のプライドと勝負強さを示すものだった。得点のみならず、ライン間で起点となるポストプレーは、ビルドアップで攻撃を前進させる出口となった。
広島は終盤のドウグラス・ヴィエイラとエゼキエウ投入で得点を奪いにいく形が、必勝パターンとなりつつある。
後半の途中までナッシム・ベン・カリファ、満田誠、森島司の前線3人による絶え間ないプレスと鋭いカウンターで、相手を疲弊させるお膳立ては必須。そこから投入されたドウグラス・ヴィエイラが第6節鹿島戦で逆転の2ゴール、第7節サガン鳥栖戦の決勝点、第8節横浜FC戦のダメ押しと3試合連続ゴールで5連勝を手繰り寄せた。
そして第10節C大阪戦でも、後半アディショナルタイムにエゼキエウのクロスから劇的な決勝点を叩き込むなど、ジョーカーとして手がつけられない破壊力で勝ち点3をもたらした。