ぱんちゃん璃奈に大善戦した「台湾の妖精」ワン・チンロンは何者? 双子姉妹で格闘家、スーパーマンパンチ以外の技も「次の試合で披露します」
「ワンちゃん」と呼ばれ、日本でも人気急上昇中のワン・チンロン(台湾)
キックボクシング界屈指のアイドル性を誇るぱんちゃん璃奈の「逮捕後初の公式戦」が4月22日、後楽園ホール(東京・水道橋)で行なわれた。
その相手は、ワン・チンロン(台湾)。こちらも高いタレント性を持つだけではなく、戦前の予想を超える大善戦を見せた。
インターネット上では「台湾の妖精」と話題を集めたこの女子ファイターは、実は双子姉妹そろって格闘家でもあるなど、日本のファンにはまだまだ未知な存在だ。
4月22日、後楽園ホールで行なわれたワン・チンロン(左)とぱんちゃん璃奈の一戦 photo by (C)Def Fellow
しかし、ワンは「大学在学中に学んだ」というダンスを披露しながら敵地のリングに堂々と入場。中継のアクシデントで試合開始がやや遅れたことに動揺することなく、いざゴングが鳴ると、ぱんちゃんに空中から飛びかかるいわゆる「スーパーマンパンチ」を浴びせた。
奇襲に成功したワンだが、ぱんちゃんも、いわば"禊(みそぎ)"を兼ねたこの一戦に意地を見せる。ワンの弱点を細い脚に見出してローキックで集中的に攻め、中盤以降の一方的な展開も予感させるようにワンをふらつかせた。
だがワンは長身と「10年間のボクシング経験で培った」というストレート系パンチで応戦し、ぱんちゃんに鼻血のダメージを与える。
一進一退のタフな打撃戦が続くなかで試合は終了。判定はジャッジ1者がドロー(引き分け)をつけたが、0-2でぱんちゃんの勝利となった。
●双子でファイター「試合は姉妹で臨む」
敗れたワンの表情が明るかった。
「ぱんちゃんのことは試合前から強敵だと思っていたし、実際に対峙して素敵なファイターだと思いました。とにかく必死になって戦ったけど、4年前にここ(後楽園ホール)で試合をした時に比べて、私は、元来のパンチ技術にキックの技術を融合させることで大きく成長できた。負けたのはもちろん悔しいけど、強くなったことを確認できたので、達成感にも満ちています」
4月21日、試合前の計量を終えたワン・チンロン
台湾人の父親とフィリピン出身の母親を持つワンは、今年2月に大学を卒業した22歳。試合中継で解説を務めた谷川貞治氏が、そのタレント性を「人気が出ると思う。掘り出しものですよ」と高く評したが、ワンを語るうえでは、同じく格闘技に挑んできた瓜ふたつの双子姉妹、ワン・チンシンの存在も不可欠だろう。
双子の妹のワン・チンシン(右)も格闘家
双子格闘家として台湾で注目を集めるワン姉妹 photo courtesy by Wang Chin Long
双子姉妹での選手活動は以前から台湾で注目を集めており、妹のチンシンは、国家代表としての国際大会やプロボクシング戦にも出場した実績を持つ。
「当初は同じボクシング大会に出場するのが当たり前だったけど、キャリアを積むなかで、少しずつ姉妹で異なる活動も出てきた。そのなかで私はキックも取り入れるようになった。今は同じ試合会場にいない場合もあるけれど、それでも生中継を観たり、お互いの試合にふたりで臨むのが姉妹の決めごとです」
奇襲のスーパーマンパンチは、日頃から徹底練習してきた攻撃で「今回は無意識に放っていた」と振り返るワン。試合前から「『KNOCK OUT』(今回のイベント)の看板選手になりたい」と語っていて、KNOCK OUT運営側はワンの再招聘を検討している。
今回のぱんちゃん戦では、スレンダーな体型とのギャップも感じさせる強固な精神力を示した。ワンは「次の試合では、さらに別の能力も披露します。そのためにも、すぐにトレーニングを再開したい」と誓った。自身、ファイターとして細すぎるという課題を感じているとのことだ。
一方のぱんちゃんは、今年3月に臨んだエキシビション戦の直後に不起訴が確定していた。今回の試合後、ワンと健闘をたたえ合ったほか、SNSでは画像なしで「皆様ありがとうございました。もっと強くなれるように努力致します」と投稿した。
タレント性あふれる両ファイターに今後も注目だ。
4月21日、東京都内にて。「日本の神聖な建築物や国民性が好き」と語る
【プロフィール】
王 靖蓉 ワン・チンロン
格闘家。「TKBA」所属。身長167cm。2000年、台湾・台中市生まれ。中学時代に双子の妹チンシンとボクシングを始める。趣味はダンス、登山、TikTok撮影。好きな食べ物はケーキ、ミルクティー、バーベキュー、しゃぶしゃぶ。