改修工事のため、2020年秋から開催休止となっていた京都競馬場が今週、いよいよ新装オープンとなる。開幕週に行なわれる重賞は、GI安田記念(6月4日/東京・芝1600m)の前哨戦でもあるGIIマイラーズC(4月23日/京都・芝1600m)だ。

 改装前の最後の2年間(2020年、2019年)はいずれも1番人気が勝利。それ以前も1番人気が安定した成績を残しており、比較的堅いイメージのあるレースだが、時に人気薄の大駆けも見られ、3連単ではしばしば好配当が生まれている。

 しかも、今回のリニューアルによって、京都の馬場は路盤から大きく手が加えられている。そうなると、過去のデータが当てはまらず、レース予想もひと筋縄ではいかない。新たなコースに適した伏兵の台頭などがあれば、思わぬ波乱が起こってもおかしくない。

 そうした状況にあって、デイリースポーツの大西修平記者はまず、"新装・京都"の注意点について語る。

「約2年半の改修工事を終えて、グランドオープンする京都競馬場。芝は、見た目にも美しく生えそろっている最高の状態です。前に行った馬は、そう簡単には止まりそうにありません。

 また、外回りは4コーナーのカーブが緩やかになりました。以前は内の馬が(外に)膨れるシーンが目につきましたが、随分と走りやすくなった印象です。芝の状態は、内、外による差はまったくありませんから、距離ロスなく走れる内枠の馬が有利と言えるかもしれません」

 どの競馬場でも開幕週は絶好の馬場で行なわれ、先行有利とされるが、今回の京都ではそれがより顕著な形で示されそうだ。ただ、前に行ける馬であっても、好走できるのは「タイプによって異なるのではないか」と大西記者は言う。

「馬場を路盤から造り直したことで、以前と比較してもクッション性は確実に増しています。2012年3月にグランドオープンした中京競馬場が当初そうであったように、レースで踏み固められるまでは適度に時計がかかる馬場状態となりそうです。つまり、狙い目となるのは、速い持ち時計を持つスピードタイプより、パワー兼備型の先行馬と言えるのではないでしょうか」

 そこで、大西記者は2頭の穴馬候補をピックアップした。1頭目は、7歳にして今回が重賞初挑戦となるシャイニーロック(牡7歳)だ。

「前走のオープン特別・大阪城S(3月5日/阪神・芝1800m)では8着に敗れましたが、それはペースが厳しかったことに加え、少し距離が長かったことが災いしました。そこから1ハロンの距離短縮は間違いなくプラスですし、自慢の先行力は最後の直線が平坦になる京都コースに替わることで、さらに生きると思います」


マイラーズCでの一発が期待されるシャイニーロック

 昨年、6歳夏にオープン入りしたシャイニーロック。年末にはリゲルS(12月10日/阪神・芝1600m)で初のオープン勝ちを決めた遅咲きだ。

「7歳になりましたが、中間も栗東坂路を中心に丹念に乗り込んで、状態面に不安はありません。マイル戦の持ち時計は1分33秒台で極端な時計勝負になると不安が残りますが、クッションの利いた新装・京都の、少し時計を要しそうな馬場はピッタリ合いそう。

 強力な同型が不在で、マイペースの逃げも可能。有力どころの差し馬がお互いを意識し合って、仕掛けのタイミングが遅れるようなことがあれば、押しきる可能性は大いにあると見ています」

 大西記者が推すもう1頭は、昨年のGIIスプリングS(中山・芝1800m)を5番人気で勝利したビーアストニッシド(牡4歳)。デビュー以来、ここまで11戦して一度も1番人気になったことがない、典型的な穴馬タイプだ。

「昨年の牡馬クラシックにフル参戦した実力馬。結果としてGIでは距離が長く、本来の走りはできませんでしたが、スプリングSを制しているように底力は今回のメンバーのなかに入っても十分に通用するはずです。

 初勝利はマイル戦ですし、適距離は1600m〜1800mでしょうから、前走のGIIIチャレンジC(8着。12月3日/阪神・芝2000m)から2ハロンの距離短縮も歓迎のクチ。逃げても、番手からでも競馬ができるタイプで、他馬の出方を見ながらレースができるのも強みになりそうです。

 およそ4カ月半の休み明けとなりますが、中間は田中健騎手(レースの鞍上は岩田康誠騎手)が調整役として騎乗。栗東坂路で入念に乗り込んでおり、態勢は整っています。

 気難しいタイプではありますが、新装・京都は地下馬道などの動線が短く、馬に優しい施設となっていて、メンタル面にもいい影響が出そうです。一変するなら、好走条件がそろっている今回でしょう」

 波乱ムード漂う古馬のマイル重賞。ここに挙げた2頭が新装なった緑鮮やかなターフで、アッと驚くような激走を果たしても不思議ではない。