左脇腹を痛め負傷者リスト入りしていたシカゴ・カブスの鈴木誠也がようやく復帰。現地4月14日のドジャース戦に「4番・ライト」で出場すると、8回にいきなりホームラン。4月17日のアスレチックス戦でも3安打、1打点の活躍を見せた。

 そんな鈴木の復帰をカブスファン、そしてシカゴの街も待ち望んでいた。鈴木がいない間も、本拠地のリグレーフィールドには「SUZUKI 27」のユニフォームに身を包んだファンが連日多く詰めかけていた。球場近くにあるタイ料理店『コージーズ』のオーナー、コージーさんもそのひとりだ。


所狭しとカブスグッズが並べられているコージーズの店内

【15種類のカブス・スペシャル】

 じつはこのレストラン、地元のカブスファンにとってはよく知られた場所である。というのも、店のなかにはカブスの選手のボブルヘッド(首ふり人形)やサインボール、雑貨などがところ狭しと並べられ、まさにカブス一色。なかでも、選手の名前が入ったオリジナルメニューはこの店の名物だ。

 近年、日本のプロ野球では選手の名前がついたフードや、選手プロデュースのいわゆる「スタジアムグルメ」が定着しているが、アメリカの球場ではまだ浸透していない。

 そのかわり、球場近くの飲食店のオーナーが"非公式"で選手の名前を施したカクテルや料理を販売し、街ぐるみでホームチームを応援している。

 熱狂的なファンで知られるカブスの場合、2016年に108年ぶりのワールドシリーズ制覇を果たした時のチームリーダー、アンソニー・リゾ(現在はヤンキースに所属)にあやかって店の名前を『リゾ』にしてしまうバーもあったほどだ。

 コージーズのメニューを見てみると、15種類の"カブス・スペシャル"が存在している。チキンパッタイは、2016年のワールドシリーズ第7戦でインディアンス(現・ガーディアンズ)を破り世界一になったことにあやかって「World Series Game7」と名づけられているし、レッドカレーラーメンの「Addison Red Line」はリグレーフィールドの最寄り駅であるアディソンに由来している。


モチモチの太麺にスパイシーな味つけが食欲を刺激する「Spicy Suzuki」

【Spicy Suzukiの味は?】

 そんななかでも、やはり目を引くのは選手名シリーズだ。技巧派右腕のカイル・ヘンドリックスの決め球にちなんだ「Hendricks' Changeup」はピリ辛の牛肉炒めで根強い人気を誇る。チキンを甘辛く揚げた「Nico's Chicken」は、遊撃手のニコ・ホーナーの「甘いマスクに由来している」とコージーさんは言う。

 ほかにも、過去カブスに在籍した選手のメニューも存在しており、2020年シーズンまでシカゴでプレーしたダルビッシュ有(現・パドレス)の愛称を冠した「I Love Youuuuu」も人気メニューのひとつ。パットシーユーというタイ料理と発音が似ていることから拝借したという。

 そしてオーナー曰く、この店の一番人気メニューが鈴木誠也の名前を用いた「Spicy Suzuki」だ。青唐辛子をきかせたソースとモチモチ食感の太麺がほどよく絡み合う一品で、その名のとおりピリッとしたスパイシーさがクセになる。

 このメニューが登場したのは、鈴木がカブスに移籍し開幕を迎えた昨年4月のこと。大型ルーキーのデビューとあって、コージーさんはこの機会を逃すまいと、何度も試作を重ね「Spicy Suzuki」を開発したという。

「彼の"パンチ"溢れる打撃から、ガツンと来るこのメニュー名を思いついたんだ。我ながらいい名前だと思うよ」

 昨年、開幕2戦目にホームランを放ち、プレイヤー・オブ・ザ・ウィークに輝くなど期待どおりの活躍を見せると、メニューへの注文も殺到。予想を上回る売り上げを記録したという。メニューの人気は今年も健在で、毎日オーダーが絶えない状況だ。そしてコージーさんはこう笑顔で語る。

「いつか本人が食べてくれたら最高だよ」

 はたして、その日は訪れるのだろうか。いずれにしても、鈴木誠也の2年目シーズンが無事に進むことを祈るばかりだ。