複雑ダイヤ「新横浜線」ちょっと便利な乗り継ぎ術
新横浜線開業1番列車の浦和美園行き車両と安全確認を行う乗務員(編集部撮影)
3月18日、相鉄沿線住民待望の「相鉄・東急新横浜線」が開業した。筆者も開業初日の相鉄からの直通1番列車に西谷から乗ってみたが、先頭のドアでは乗り鉄の皆さんが押し込み合いながら乗り込む状況で、相鉄ならぬ「争鉄」と化した。だが新横浜に着く前に乗り鉄の1人の方が「新横浜で降りる人もいるから一旦降りるなどみんなで協力しよう!わかったー?」と声を上げると、皆「はーい」と返事をし、小学校の団体遠足のような様相で譲り合いの場面も見られた。
そんな新横浜線開業による関係路線のダイヤはどう変わったのか。直通先の東急線内の変化と併せてまとめてみた。
JR直通と東急直通で同じ行先が
相鉄・東急新横浜線は、基本的に相鉄本線からの列車は東急目黒線方面に、いずみ野線からは東急東横線方面に直通する。相鉄線内の種別とは関係なく、直通列車は目黒線内では各停か急行、東横線内では急行となる。目黒線方面の直通列車は東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道・都営地下鉄三田線まで乗り入れ、東横線方面は東京メトロ副都心線・東武東上線まで乗り入れる。
今回の直通開始でややこしいのは、JR直通と東急直通で同じ行先の列車ができたことだ。池袋行きは埼京線直通と東急直通の2ルートになった。埼京線直通がJR車両なら見分けがつくが、相鉄車両だとどちらも紺色の車両なので見分けるのは至難の業だ。また、JR直通の「川越」行きと、東急直通の東武東上線「川越市」行きもある。そんなこともあって、筆者の本職の同僚からは「相鉄沿線に住む実家の母が、相鉄線に乗るのが怖くなったと言っていた」との声もある。
新横浜駅の東急線方面停車駅案内。直通により相鉄線の行き先は一気に増えた(編集部撮影)
唯一の見分け方は、種別の表記がJR直通は緑、東横線直通は赤紫、目黒線直通は水色と、種別の色が「速さ」ではなく「直通路線」によって分けられているところだ。できればJR直通は「JR池袋行き」といった表示にしてもらいたいものだ。
新横浜線の開業で、相鉄線内の横浜行きは本数が減った。そのため、相鉄は横浜に行く場合、横浜行きでなくても来た列車に乗り、(新横浜線分岐駅の)西谷で同駅始発の横浜行きに乗り換えると早く着くという利用法をPRしている。横浜行きの列車が来た場合はそのまま乗って行けばいいが、より早く着ける方法もある。
例えば、いずみ中央7時22分発の通勤急行横浜行きに乗り通すと横浜には8時06分に着くが、いずみ野で通勤特急新宿三丁目行きへ乗り継ぎ、その後二俣川で特急横浜行きに乗り継ぐと、横浜に8時00分に着ける。
本線のかしわ台、さがみ野、相模大塚からも、少しでも早く行く方法がある。相模大塚7時10・25・40・55分発の通勤急行横浜行きで横浜に行く場合、そのまま乗り通しても横浜にはそれぞれ7時43・57分、8時12・27分に着くが、大和で新横浜線方面に行く特急に乗り継ぎ、さらに西谷で通勤急行横浜行きに乗り継ぐと横浜には6分早く着く。
新横浜線方面でも、複数回乗り継ぐことでより早く着ける方法がある。例えば目黒に行く場合だ。いずみ中央7時13分発の各駅停車池袋行きに乗り、いずみ野で通勤特急高島平行きに乗り継ぐと目黒には8時11分着となる。だが、この通勤特急は途中の二俣川で特急浦和美園行きとの待ち合わせがあり、これに乗り継ぐと目黒には8時06分に着く。
少しでも早く着けるチャンスが随所に用意されているのはいいことではあるが、うーむ、乗りこなすのは難しい……。時刻表マニアとしては面白いところだが、一般の人からしたらややこしいだろう。
東横線だけのユーザーにもメリット
相鉄直通列車の登場によって、東横線内のみの利用者にもメリットが生まれた。元住吉・新丸子から渋谷・目黒へ出る際に使える、題して「乗り遅れちゃっても大丈夫ダイヤ」だ。東横線と目黒線をうまく乗り継ぐと、逃した列車に追いつくことができる。
まず上りを見てみよう。元住吉毎時05・35分発、新丸子毎時08・38分発の東横線各駅停車(自由が丘で特急接続)に乗り遅れると、次の東横線各駅停車は元住吉14・44分発、新丸子18・48分発(自由が丘で急行渋谷行き接続)までなく、渋谷に着くのは11分遅くなってしまう。
ところが元住吉09・39分発、新丸子12・42分発の目黒線各駅停車に乗ると、多摩川または田園調布で相鉄線発の東横線急行に乗り継ぐことができる。これなら渋谷到着は7分遅れで済む。このほか、元住吉09・24・39・54分発の目黒線各駅停車は武蔵小杉で東横線特急に乗り継げるようになっており、こちらを利用すれば渋谷には遅れなく到着できる。
元住吉駅から渋谷・目黒方面への乗り継ぎ時刻表。「待ち合わせ」=各停から優等列車への乗り継ぎ、「連絡」=優等列車から各停への乗り継ぎ、「接続」=東横線・目黒線間の乗り継ぎ(筆者作成)
また、元住吉14・28・44・58分発、新丸子01・18・31・48分発の東横線各駅停車(自由が丘で急行渋谷行き接続)に乗り遅れても、元住吉00・15・30・45分発、新丸子04・19・34・49分発の目黒線各駅停車に乗れば、逃した各停が接続するのと同じ急行に多摩川または田園調布で乗り継ぐことができる。
新丸子駅から渋谷・目黒方面への乗り継ぎ時刻表。「待ち合わせ」=各停から優等列車への乗り継ぎ、「連絡」=優等列車から各停への乗り継ぎ、「接続」=東横線・目黒線間の乗り継ぎ(筆者作成)
目黒方面に行く場合も同じような手が使える。上記の目黒線各駅停車(元住吉00・15・30・45分発、新丸子04・19・34・49分発)は武蔵小山で急行に接続するが、この各停に乗り遅れても大丈夫。直後に来る元住吉05・20・35・50分発、新丸子08・23・38・53分発の東横線各駅停車に乗れば、多摩川または田園調布で目黒線急行に乗り継ぐことができ、目黒到着の遅れを回避できる。
これらの接続は、ダイヤ通り運転されている際に筆者が現地で発着時刻の秒数も考慮して確認した。ただしいずれの方法も東横線・目黒線のどちらかが少しでも遅延すると破綻する技なので、そのリスクも考慮のうえご活用いただきたい。
実は大井町―新横浜間も最速25分
今回のダイヤ改正では、日中にも渋谷始発の急行が新設された。渋谷からの着席チャンスが増えたのは嬉しい点ではないだろうか。一方、この渋谷始発急行と相鉄直通急行は自由が丘での各駅停車への接続はない。となると、急行の停まらない新丸子や元住吉へはその後の各停で行くしかないように思える。
そこで使えるのが目黒線各停だ。渋谷毎時12・17・42・47分発の急行は、田園調布で2〜3分後の目黒線各停に乗り継ぐことができ、新丸子・元住吉へは後続の東横線各停を利用するより最大2分早く着く。なお、相鉄直通急行は輸送障害による相鉄直通中止でも渋谷―武蔵小杉間は運転するようである(実際に3月26日はこのような運用となっていた)。
また、「渋谷―新横浜間最速25分」などが盛んにPRされている中、あまり目立たないがこれまでJR京浜東北線・横浜線経由で30分以上かかっていた大井町―新横浜間も最速25分で行けるようになった。
目黒線では新横浜まで行く急行が毎時4本走っているが、このうち1本は大岡山で大井町線の上り・下り両方の急行に接続する。日中の下りは、大井町43分発の急行を利用すれば、大岡山乗り換えで新横浜まで最速25分だ。このほか、大井町23分発の急行と26分発の各駅停車も、大岡山で目黒線日吉行きに待ち時間なしで乗り継げる。
新横浜からの場合は、27分発の急行が大岡山乗り換えで大井町まで最速26分だ。このほか、日吉52分発の各駅停車は大岡山で急行大井町行きに、58分発の各駅停車は各駅停車大井町行きに待ち時間なしで接続する。
これまで便利な使い方と利便性向上を中心に触れてきたが、新横浜駅での乗り継ぎで不便なケースがある。同駅は2面3線の構造で、中央の線路1本は両側にホーム(2・3番線)がある形となっている。相鉄線方面行きの1番線、東急線方面行きの4番線と対面で乗り換えられる構造だが、そうならない場合がある。
「2面3線」の新横浜駅。手前が1・2番線のホームで、中央に1本の線路をはさんで奥が3・4番線だ(編集部撮影)
日吉5時52分発海老名行きを逃すと、土休日ダイヤの場合、その後の相鉄直通は6時31分発湘南台行きまで39分も間隔が開く。5時57分発新横浜行きに乗れば新横浜で5分前に出た海老名行きに乗り継げるが、次の相鉄直通までは34分待ちとなる。
だが、実はその間に6時12分発の新横浜行きがある。筆者は開業日、この列車に乗車した。新横浜駅では中央の線路、2・3番線に3分ほどの遅れ(定刻は6時18分)で到着。隣の4番線には当駅始発の6時21分発海老名行きが停まっていた。本来4番線は東急線方面行きのホームだが、ここから相鉄線方面へ向かう列車もある。
4番線と3番線は同じホームなので直接乗り継げるものと思っていたが、到着後、2番線側のドアは開いても3番線側はいつまで経っても開かない。その間に海老名行きは発車してしまった。両側のドアが開いていれば乗り換えられただろうし、これだと定刻着でも3分で階段を上り降りして乗り換えることになる。
3月26日に日吉駅のポイント故障で東横線直通を取りやめた際も、4番線から相鉄線方面へ折り返す列車の設定があった。このときも同様に、新横浜着の列車は2番線側のドアを開けて車内から出るよう促され、その後ドアを閉めてから3番線側を開ける対応であった。3番線側が先に開けば直接乗り換えられたので、これは顧客体験的にはよくないことだ。
ダイヤ乱れ時は日吉駅がネック?
開業日の3月18日は、日中〜夕方は30分ほどの遅れが出た時間帯があった。日吉駅では上り列車が詰まってしまい、同駅の引き上げ線で待機している同駅始発列車を出せず、このため引き上げ線に同駅止まりの列車が入れなくなり、元住吉―日吉間の下り線も渋滞する事態となっていた。
こういうときのために、目黒線の引き上げ線を複線のまま残し、東横線横浜方につなげて目黒線の日吉止まりの一部を菊名へ延長するといった取り組みがあってもよかったのではないか。せっかく東横線〜新横浜線系統と引上げ線方面は同時出入線できるのに惜しいと感じる。相互直通と線路配線の関係でいえば、東京メトロ副都心線はダイヤ乱れの対策で開業後8年もかけて小竹向原―千川間に連絡線を追加した。後からこうなることを考えて配線を考慮してもよかったのではないか。
日吉駅の配線図(筆者作成)
いい面も悪い面も紹介してきたが、総じて便利になったのは間違いない新横浜線の開通。東横線・目黒線内の途中駅利用者にもメリットが多い一方で、ダイヤ乱れ時のデメリットも極力少なくできている点で安心だ。あとは新横浜線自体の運用課題を解決したうえで、さらなる増発などによって利便性に磨きがかかっていくことを期待したい。
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(北村 幸太郎 : 鉄道ジャーナリスト)