「自分は発達障害かも」と気になる人は、どのように対処していけばいいのでしょうか(写真:koumaru/PIXTA)

発達障害児をもった親の多くが悩む、「障害の告知」。なかには親から告知をされる前に、本人がネットやテレビなどの情報から自分の特性に勘づく場合もあります。そういったとき、本人はどのように対処し、考えていけばいいのでしょうか。発達障害専門の精神科医・本田秀夫氏は、発達障害そのもののとらえ方と、周囲からのサポートの仰ぎ方を解説します。

本田氏による『10代からのメンタルケア 「みんなと違う」自分を大切にする方法』を一部抜粋・再構成。10代のための生き方のヒントを紹介します。

自分の悩みが「発達障害」に当てはまるような気がする

うまくできないことがあって悩んでいるときに、身近にいい相談相手がいないと、一人であれこれと考え込んでしまう場合もあると思います。

例えば、忘れ物が多くて困っているときに誰にも相談できなければ、自分で工夫しますよね。メモをとったり確認の回数を増やしたり。テレビやインターネットで、同じ悩みを抱えている人の話を見ることもあると思います。「忘れ物 対策」などの情報を検索したことがある人もいるでしょう。

そうやって自分なりに工夫しているなかで、「発達障害」という言葉を目にしたことがあるかもしれません。発達障害とは、いくつかの特性があることによって生活上の支障が出ている状態のことを言います。

「悩みが当てはまる=発達障害」と決めつけることはできない

発達障害には自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの種類があります。

「忘れ物が多い」というのは、ADHDの特性がある人に見られる特徴の一つです。そのほかにも「落ち着きがない」「うっかりミスが多い」「時間にルーズ」などの特徴があります。そういう情報を見て、当てはまる部分が多いと、「自分は発達障害かも」と感じることがあるかもしれません。

しかし、特徴が当てはまるからと言って発達障害と決めつけることはできません。世の中の、忘れ物をする人のすべてがADHDに該当するわけではないんです。実際に自分がADHDに該当するかどうかは、医療機関で診察を受けてみなければ、わかりません。

「障害」「診察」と言われると、「自分は病気なのだろうか」と、怖くなる人もいると思います。そんな人のために、発達障害のことを少し説明しましょう。

発達障害は、病気や障害というよりは、「タイプ」のようなものと私は考えています。例えばADHDには「不注意」「多動性・衝動性」という2つの特性がありますが、不注意な人は世の中にけっこういますよね。不注意というのは、誰にでも少しはある特性です。

不注意があれば障害、なければ普通という話ではないんですね。誰しも不注意なところがあるけど、ADHDの人はそれが特に強い。「人とは違う病気」というよりは「人よりも特徴が強いタイプ」なんです。

タイプに合わない生活をしていると困ってしまう場合も

例えば、「明日持ってきてほしいものを、一度しか言わないからしっかり聞いてください」と言われるような環境では、注意散漫なタイプの人にはミスが出やすくなります。

それに対して、必要な持ち物が一覧でわかりやすく貼り出されているような環境であれば、おそらくミスは減るでしょう。

不注意の特性が強い人が、必ず苦労するわけではないんです。環境によって、苦労の度合いは変わり、発達障害はその度合いをふまえて診断されます。

不注意が強くて困っていればADHDと診断されることもありますが、同じ程度の不注意があっても、快適に過ごせていれば診断されない可能性もあります。そういう意味で、発達障害は病気というよりも、タイプのようなものです。

自分の特徴に合わせて工夫したり、人を頼ったりすればいい

発達障害の特性を一つのタイプだとすると、次にやることも見えてきます。その特徴が、生活上の困難にならないようにしたり、人を頼ればいいんです。


例えば、不注意が強いタイプなら、ミスをカバーできる環境をつくっていけばいい。

「予備を用意する」「持ち物を確認する回数を増やす」「家族や友だちに声をかけてもらう」という方法で環境を整えれば、困ることは減るでしょう。

ほかの人ができていることがうまくできないと、自分が劣っているように感じることもあるかもしれません。

でも、何度も書きましたが、得意不得意があるのはあたりまえのこと。不得意なことを気にしすぎるあまりに、あなたのよさが消えてしまわないようにしてほしいと思います。

「発達障害」が気になる人は一度、大人に相談するのもいい

発達障害に関する基本的な考え方は説明しましたが、「自分は発達障害かも」と気になる人は、一度、親に相談してもいいでしょう。親には話しにくいという場合には、学校の先生やスクールカウンセラーだとどうでしょうか。

大人の協力を得て、医師などの専門家の話を聞くことができれば、自分の特徴をよりくわしく理解できます。 発達障害の特性があることがわかって、学校などで配慮や支援を受けられるようになる場合もあります。 自分一人の力では悩みごとを解決できないときには、大人を頼ることも考えてみてください。

(本田 秀夫 : 信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)