VAR介入で2度の誤審:相次ぐチェルシーのPKに、ベリンガム「もう冗談だろ?」
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確かにボルシア・ドルトムントでアドバイザーを務めるマティアス・ザマー氏は、「この2試合全体をみれば、敗退は仕方のないことかもしれない。チェルシーは個人の能力が高いし、普段以上の力が求められるものだ」とAmazonプライムにて総括。ただ客観的な意見はそこで終わりを告げ、この日の審判団への苛立ちを露わにした。なぜならば決勝点となってしまったゴールは、後半開始早々にベン・チルウェルが左から上げたクロスを至近距離で、マリウス・ヴォルフが体の面積を増やさず自然の動きで体を回転させた際に腕にあてており、加えて一度は主審がプレー続行を決めたにも関わらず、敢えてVARが介入してPKの判断が下ったという背景があるためだ。
しかもそれだけにとどまらない。その後にキッカーを務めたカイ・ハヴェルツが、自ら駆け上がった動きを急停止したために、両チームの選手たちが蹴る前にペナルティエリアに入り、結果的にシュートが右ポストに弾かれるとPKのやり直しを支持。最終的にはチェルシーがこれを決め最後まで守り切り、ロンドンの夜はドルトムントにとってあまりに辛いものとなってしまった。「あのPKの判定、そしてPKのやりなおし。これはもうスキャンダルものだよ」とザマー氏は2年前にも、同じくイギリスで行われたマンチェスター・シティとのCL準々決勝1stレグにおけるVARの疑惑の判断についても併せてコメント。
さらにエムレ・ジャンも「今日は審判が決定的な役割を果たしてしまった。どうして2回もあのようにPKを与えられるものだろう。理解に苦しむね」と苛立ちをみせ、ザマー氏と同じく「マッケリー主審は試合中、ずっと傲慢さをみせていた。ハーフタイムに話すことさえ許さなかったが、そこから始まることになるんだ」と不信感を露わに。「こんな負け方をしたのは審判のせい。スタンフォード・ブリッジだから、審判はそこのファンを恐れたのかもしれない。だったらUEFAはそんな審判ではなく別の審判を送るべきじゃないかな。審判が理由で敗退するというのは、あまりに辛いものがあるよ」と述べている。
元審判員2人、PKは「私なら、与えない」
なお元ブンデスリーガの審判員で解説者を務めるヴォルフガング・シュタルク氏は、「両チームの選手がペナルティエリアに早く入りすぎている以上、再開はルール上は正しかったことになる。そこではドルトムントの選手たちも早く入りすぎてしまったから」と説明。それではその前のPKの判定についてはどうか?「腕は自然の位置にあると思うし、決してボールに向けて放たれているわけではに。だから私ならPKにはしない」と反論した。
同じく元審判員のマヌエル・グレーフェ氏もツイッターにて「私の見方では故意のハンドではなく、また動きも決して不自然なものでもない。ヴォルフは背中を向け、腕の出方はできるだけ小さくとどめようとしており、あれは私の見立てでは誤審だと思う。ドルトムントにとっては不運なものだった」とし、さらにシュタルケ氏が再度解説しているように、一度マッケリー主審がプレーを流していた以上は、そこに敢えてVARが介入することは、主審が視界が遮られていたとの自己申告でもない限りあるべきではない。
#championleague #CHEBVB Für mich kein absichtliches Handspiel + und auch nicht unnatürlich. Er dreht sich weg+dadurch geht der Arm minimal raus, aber immer noch eng am Körper sowie ohne Spannung, was man am ,Wegschleudern‘ des Armes sieht. Für mich falsch+ viel Pech für den BVB
- Manuel Gräfe (@graefe_manuel) March 7, 2023
規約専門家「PKの再トライも誤審」
それだけではない。ドイツサッカー連盟でサッカー規約を専門とするルッツ・ヴァグナー氏によれば、再びPKを蹴ること自体も、VARの介入によって誤審となっていたという。確かに規約には「両チームが早く入り過ぎた場合、得点にかかわらず再キックになると記されていますが、ただそれは主審自身がそう判断した場合に限られています」と説明する。つまり「高解像度で確認可能なVARが介入可能となれば、たとえ数ミリ単位でも再キックとなるため多発する恐れがある」ということ。その事態を避けるために、特定の場合を除いて介入することは許されないのだ。
それではその特定に値するのか?実際にハヴェルツが蹴ったボールは誰にも接触していないことから「ハヴェルツが蹴った場合は不正なダブルコンタクト」になる。最終的にクリアしたエズカンと同様に近くにいたチェルシーの選手たちもイリガールポジションとなるため、ゴールを決めていたはずという前提が崩れるのだ。「もしもマッケニー主審が全てを自分で判断していれば問題のなかったことです。ただVARが介入することは、これらの理由であるべきことではなかったのです」と説明した。
VARによって失われていくサッカーの魅力
サッカーにおける技術支援は例えばゴール判定技術やオフサイド判定技術などは有用なツールであるとともに、ビデオ判定審判員もまた、主審による致命的なミスを避けるために有効な方法である。しかし現在の状況ではあまりに多くの問題が見受けられていることも確かだ。そのため解決をはかっていくには改めて、主審へ決定権を完全に委ねるようすべきだろう。グレーゾーンの判定がVARの範疇となることがあってはならないし、審判員もまたVARを意思決定における隠れ蓑にすべきではない。時に不安定にみえる両者にとって失った権威の一部を取り戻すことにもつながるものであり、結果的には利益をもたらすはずだ。
ベリンガム、2度のVAR介入に「もう冗談だろ?と」
イングランド代表ジュード・ベリンガムは、BT Sportに対して「1・2メートルの距離でボールがあたったけど、いったい彼があれ以外に何をすべきだったというんだろうね。わからないよ」と疑問を呈しつつ、「ただ面倒なことにはこれ以上巻き込まれたくはないし、もう十分にお金は支払ったから」と、2021年12月のバイエルン戦にて審判へ批判したことから4万ユーロの罰金を払ったことも暗に指摘。
ただそれでもどうしても口にでてしまうのは、2度もVARが介入してチェルシーにPKを蹴らせたという事実であり「それはもう本当に残念だよ。冗談だろ?と思った。あんな蹴り方をすれば踏み越える選手は何人もでてくるさ」と述べている。ただ「彼はそう決断したし、僕たちは受け入れるしかない」と前を向いており、実際にその5分後には後半最大のチャンスを自ら逃したこともまた否めない事実だ。
テルジッチ監督「極めて良いプレーをしなくてはいけなかった」
「些細なことが決定的となる。今日はいくつかの場面で不運に見舞われたが、それも試合にはつきもの。悪いプレーではなくとも、ここでは極めて良いプレーをする必要があったんだ。ここ最近の調子と自信だけでどうにかなるものではない」とテルジッチ監督は冷静に説明。年明けから続いた連勝がストップ、CLへの夢もストップした、ボルシア・ドルトムント。確かにその要因として守護神コーベルや絶好調だったアデイェミの離脱、同じく絶好調のブラントが早々に交代し、VARによる2つの疑惑の判定など、その胸中は複雑なものであっただろう。
しかしながら最近安定していたCBコンビはチェルシーの深い位置への動きに対応しきれず、ハヴェルツには好きにさせてしまい、オフェンスでもハイボールを上げても相手CBに容易にクリアされる。中盤では遊び心やスペースは見受けられず、そのあたりは特にブラントの交代が「あまりにも痛かった」(ヴォルフ)。GKマイヤーは「最後の一押し」の不足を指摘するなど、テルジッチ監督が語る「極めて良いパフォーマンス」とするには不足が目立った。
大きな安堵をみせるポッター監督
CL出場に一縷の望みを繋ぐチェルシーにとっては、まさに値千金の勝利であり、進退問題も浮上していたグラハム・ポッター監督を後押しする勝利にもなるかもしれない。試合後の会見の席では「私はまだここにいるよ」と就任以来最大の成果にご機嫌で、「とてもうれしいね。選手もファンも素晴らしかった」と「トップチーム」との「特別な夜」での安堵感を露わに。「2試合をみれば勝ち抜けに値する」と強調しており、2度目はしっかり沈めたハヴェルツの「人間性」も高く評価している。ただククレジャを3バックの中で左サイドに起用するサプライズが功を奏した点もあり、試合後にはUEFAからMOMにも選出。「今日、結果がでていなかったら、どうなっていたかはわからないがね」と、自身と共に窮地で力を発揮したディフェンダーに賛辞をおくった。
ハヴェルツ「ドルトムントには申し訳ない」
一方のカイ・ハヴェルツは試合後、「今日の試合で僕たちは改めて存在感を示せた。それをぜひ自分たち自身と、そしてファンたちに見せたかったんだ」とコメント。勝因として「監督の優れたマッチプラン」と「ファンからのサポート」をあげており、「僕たちはこういう試合での勝ち方を知っている」と胸を張りながら、その上で「ドルトムントもリスペクトしている」といい、「仮に逆に同じようなPKが自分たちに起こっていたら、同じように苛立ちを感じていたことだろう。ドルトムントには何人か仲のいい選手がいるし、申し訳なく思う」とその心情を思い遣っている。
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- Chelsea FC (@ChelseaFC) March 7, 2023