「2人で来店し、注文は1品」は法的責任を問われる?

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 飲食店では、2人で来店したのに料理を1品しか頼まないケースが発生しているようで、ネット上で度々議論となります。この場合、客が法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。また、飲食店は、1人1品注文するよう、客に強制してもよいのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

事前に客に説明する必要あり

Q.ラーメン店やファミリーレストランなどの飲食店で、2人で来店したのに料理を1品しか頼まないケースが度々発生しているようです。飲食店で1人1品以上注文しなかった場合、客が法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「基本的には、『1人1品注文すること』という条件を取り決めた『飲食提供契約』の合意が、飲食店と顧客との間に存在していたかがポイントです。合意されていた場合、飲食店は顧客に対して契約違反を主張し、料理の提供などを拒むことが可能ではないかと思います。

ただし、飲食店の張り紙やメニューに『1人1品注文すること』と掲示してあるだけでは契約合意があったとは言えないので、店員が注文時に具体的に説明して顧客に同意してもらう必要があります。あくまで民法の契約法に基づく請求です」

Q.では、「1人1品注文するのがマナーだ」などと主張し、飲食店側が「1人1品の注文」を強制した場合、法的責任を問われる可能性はありますか。

牧野さん「『1人1品注文しろ』と脅かして強制した場合、脅迫罪(2年以下の懲役または30万円以下の罰金)や強要罪(3年以下の懲役)に問われる可能性があるので注意が必要です」

Q.顧客が「1人1品の注文」のルールに合意したにもかかわらず、それを守らなかった場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。店は、客に損害賠償を求めることができるのでしょうか。

牧野さん「飲食店は顧客に損害賠償、具体的には追加注文を要請することが可能です。ただし、威圧的に要求すると、先述の犯罪が成立する可能性があるので注意が必要です」

Q.飲食店の客が「1人1品の注文」を守らなかった場合の事例、判例について教えてください。

牧野さん「通常、こうしたケースが裁判に発展することはないため、裁判例は見つかりませんでした」

Q.ちなみに、飲食店でグループ客の1人が「食べ放題」のメニューを注文後、その料理や飲み物を他のメンバーとシェアした場合、法的に問題となる可能性はありますか。

牧野さん「この場合、注文客が取ってきた食べ放題の飲食物を他のメンバーが食べた時点で、そのメンバーは食べ放題のルール(1人ずつ注文)に合意したと見なされ、その時点で『食べ放題』の注文が成立したと解釈されると思われます。

飲食店としては、合意が存在することを理由に、注文客がシェアした飲食物を食べたメンバーに対しても、追加の『食べ放題』の正規料金を請求することができるでしょう」

Q.飲食店を利用するときの留意点について、教えてください。

牧野さん「事前に店から説明を受けていなかった場合、1人1品注文しなくても、基本的に法的責任を問われることはないと思われます。ただ、店と客が互いに気持ちよく過ごすためにも、飲食店に行ったときは、1人1品注文するのが望ましいでしょう」