ドライブデートで“相手の本質”が分かる?

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「お見合い婚活」の場合、お見合いからお付き合いに入り、デートを重ねていきながらお相手の人柄を見極めていきます。そんな中でよく聞くのが、「話をしていて悪い人ではないのだけれど、このままお付き合いしていても、異性として好きになれるかどうか分からない」という声です。

 こんなときは、ドライブデートをお勧めします。車という狭い空間で2人きりになったときに、それまでは分からなかったお相手の一面が見えてきて、その後の交際を続けるべきか否かの答えが出てくるのです。

 結婚相談所を運営する仲人である筆者が、3つの事例を紹介します。

狭い車内の空間で「2人きり」は無理

 吉本たまえさん(41歳、仮名)は、太田みちやさん(45歳、同)とお見合い後、交際に入りました。お見合いを終えたばかりの頃は、「趣味も似ていて、お話ししていても楽しかったです」と言っていました。

 そこから2度、3度と食事デートを重ねていくうちに、「悪い人ではないけれど、先に進める決定打がない」と、交際の進展について悩むようになりました。ところが4度目のデートで、みちやさんから、「少し遠出をしましょう。僕が車を出します」と提案され、この交際の答えが出たようです。

 たまえさんは私に、こんな連絡をしてきました。

「車の中の狭い空間で、運転席に太田さん、助手席に私が座っていることを考えたときに、『太田さんの車には乗りたくない』というのが素直な気持ちでした。人間的には決して悪い人ではないのだけれど、男性としては好きじゃない。さらに、そこから手をつないで歩くことなどを考えたら、それは絶対に無理だと思ってしまいました」

「人としては、受け入れられる。でも、異性としては受け入れられない」。男女関係を築くときによく聞くせりふです。

 ただ、たまえさんはドライブデートの約束を、既にしてしまっていました。

「苦痛ですけど、1日頑張ってきます。そして、そのデートの後で『交際終了』を出そうかと思います」

 こう言うので、私はこんなアドバイスをしました。

「もう、この交際は終了することを決めている。でも約束してしまって悪いから出かけるというのは、かえってお相手に失礼になりますよ」

 断られることを知らないで、お相手は車を出して1日過ごす。それでは、お相手の時間もガソリン代も、デート費用も無駄になってしまいます。

 そこで、たまえさんは、「ドライブデートの日は、予定が入ってしまったので延期したい」と、まずはドライブデートをキャンセルしました。そこから3日後に、「今後のことをいろいろ考えてみたけれど、この交際は終了にしたい」というお返事をしたのです。

 いい人だけれど、異性としては好きになれない――。これは、理屈では片付けられません。本能が感じていることなので、仕方がないのです。

 たまえさんは、みちやさんを男性として受け入れられなかったけれど、みちやさんを受け入れてくれる女性は、きっとどこかにいるはずです。それが男女の相性なのではないでしょうか。

車の運転には、人柄が出る

 安井あつこさん(34歳、仮名)がお付き合いしていた淀川まさのりさん(36歳、同)は上場企業に勤め、年収は980万円、細身で見た目もすてきな男性でした。

「お見合いのとき、ホテルのティーラウンジの入り口で待ち合わせをしたのですが、そこからラウンジへの誘導も、飲み物のオーダーの仕方もとてもスマートでした。お話も楽しかったし、お見合いで、やっとすてきな人に巡り会えたと思いました」

 お見合い後には交際となり、あつこさんはとても喜んでいました。楽しくデートを重ねていき、4回目のデートで、「少し遠出をしましょう」ということになったそうです。

 まさのりさんが車を出して、郊外の遊園地に行くことになりました。あつこさんは、キャンディーやクッキー、スナック菓子などのおやつも買いそろえました。当日は早起きして、お昼に2人で食べるお弁当を手作りし、さながら遠足気分で出かけていったのです。

 ところが、そのデートを終えたあつこさんが、まさのりさんとのお付き合いに「交際終了」を出してきました。その理由が、ドライブデートをしたことで、それまでは分からなかったまさのりさんの神経質な一面が見えたからだと言うのです。

「私は、すごく楽しみにしていたので、最初からはしゃいでいました。まず、待ち合わせの車に乗り込んだときに、お昼のお弁当をたくさん作ってきたことと、車の中で食べるおやつも買ってきたことを告げたんです」

 すると、まさのりさんが言ったそうです。

「車の中では、飲食はしないことにしているんだ。あめはいいけど、クッキーやスナック菓子の類いは、向こうに着いてから食べてね」

 あつこさんは、私に言いました。

「車を汚したくない気持ちは分かったんです。でも、彼の言葉に、はしゃいでいた私の気持ちが、スーッと引くのを感じました。そこから私も急に冷静になって、彼を観察しだしたんですね」

 すると、途中で渋滞に巻き込まれたときに小さなため息をついたり、赤信号にばかり引っかかることが続くと小さな舌打ちをしたりしているまさのりさんに気付きました。

 さらに、目的地に着いて駐車場に車を止めようとした時のこと。空車スペースがあってもなかなか車を止めようとせず、駐車場内をのろのろと運転していたので、「あそこ、空いているんじゃない?」と、あつこさんが指をさすと、まさのりさんは言いました。

「車と車の間には止めたくないんだ。以前、隣の車がドアを思い切り開けたようで、僕の車が傷ついていた。でも、隣の車は既にいなくなっていたから文句も言えなかった。傷を直すのに10万円近くかかったんだよね。それ以来、こういう駐車場のときは、角で空いているスペースに止めるようにしているんだ」

 その話もあつこさんにとっては愉快なものではなく、気持ちが重たくなったそうです。そして、お昼には、あつこさんが作ったお弁当を当たり前のように食べ、「こんなに作るのは大変だったでしょう」というねぎらいの言葉も、「おいしかった」という感想もなかったというのです。

「“車の運転には人柄が出る”って言うけれど、本当にその通りだなと思いました。あと、遠出をして1日一緒に過ごすと、2、3時間の食事デートでは分からない、いろいろな部分が見えてきますね。結婚って、1日どころかこれからの人生をずっと一緒に過ごすのだから、まさのりさんは、そのお相手ではないと思いました」

不器用ながらも車中で気持ちを伝えてくれた

 逆に、ドライブデートをしたことで仲を深めたカップルもいます。

 矢野みちさん(32歳、仮名)は志田たいちさん(35歳、同)とお付き合いに入り、4回目のデートを終えたところで、ドライブデートに誘われました。みちさんは、これまで男性と恋愛した経験がほとんどなく、「郊外へドライブに行こう」とたいちさんに誘われたときには、身構えてしまいました。

 そして、こんな相談をしてきたのです。

「車だと、どこに連れて行かれても、途中で降りることはできない。やっぱり危険ですよね」

 私はみちさんに言いました。

「そこまで大げさに考えなくてもいいのではない? これまで4回お会いして、『たいちさんは誠実で優しい男性』とおっしゃっていたわよね。そこは、彼を信頼してもいいんじゃないですか? ただ、自分の中でそんな疑問を持ってしまうなら、まだドライブデートは時期尚早なのかもしれませんね」

 すると、みちさんから、こんな連絡が来ました。

「自分を納得させるためにも、今回は電車で行くことを提案してみます」

 そこで私は言いました。

「そうですね。自分に無理をしないで、2人の距離を縮めていきましょう」

 ところが、そこから3日後、みちさんからこんな連絡が来たのです。

「やっぱりドライブに行ってみようと思います。私は恋愛初心者だけど、彼も恋愛には奥手な人だし、彼を信用してみます」

 そして、ドライブデートに出かけたようですが、みちさんはそのデートを終えて、たいちさんをもっと好きになっていました。

「目的地まで2時間半あったのですが、車の中で、いろいろな話ができました。彼も私も恋愛初心者だから、気持ちがうまく表現できなかった。彼は不器用ながらも、私のことをすごく真剣に考えているということを、言葉で伝えてくれました。今までの食事デートだと、周りに人がいたし時間が短かったから、世間話で終わっていたんですよね。すごく楽しい1日でした。勇気を持ってドライブデートに出かけて、よかったです」

 この後、2人は真剣交際に入り、今、結婚に向かって着実に関係を築いています。

 車の中は“2人だけの空間”。といっても、外から景色も見えるし、並走車や対向車もあるので、密室とは違うものです。もう一歩関係を踏み込みたい、相手の本質を見極めたいと思ったら、ぜひドライブデートをしてみてはいかがでしょうか。