「子宮腺筋症」になると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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子宮腺筋症とは、子宮の内側の組織である子宮内膜と類似した組織が、子宮の筋層の中でできてしまう病気です。主に30代後半~50代の人に発症する病気として知られています。

子宮内膜症と同等の病気として以前から扱われてきた病気でしたが、薬物によると治療では反応が違っているため、近年からは子宮腺筋症と呼称されるようになりました。

主な症状としては月経通や月経量の増加、月経時以外の出血などがあり、不妊などの原因にもなります。子宮腺筋症について詳しく解説しますので気になる方は、ぜひご覧ください。

子宮腺筋症の原因や症状

子宮腺筋症はどんな病気ですか?

子宮は大きく分けると「子宮平滑筋」と「子宮内膜」の2つの組織からできた臓器です。子宮腺筋症という病気は、子宮内膜とよく似た組織が子宮平滑筋の中でできてしまうものです。
子宮平滑筋は筋肉でできている組織ですが、この中に子宮内膜と類似した組織ができてしまい、月経痛や月経血量の過多などの症状を来します。子宮平滑筋全体に腺筋症が発症すると子宮全体が肥大してしまうこともあります。
また子宮腺筋症によって子宮筋腫や子宮内膜の肥厚を合併することもある病気です。

どうして子宮腺筋症になるんですか?

子宮腺筋症の原因は長らく不明でしたが、子宮腺筋症と子宮内膜症を併発した患者さんのゲノム解析の結果と臨床情報を照合した結果、病気について次のことが解明されました。
それによると子宮腺筋症はゲノム異常を伴った多クローン性増殖疾患であるというものです。そして子宮内膜症を併発する患者さんの約4割で子宮内膜症の要因でもあるがん関連遺伝子(KRAS遺伝子)の変異を確認しています。
しかしこの結果では子宮腺筋症についての原因はわかっておらず、発症のメカニズムや子宮内膜症の併発についても不明のままです。
なお発症のリスク要因として、妊娠分娩・流産・子宮手術(子宮内容除去術、帝王切開術など)が確認されています。

子宮腺筋症になるとどんな症状がでますか?

子宮腺筋症になった場合の症状は数多くあり、月経に伴うものでは強い月経痛・月経量や出血の増加・月経困難症・過多月経などの症状があります。
また月経時以外の出血・性喉痛・排便痛・慢性骨盤痛・腹満感などといった症状の原因にもなることがあるでしょう。さらには合併症として子宮内膜症・子宮筋腫を併発してしまうことも多いです。
こうした症状や合併症によって生活の質を著しく損なってしまうだけでなく、不妊症や流産が増加することも知られています。

子宮腺筋症になりやすい体質・年齢はありますか?

子宮腺筋症になりやすい体質というものは、これまでのところ特に確認はされてはいません。
ただし子宮腺筋症という病気は子宮内膜症と同じく最近になって増えてきた病気なので、現代病とみなされています。ある意味先進国に多い病気と言い換えることもできるでしょう。これについては食生活や生活習慣といったものが誘引になっている可能性もあるからです。
発症のリスク要因として挙げた妊娠分娩・流産・子宮手術というものは子宮腺筋症の原因になり得るものであり、なりやすい状態といえるかもしれません。なお年齢的には30代後半~50代の人が多く発症することと知られています。

子宮腺筋症の治療について

子宮腺筋症の治療方法を教えてください。

症状によって治療法は異なってくるのですが、一般的には大きく分けて2つの治療法があります。1つめが薬物などを使用する保存的治療です。
保存的治療では疼痛や月経型の場合、鎮痛剤や GnRHアゴニスト・低用量エストロゲン、プロゲスチン配合剤・ジエノゲスト・子宮内黄体ホルモン放出システム(小さな器具を子宮内留置する)などさまざまなホルモン剤などを使用するでしょう。2つめの治療法は外科的治療となります。これは子宮腺筋症核出術・子宮内膜症灼術・子宮全摘術といった方法です。
通常では1つめの保存的治療を行なって、それらが無効だった場合に2つめの外科的治療を行うことが多いです。

子宮腺筋症の治療は保険適用できますか?

子宮腺筋症におけるおおよその治療では保険適用できますが、一部保険が適用されないものもあります。それは子宮腺筋症核出術という先進医療で、高周波切除器を用いた手術になります。
保険適用とされる対象の治療法は、その治療法が標準的になったものだと判断される場合です。残念ながら子宮腺筋症核出術はまだ標準的な治療法として認められてはいません。
なお子宮腺筋症の治療法として子宮を摘出する子宮全摘術は保険適用できる手術です。

子宮腺筋症の治療期間はどれくらいかかりますか?

子宮腺筋症の症状の度合いによって治療期間が違ってきます。発症した年齢によっても治療期間は変わってくるでしょう。また手術を行なったとしても再発する可能性もありますので、一律で症状が現れてから何日後というような治療期間はありません。
なお子宮腺筋症の収まる時というものはおおよそわかります。それは閉経の時期です。子宮腺筋症という病気が維持、増殖するためにはエストロゲンという女性ホルモンが必要になります。
閉経するとこのホルモンが低下してくるため、子宮腺筋症も小さくなっていきます。子宮腺筋症は月経痛や過多月経といった症状が収まれば完全治癒しなくても良い病気です。もちろん閉経まで待てというわけではありません。
医師と相談して適切な治療を受けることが必要です。

子宮腺筋症の手術費用はどのくらいかかりますか?

子宮腺筋症の症状や受ける手術によって費用は変わってきますので、一概にいくらかかるというのは難しいのですが、あくまでもおおよその目安としてお答えします。
入院費も含めると実費で60~85万円程度かかるでしょう。保険を適用すれば1割または3割負担になりますから、10~20万円くらいになるでしょう。
なお先進医療といわれる子宮腺筋症核出術では保険が適用されないので、手術費用は自己負担になります。なお治療にかかるそれ以外の費用、例えば入院費・検査料・薬代などには保険が使えます。
実際に手術費用がどれだけかかるのかは医師や病院側と相談されるとよいでしょう。

子宮腺筋症についてよくある質問

子宮腺筋症を放置するとどうなりますか?

子宮腺筋症は良性の病気なので、症状が軽いまたは無症状の場合であるなら必ずしも治療が必要というわけではありません。もし子宮腺筋症にかかったとしても症状が出なければ病院で診察を受けることもないので、そのまま放置されて気付かないという人も少なからずいることでしょう。
ただこれは症状がないような場合であれば、という条件がついた場合のことです。子宮腺筋症にかかった場合、強い生理痛など耐え難い痛みを伴うことも多いので、放置するのは辛いだけでしょう。治療を受ければ症状が緩和されることになります。
また子宮腺筋症では他の病気と併発する可能性も高いので、症状がある場合は放置せず治療を受けるようにしてください。

子宮腺筋症になっても妊娠はできますか?

子宮腺筋症によって妊娠する能力が失われることはありません。したがって子宮腺筋症でも妊娠はできます。これは自然な妊娠だけでなく、体外受精による妊娠も可能であることがいえるでしょう。
ただし体外受精に関しては医療機関による意見もさまざまです。体外受精による妊娠の確率は子宮腺筋症でも変わらないという意見があれば、体外受精人妊娠できない患者さんの中には子宮腺筋症の患者さんが多く含まれるという意見があります。
いずれにしろ子宮腺筋症の患者さんでも妊娠する可能性はあるといえます。その一方で子宮腺筋症が原因で流産しやすいという研究結果があるのも事実です。流産を経験された人は子宮腺筋症にかかっている可能性があるともいえるでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

子宮腺筋症という病気は女性の20~30%がかかっているといわれているものです。それだけだれにでも発症する可能性があり、かかっていても自覚していない人も多数いるだろうと思われる病気です。
幸い良性の病気だと知られているので子宮腺筋症だけなら、そう深刻なものではないかもしれません。しかし実際に子宮腺筋症によって苦しんでいる女性はいますし、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気を併発する恐れがあります。
症状が軽い人でも医師による診察を受けて相談することもよいでしょう。

編集部まとめ


子宮腺筋症そのものは感染する恐れや悪性の病気ではないという点で、大きな心配はないものかもしれません。それでも個人的に辛い思いをされる人はいらっしゃることでしょう。

この病気はそれほど大きな憂慮がないものの、現代社会の女性にかかりやすい点やかかってしまう原因がまだ解明できていないなど、気にかかる点が課題として残るところです。

いずれ子宮腺筋症という病気のメカニズムを解明し、他の病気との併発の恐れなどが解消できるよう努めていきます。

参考文献

子宮腺筋症(日本内分泌学会)