「賃上げ倒産」急増の前兆 従業員の転退職で倒産、3年ぶり増加
高まる賃上げ機運 賃上げ難の企業で人材流出進み、経営に行き詰まる懸念も
コロナ禍からの経済再開が進むなか、従業員を自社につなぎとめることができずに経営破綻した倒産が足元で増加傾向に転じた。2022年に判明した人手不足倒産140件のうち、従業員や経営幹部などの退職・離職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」の人手不足倒産は、少なくとも57件判明した。多くの産業で人手不足感がピークに達した2019年以来、3年ぶりの増加となった。22年の人手不足倒産に占める「従業員退職型」の割合は40.7%となり、21年(46件/111件、41.4%)に続き高水準で推移した。賃上げ進める大手企業と「無い袖は振れない」中小企業の格差広がる
2023年も既に1万品目超の食品で値上げが予定されるなど物価上昇が止まらず、労働者からは賃上げを求める声が強まっている。賃金アップを求め人材流動性も高まり、大手のみならず中小企業でも月額5000円の大幅ベアで呼応するケースも出てきた。他方、賃上げしたくても収益力に乏しく「無い袖は振れない」中小企業も多い。厳しい経営に嫌気がさして役員や従業員が退職したケースもあり、動向は二極化の様相を呈している。転職市場などを筆頭に、賃上げによって良い人材を高給で囲う動きが強まるなか、満足に賃上げされないことを理由に従業員が辞めることで経営に行き詰まり、倒産する中小企業の増加が懸念される。