2022年も、さまざまな魅力を持つデジタル機器が登場しました。今年は何といっても物価高が直撃。デジタル機器の多くが、コスト高や円安を背景に、値上げを余儀なくされました。そんな中でも購入を決めたお役立ちアイテムを、デジタル業界に詳しいライター諸氏に聞きました。

2022年に購入したベストアイテム、今回紹介するのは本誌デジカメレビューでもおなじみの写真家の落合憲弘さんです。落合さんが2022年に買ったイチオシ製品は、リコーイメージングの高級コンパクトデジカメ「GR IIIx」。28mmの広角レンズを搭載するこれまでのGRシリーズとは異なり、40mmの標準レンズを搭載するのが特徴。落合さんは、28mmのGR IIIも購入していたのですが、それでもGR IIIxを買い足した理由は一体何でしょうか?

リコーイメージングが2021年10月に発売したAPS-Cセンサー搭載コンパクトデジカメ「GR IIIx」。GR伝統の薄型軽量ボディを維持しつつ、35mm判換算で40mm相当の標準レンズを搭載したのがポイント

選んだ製品:コンパクトデジカメ「GR IIIx」(リコーイメージング)

実売価格:129,800円

選んだ理由:“GR”のまま40mmになっている、その使い心地を手に入れたかった

満足度(5段階):★★★★☆(4点)

○40mmのGR IIIxを買ったら、28mmのGR IIIの出番が激減した

ついに出た、やっと出た、やっぱり出た・・・いろんな思いが交錯するリコー「GR IIIx」の登場ではあった。なぜなら、「GR III」のユーザーである私は、ずいぶん前にコチラのGR IIIレビューでこんなことをいっていたからだ。

でも、万一50mm相当の画角を有する「GR III-46(フォーシックス)」なんてのが出たら、あっさり買い足しちゃうかも?

コロナ禍が巻き起こる少し前、まだイロイロとシアワセだった2019年夏の記事である。予言したモデル名に使用している「46」は、いわゆる「坂道シリーズ」とはまったく無関係の、35mm判における50mmレンズの画角をイメージした数字だ。我ながら、なかなか洒落たネーミングだと思っていたのだけど、実際に登場したのは「GR IIIx」だったということで、「フォーシ」が「エ」に変わっているだけの、ほぼほぼドンピシャなモデル名だったことにビックリ! 世間一般では、この結果をドンピシャとはいわないような気もするが(笑)、何はともあれけっこうシアワセな気分になることができたGR IIIxの登場だったといっていい。

GR IIIとの違いはレンズだけだ。当初わずかな機能差もあったけれど、そこはGR IIIがファームアップで追いつきスッキリ解決。搭載するレンズが、18.3mm(35mm判換算約28mm相当)から26.1mm(同約40mm相当)になっていることだけが両者の差異である。そう、「x」の画角は、35mm判換算で50mm相当ではなく40mm相当だ。

そんな「x」を手に入れて以降、私のGR IIIは明らかに出番が減っている。最初こそ「GR IIIとGR IIIxの2台持ちストリートスナップ、楽しそうじゃーん」ってな勢いで両方持ち歩いていたのだけど、さほど経たないうちに、両者をいちいち持ち替えるのが面倒くさいと思うようになってしまったからだ。

ボケのつながりがキレイだから、ついつい接写に近い撮り方も楽しんでしまいがちなGR IIIxなのだけど、マクロモード時にピントが合うのは、約0.12〜0.24mという、ごく狭い範囲(GR IIIのマクロモードは約0.06〜0.12m)。この不便さ、縛られ感がタマらんのです!

さらに、GR IIIというカメラには、28mm相当よりも40mm相当の画角の方が圧倒的にしっくりくるように感じていることが「GR IIIの使用頻度ダダ下がり」につながっているという一面もある。使っていて(撮っていて)楽しいのは、何故だか断然GR IIIx。物理的な使い心地はGR IIIと同じなのに、なんなんだろうね、この違いって。

思うに、GRシリーズのような「己を持つ(そうあって欲しい)カメラ」には、28mmの万能性(万人に優しい画角)よりも、チョイとした縛りを感じさせる40mmの画角がお似合いということなのかも? たしかに、GR IIIほど気楽にシャッターが切れないGR IIIxである。例えば、構図の追い込みに、もうひと手間かけたくなるGR IIIx・・・そんな感じだ。28mm相当よりも画角が狭いがゆえの「ひと手間」。それが転じて“楽しさ”のようなものを生成しているのかも?

フルプレススナップなど、“速写”に重点を置いた機能は変わらずに装備するけれど、単なるスナップシューターには収まらない、フトコロの深さと心地よき厳しさを併せ持つのがGR IIIの「x」なのだ。GR IIIに加えさらに「x」を買い足すことに躊躇がなかったといえばウソになる。でも、買ってよかった。GR IIIxを手にすると、GR III以上に“写真生活的老廃物”をドバッと洗い流せるような気がするのだ。

ちなみに、冒頭「満足度」の星が1個欠けているのは、バッテリーの持ちが悪いから。そこんところは、GR IIIとまるっきり一緒なのだけど、個人的にはもうひとつの常時携帯機「オリンパス TG-5」とバッテリーが共用できるところに、ナニゲにシアワセを感じていたりする我がGRライフでもある。おっと、こりゃナイショの話ですケドね。

28mmのGR IIIよりも使いこなしがちょっと難しい40mmのGR IIIxだが、「撮る楽しさはGR IIIxの方が上」と語る落合カメラマン

落合憲弘 おちあいのりひろ 「○○のテーマで原稿の依頼が来たんだよねぇ〜」「今度○○社にインタビューにいくからさ……」「やっぱり自分で所有して使ってみないとダメっしょ!」などなどなど、新たなカメラやレンズを購入するための自分に対するイイワケを並べ続けて幾星霜。ふと、自分に騙されやすくなっている自分に気づくが、それも一興とばかりに今日も騙されたフリを続ける牡牛座のB型。2022年カメラグランプリ外部選考委員。 この著者の記事一覧はこちら