2022年のグルメ界は、中華のスターシェフたちによる新しい挑戦が注目を集めた。

『飄香』グループの総料理長、さらに『中華たかせ』や『私厨房 勇』といった星付きのシェフたちが、

新しい店をオープンさせ、美食家たちの胸を熱くさせた。

今回、2022年に話題を呼んだ一軒へ、声優の下野 紘さんをお誘いし、手練れのひと皿を堪能いただいた!

下野さんが実食した取材記事も含めた、中華の名店たちをご紹介!

▶前編はこちら:【未公開カットあり】声優として不安定だった日々を乗り越え…。下野紘がさらけ出す本音

【目次】
■下野 紘さんも唸った、人形町の中華料理店の魅力
■【WEB限定】編集部は見た!下野さんの撮影当日の裏話
■いま注目!スターシェフたちの中華の新店4軒!

※コロナ禍の状況につき、来店の際には店舗へお問い合わせください。




「マンダリン オリエンタル 東京」『広東料理 センス』の初代料理長を務めた高瀬健一さんが、当時考案した「伊勢海老のオリジナルマンゴーマヨネーズソース」を差し出され、目を輝かす下野さん。


1.高瀬氏初の独立店で感じる、円熟したシェフの懐の深さ
『Ino Cantonese 日本橋たかせ』@人形町

「甘みと酸味のバランスに感動しています。エビの食感まで計算されているなんて、高瀬シェフの凄みを感じます」と、リスペクトの眼差しも

「マンゴーとマヨネーズって、こんなに合うんですね。知らなかったです…」


香港広東料理を知り尽くした名料理人、高瀬健一さん初の独立店は、カウンター主体のくつろぎの空間。

日本人の感性に合わせた“優しい中華”は、上質を知る大人たちから早くも熱い視線を浴びている。

57歳にして、初めて自分の店を持つに至った理由を高瀬さんはこう語る。

「マンダリンに骨をうずめるつもりだったけれど、人生100年時代。料理人としても僕の代名詞とも言うべき料理も、まだ“最終形”と呼ぶには早いな、と。

トレンドに乗るのではなく、本当に上質なものを“適正価格”で食べてもらえる店なら、やりたいと思った」



7,500円でコースにプラスオンできる「フカヒレの上湯とろみスープ」。1人前約80gのボリュームは、箸上げ時にずっしり重みを感じるほど。金華ハムの旨みを凝縮したスープも感動もの


客からの「東京の東側には、大人が落ち着いて食事ができる店が少ないからぜひ」という声も後押しになったという。

料理は季節ごとに変わる「おまかせコース」1万3,800円〜1択だが、コースに+2,800円で組み込める「伊勢海老のオリジナルマンゴーマヨネーズソース」を筆頭に、高瀬さんの代名詞とも言える逸品もそろっているのは嬉しいところ。




プラス2,800円の「伊勢海老のオリジナルマンゴーマヨネーズソース」は、元々のレシピをさらにグレードアップして提供。

シェフ自身、「自己最高」と胸を張る。これを目当てに訪れるゲストも多い。



使用する素材や調味料から考えると、「おまかせコース」(13,800円〜)は、破格とも言える値段設定。だが高瀬さんは「気楽に通っていただける店にしたい」と、至って謙虚


「カウンター奥の厨房から聞こえてくる調理音も、味同様に優しく柔らかくて。大人がゆっくり食事するのにぴったりのお店ですね」と下野さん。

日本橋という新たな場所で、『Ino Cantonese 日本橋たかせ』の新章は始まったばかりだ。


【WEB限定】編集部は見た!下野さんの撮影当日の裏話


「素の自分は、ただの“おしゃべり“」と自認する下野さん。撮影中には、1皿1皿、供される料理に見事なまでの食レポを披露してくれた。

「めちゃめちゃ優しいのに、“海”を感じます。僕がこれまで知っていたフカヒレとは根本的に何かが違う……気がします(笑)」

これは「フカヒレの上湯とろみスープ」を召し上がった際の実際のコメント。ゆっくりとスープを味わい、フカヒレへと箸を伸ばすリアクションも秀逸で、現場のスタッフを驚かせた。

そもそも今回、本誌のオファーにふたつ返事で快諾してくれたというが……。

「通っている歯医者さんが定期購読をされているので、行く度に読ませていただいていました。絶対に美味しいものが食べられる!と思って楽しみにやって来ましたが……いや、これは期待以上でしたね」

撮影前には花澤香菜さん、津田健次郎さんら声優陣が出演した過去の号もご覧いただいたとのことで……。

「最近は声優さんも出ているんだ〜なんて思いながら、仲間たちの登場号もチェックしていましたよ。

みんな普段見ないような、“よそ行き顔”で載っていて、親戚のような気恥ずかしい気持ちになっていましたが、僕も絶対そう思われちゃいそう(笑)」

と、しきりに照れていた姿がなんとも可愛らしかった。


2.香港式クリスピーチキンに、舌の肥えた大人が歓喜する
『港式料理 鴻禧』@虎ノ門

「脆皮炸子鶏(クリスピーチキン)」

ツウな大人も悦に入る食材が次々と登場


2022年7月、虎ノ門の裏通りにひっそりと誕生した香港料理店『港式料理 鴻禧』は、フーディの快哉をもって迎えられた。

というのも、伝説のシェフが復活したから。料理長の覃 志光(チャム チィコウ)さん、通称・トミーさんは、香港料理の伝道師として名をはせる人物。

16歳で料理の世界に入り、37歳で来日。今は無き広東料理の名店『福臨門魚翅海鮮酒家』の各店で長く腕を振るってきた経歴を持つ。その後は、錦糸町にあった『サウスラボ南方』のシェフに就任。

スペシャリテの「クリスピーチキン」を筆頭に、一見シンプルだが卓越した技術が要される料理は、大変な評判となった。




ストリートフードの代表格「海老雲呑麺」は、新鮮な車エビを使ってリッチに仕上げる。



「伊勢海老の香港風」は、新鮮な伊勢エビを揚げてネギと炒め合わせ、上湯を入れてとろみを付け……とスピーディに仕上げる。料理はAコース(16,500円)からの一例


しばしのブランクを経ての新天地では、そんな練達の技と極上の素材との邂逅が実現。

加えて、ガス台を客席側に向くように設置したことで、スピード感溢れるダイナミックな料理の工程も目でも楽しめるようになり、ライブ感がアップした。




調理中の様子を眼前に臨める臨場感たっぷりのカウンター。

ワインのほか、紹興酒や日本酒も織り交ぜるペアリングは8,800円〜。



「脆皮炸子鶏(クリスピーチキン)」は、濃い味わいと黄みを帯びた脂が特徴の専用の丸鶏を使用。温度が高まっていく油をレードルでまんべんなく掛けながら、ベストな揚げ加減を見極める


中華鍋の中で油が爆ぜる音や、素材を炒める際に立ち上る香りなどがダイレクトに感じられるのだから、否が応にも気分は高揚。

店を後にする頃には、多幸感に包まれていること確実だ。


3.『飄香』グループの総料理長が、技術と経験のすべてを魅せる
『飄香』@広尾

古き良き四川に思いを馳せた「琵琶」。「泡菜」という漬物のエキスでマリネしたボタンエビを、同じエキスを乳化させたソースで覆った美しい一品

遊び心あるひと皿に感じる熟練の余裕


2005年に1軒目の店をオープンして以降、日本の四川料理の第一人者としてレストランシーンを牽引してきた『飄香』の総料理長・井桁良樹さん。

今年7月に本店を麻布十番から広尾へと移し、全面的に刷新された料理をおまかせコースのスタイルで供するように。

銀座・六本木・代々木上原の3店舗で味わえる伝統的あるいは本場さながらの四川料理とはひと味違う、王道とシェフの遊び心とが融合した料理でもてなしてくれる。

すべての皿を井桁さんがほぼひとりで仕上げるのも、これまでにない挑戦だ。



テーブルはわずかに4卓


14品から成るコース(24,200円)は、歴史ある四川の名菜をベースに、培ってきた経験や技術、中国の史実や文化にも思いをはせ「今の時代に“新・名菜”を作り出すなら?」という視点から生まれる。

四川の食文化に造詣の深い井桁さんならではの料理は、新たな歴史の誕生に立ち会う気持ちで味わいたい。




客席からはシェフの様子を一望できる。



4.広東と香港で研鑽を積んだシェフが辿り着いた、洗練の中国料理
『一平飯店』@麻布十番

皮はクリスピー、肉はジューシー!な「香鶏の丸揚げ」は定番のひとつ。揚げニンニクを散らして

経験値高きシェフの定番は繊細かつ豪胆に


麻布十番の裏通り、昭和の気配を色濃く残す住居が多く立ち並ぶ生活圏にこつぜんと現れた『一平飯店』。

料理長の安達一平さんは、広東料理・四川料理それぞれの名店での研鑽に加え、香港でも3年間の修業を積み、満を持して料理長に就任した。

豊富な引き出しがあるだけに「いろいろな料理を食べていただきたい」と、おまかせコース(22,000円〜)はお粥に始まり、広東料理を中心とした15品前後が登場する。



ストイックな内装


その分「優しい味付けと控えめのポーションを意識しています」と安達さん。

その言葉通り、古くから伝わる中国の郷土料理も、安達さんの技術と感性にかかればぐっと洗練された仕上がりに。

もちろん、優しいだけではなく「香鶏の丸揚げ」のような、味もビジュアルもインパクトがあって強く記憶に残るシグネチャーメニューも。

緩急を付けた構成に唸らざるを得ない。




「香港のダイナミックな料理もお出ししたい」と、安達さん。21時以降は大皿料理のコースも。



5.港区民に愛される一ツ星中華のセンスを、アラカルトで贅沢に味わえる!
『麻布 勇』@西麻布

本店の名物である「蒸し鮑の浅利出汁紹興酒バターソース 肝醤油ソース」(4,050円)はこちらでも

本店の名物も気の向くままにオーダー可能


原 勇太シェフの確かな技術とオリジナリティから生まれる、優しい味わいの料理に定評がある白金高輪の『私厨房 勇』。

それだけになかなか予約が取れないことでも知られるが、2022年5月、西麻布に姉妹店『麻布 勇』が誕生した。

本店と最も異なるのが、コースのみの白金と対照的に、多彩なアラカルトから自由に料理を組み合わせられること。



奥にはパーテーション付きのテーブルも


「自分自身がアラカルトのお店に心引かれるようになり、白金とはがらりとスタイルを変えてみました」と原さん。

そんな原さんのディレクションのもと、西麻布の厨房を任されているのが、料理長の木村和明さん。「The Okura Tokyo」が誇る中国料理店『桃花林』で、約9年間経験を積んだ新鋭だ。

王道のチャイニーズ一筋という経歴ながら、『私厨房 勇』のオリジナルメニューの味もしっかりと継承。シチュエーションに合わせて使い分けたい。




木村さんの鮮やかな鍋さばきを見るなら、カウンター席に。



▶前編はこちら:【未公開カットあり】声優として不安定だった日々を乗り越え…。下野紘がさらけ出す本音

■プロフィール
下野 紘 1980年生まれ、東京都出身。2001年、声優デビュー。2016年にはデビュー15周年を記念し、歌手としてソロデビュー。『鬼滅の刃』の我妻善逸役、『うたの☆プリンスさまっ♪』の来栖翔役、『進撃の巨人』のコニー・スプリンガー役ほか、人気作品に多数出演。2023年1月からは3年ぶりとなるライブツアーが控えている。

■衣装
ジャケット 55,000円、シャツ 28,600円、パンツ 52,800円〈すべてANEI/JOYEUX TEL:03-4361-4464〉、その他スタイリスト私物

▶このほか:いま、ここが恵比寿ランチのトレンドだ!ひとりでも立ち寄りやすい注目の新店4選




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