「B型肝炎」の症状・感染経路はご存知ですか?医師が監修!
肝臓にB型肝炎ウイルス(HBV)が入ることで肝機能障害を伴うB型肝炎。日本を含め世界中で問題視されている病気のひとつです。
この病気は誰でも起こり得る病気である上、重症化すると命にかかわることもあります。そんなB型肝炎ですが、どのような経路で感染するのでしょうか。
ここではB型肝炎の感染経路をはじめ、症状・治療方法・予防方法をご紹介します。正しく病気を知るためにも、ぜひ参考にしてみてください。
B型肝炎の感染経路・症状
B型肝炎はどんな病気ですか?
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)が肝臓に入ることで炎症を起こす病気です。B型肝炎は急性と慢性に分けられます。成人以降に初めてHBVに感染し発症したものを急性、HBVを長期間持ち続けているものが慢性です。慢性の場合、一度体内に入ってしまうと出ていくことはなく、長い間肝臓に留まります。長く留まれば症状は進行し肝硬変、最悪の場合は肝臓がんになることもあるのです。
B型肝炎の感染経路を教えてください。
B型肝炎はHBVが含まれた血液や体液が体内に入ることで感染します。主な感染経路は母子感染とそれ以外の感染(水平感染)です。母子感染はHBVを持つ母親の産道の血液を通して感染します。しかし現在は妊婦検診の血液検査にて検査があるため、ほとんど起きていません。一方、水平感染は母子感染以外で感染したものです。具体的な感染経路は下記のものになります。
不特定の方との性交渉
入れ墨やピアスの穴あけで使った器具の使いまわし
麻薬を使用するための注射器を共有
傷のある皮膚に血液や体液の付着
B型肝炎に感染する経路は改善されつつあるものの、年間10,000人~11,000人感染しています。主な原因は不特定多数との性交渉です。性交渉は他の感染症に罹患するケースも少なくないため、防ぐにはコンドームを使用しましょう。
どんな症状があらわれますか?
B型肝炎に感染すると、下記のような症状があらわれます。全身の倦怠感
食欲不振
嘔気
嘔吐
腹痛
悪心
褐色尿
褐色尿とは烏龍茶のような色のことです。黄疸は眼球結膜(白目)が黄色くなり、その後は皮膚も黄色味を帯びてきます。
これ以外の症状として、肝臓の腫大が見られる場合もあるのです。一般的には数週間でピークを迎え回復に向かいますが、1%~2%程度で症状の進行があり劇症肝炎を発症することがあります。劇症化すると、肝性昏睡(肝性脳症)という肝機能低下による意識障害が出現し、最悪の場合は死亡する危険性があります。
これらは急性B型肝炎に見られる症状であり、慢性B型肝炎は症状が現れることがない上、自覚症状があまり見られません。しかし自覚症状がなくても残りの10%は継続的な炎症を示し、この内の約2%が肝硬変へと移行し、肝細胞がんや肝不全に進行するといわれています。
肝硬変は、肝臓の炎症が長期化することで肝臓が線維化し小さく硬くなることで肝機能が低下するのです。慢性肝炎から肝硬変や肝細胞癌になっても病状が進行しなければ症状が明確に出現しまうことがあります。
肝硬変になると下記のような症状があらわれます。
体のむくみ
肌や白が以前より黄色っぽくなる
顔に浮いた血管が目立つ
足がつる
肝臓は沈黙の臓器といわれ、症状が現れるときには良くない状態であることが多いです。いつもと違う違和感を感じた場合、早めに医療機関に受診しましょう。
潜伏期間はあるのでしょうか。
はい、あります。成人後にB型肝炎にウイルスに感染した場合、1か月~6か月を経て症状が出現します。潜伏期間は平均75日といわれているものの、30日~180日と幅広いです。B型肝炎の検査方法・治療法
B型肝炎の検査方法を知りたいです。
ご自身がB型肝炎に感染しているどうかは血液検査で調べられます。HBs抗原というHBVの外側のたんぱく質を検出するのです。この検査で「陰性」であれば、HBVには感染していないということになります。一方「陽性」の場合、より詳しい検査をすることになり、下記の検査を実施します。
HBe抗原
HBe抗体
HBc抗体
HBs抗体
HBc-IgM抗体
HBV-DNA
また、HBVの検査と並行して肝機能検査(AST・ALT・血清ビリルビン値)や肝生検を行い、肝炎の発症や進展具合を確認します。
検査で病院に行くのが恥ずかしいのですが…。
早期に発見し治療をすることで治癒する可能性が高くなります。少しでも不安のない日々を過ごすためにも、早めに医療機関に受診することがおすすめです。それでも検査を躊躇してしまうなら、自宅でできる検査キットを使用するのも良いでしょう。しかし、正確なのは医療機関になるため、陰性や陽性にかかわらず一度受診するほうが安心です。B型肝炎は自然に治りますか?
成人以降に初めてB型肝炎に感染した場合、症状が現れることなく70%~80%の方は自然に治癒します。1か月程度で完治し、抗体も作られるため再度感染することはありません。しかし、20%~30%の方は急性肝炎となり、その内の1%~2%は劇症肝炎へ移行するのです。劇症肝炎は命にかかわる危険な病気であるため、慎重な経過観察が必要となり入院による安静が求められます。どんな治療を行うのでしょうか?
基本的な治療は、注射剤と内服薬を使用しウイルスを抑える方法です。注射剤はインターフェロン製剤を、内服薬は核酸アナログ製剤になります。それでも効果が期待できない場合、肝臓の細胞を破壊し進行を遅くする肝庇護療法を行うこともあるのです。しかし、この治療法は慢性B型肝炎に罹患している方が対象となり、急性B型肝炎に罹患している方は治療をすることはありません。B型肝炎の予防と注意点
B型肝炎はワクチンで予防できますか?
B型肝炎はワクチン接種を実施することで予防できます。接種することでB型肝炎はもちろん、将来の肝臓がんも予防することができるのです。そのため、他人の血液に触れる機会が多い医療従事者などはも予防のためにワクチン接種が推奨されているのです。万が一、HBVを含んだ血液に触れてしまった場合はHBsヒト免疫グロブリンにて予防することができます。また、2016年10月より新生児の予防接種にB型肝炎のワクチン接種が追加されました。早期に接種することで高い効果が期待できます。
予防のために日常生活で注意すべきことはありますか。
肝臓への負担をかけないためにも下記のような行動を取るように心がけましょう。バランスのとれた食事
禁酒
長時間の入浴は避ける
適度な運動
生活習慣を整えることは重要となります。
基本的に、B型肝炎ウイルスは食事や入浴など日常生活で感染することはありません。しかし、出血を伴う行動は感染するリスクが高くなります。歯ブラシや剃刀など血液が付着する可能性のある生活備品の共有はしないようにしましょう。また、前述のとおり、性交渉では感染リスクもあるため、コンドームを使用すると防ぐことができます。
他にも、感染リスクを低くするためにもワクチンの接種を検討するのもひとつです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
B型肝炎は日常生活と密接している部分もあり、いつ誰が感染するのかわかりません。しかし、ほとんどは自然に治癒するのですが、重篤な病気へと進行してしまいます。早期発見により適切な治療を行うことで進行を抑えることはできるため、少しでも異変を感じたら速やかに病院へ受診することをおすすめします。編集部まとめ
B型肝炎は感染経路が多数あるため、ご自身が気付かないうちに罹患していることもあるでしょう。また、誰でもかかる可能性もあります。
しかし、何もせず放置するのはあまり良いとはいえません。重篤化することも稀にあるため、異変を感じたら医療機関を受診するようにしましょう。
万が一、感染してしまったとしても適切な治療を行うことで進行を抑えることは可能です。
また、B型肝炎はワクチンもあるため、感染を防ぐためにも接種をすると良いでしょう。そして、定期的に検査を受けることも大切です。
参考文献
B型肝炎(厚生労働省 検疫所 FORTH)