「カプセル内視鏡」なら苦しくなく検査を受けられるの?

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小さなカプセルをのむタイプの内視鏡検査は、一見すると“楽な”方法に思える。ケーブルが通過するときの抵抗感や、肛門を見られる恥ずかしさなどとは、おそらく無縁な世界だろう。この点を、「センター南駅前内科おなかクリニック」の小川先生に確認してみた。改めて、カプセル内視鏡の実態に迫ってみたい。

監修医師:
小川 修(センター南駅前内科おなかクリニック 院長)

滋賀医科大学医学部卒業。亀田総合病院初期研修医、国立国際医療研究センター後期研修医、昭和大学藤が丘病院消化器内科、虎の門病院消化器内科医員を経た2016年、神奈川県横浜市に「センター南駅前内科おなかクリニック」開院。胃大腸カメラを活用し、拡大観察やNBI観察による高精度な画像診断に努めている。医学博士、難病指定医、日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医・指導医、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医。

小腸と大腸で異なるカプセル内視鏡検査

編集部

カプセル内視鏡検査の場合、ケーブルが通過する苦しさのようなものは感じないですよね?

小川先生

感じません。ですから、問い合わせはよくあります。ただし大腸カプセル内視鏡の場合、「のむ下剤の量」が何といっても多いのです。この点に難色を示される方がいらっしゃいます。別の意味の苦しさといえるのではないでしょうか。

編集部

そもそもカプセル内視鏡では、どの消化管が検査できるのでしょう?

小川先生

小腸と大腸を調べられます。ただし、それぞれ準備や手順が異なるため、一つのカプセル内視鏡で両方を検査することはできません。

編集部

どう異なるのですか?

小川先生

小腸の検査は下剤をのまなくてもいいんです。カプセルをのんだだけで、そのまま調べられます。また、医院でカプセルをのんで、画像を記録するレコーダーは身に着けたままにして頂きます。

編集部

カプセルが録画するわけではないんですね! 機材の返却は?

小川先生

はい、カプセルから電波を飛ばして、からだの外のレコーダーに記録するんです。レコーダーの返却は、当院では翌日にお願いしています。カプセルの返却は、自然な排便によってカプセルが排出されてからで結構です。見つからなかったり、そのまま流れたりしても、気にしないでください。返却いただいても、再利用はしませんしね。

編集部

続けて、大腸の場合もお願いします。

小川先生

大腸カプセル内視鏡の場合は下剤が欠かせません。便に邪魔されてしまうからです。検査前におこなう前処置に加え、当日、カプセルが小腸に到達した段階で、1リットルから2リットルほどの下剤を追加でのんでいただきます。このため、カプセルが素早く小腸を通過してしまうのです。小腸と大腸の検査が同時にできない理由の一つですね。

編集部

大腸の録画は、いつおこなっているのですか?

小川先生

リアルタイムで録画しています。大腸のカプセル内視鏡検査は、下剤を適宜のむ必要があるため、すべて院内でおこないます。小腸のようにご自宅では録画しません。この点も、大きな違いといえますね。

カプセル内視鏡の適応は、思っていたより限られる

編集部

カプセル内視鏡で何を見るのでしょう?

小川先生

潰瘍、ポリープ、がん、消化管出血、炎症の有無などです。ただし、小腸は疾患そのものが少ないんですね。ですから、消化器に由来する不具合が起きていて、その原因が胃にも大腸にもない、「では、どこなんだ」というときに小腸を調べます。いわば、最後の手段です。たいていは、胃か大腸で発覚します。

編集部

カプセル内視鏡の画像精度が気になります。

小川先生

ケーブル式の内視鏡と比べると精度は劣りますが、比較的明瞭に見えます。ただし、ポリープの切除や組織の摘出といった処置はできません。また、気になったところにとどめておけないという操作上の難点もあります。なので、集中した観察はできません。

編集部

もし、ポリープやがんなどが見つかった場合は?

小川先生

ケーブル式の内視鏡で対応します。小腸の場合は、特殊な小腸用の内視鏡を使い、状況によって口もしくは肛門から挿入していきます。

編集部

カプセル内視鏡の大きさはどれくらいなのですか?

小川先生

横1センチ、縦3センチ程度です。大腸のカプセルのほうが若干大きいんですよね。のみこみにくいという患者さんもいらっしゃいます。どうしても困難な場合、内視鏡を使って十二指腸付近まで挿入することもあります。

編集部

カプセル内視鏡には、保険が適用されるのですか?

小川先生

小腸では、先行した胃や大腸の検査で原因がわからなかった場合に適応されます。一方、大腸では、手術歴や腸管の癒着といった理由で「ケーブル式の内視鏡では困難」な場合に限り、保険が適用されます。ただし、実際には、ほとんどいらっしゃいません。多少の癒着があっても、ケーブル式の内視鏡が通らないことはほとんどないためです。

編集部

その場合の費用について教えてください。

小川先生

保険適応で3割負担とした場合、3万円弱といったところでしょうか。自費なら10万円前後になります。この費用は、小腸・大腸を問いません。

編集部まとめ

カプセル内視鏡検査は、機器による苦しさこそないものの、大腸の場合に限り「下剤をのむ」苦しさがあるようです。また、保険適応を前提とすると、その機会も限られます。小腸なら、胃と大腸で異常が認められなかった場合。大腸なら、ケーブル式の内視鏡検査が困難な場合です。小川先生によると、カプセル内視鏡検査を実施すること自体、あまり多くないのだとか。よって、「楽そうだから」という理由でカプセル内視鏡を選択するのは、現実的ではなさそうです。