内視鏡の検査って保険は効くの? 費用相場が知りたい!
監修医師:
諏訪 敏之(読売ランド前すわクリニック 院長)
聖マリアンナ医科大学卒業。島田総合病院、聖ヨゼフ病院、聖マリアンナ医科大学病院、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院、メディクスクリニック副院長をへた2014年、神奈川県川崎市に読売ランド前すわクリニック開院。消化器疾患領域の診療を軸とし、治療のみならず、消化器官内視鏡を用いた予防医療に務めている。日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、初期臨床研修指導医。日本消化管学会、日本外科系連合学会、日本癌治療学会、日本大腸肛門病学会、日本外科感染症学会の各会所属。
保険の対象となるのは「治療」に限られる
編集部
胃の内視鏡検査に、保険は使えるのでしょうか?
諏訪先生
「おなかが痛い」とか「ムカムカする」といったような症状があれば、保険の対象になります。治療を必要としますからね。そうではなく、健康な方が予防目的で受けられる場合は、残念ながら自費となります。
編集部
症状がある場合の費用は、どれくらいかかるのですか?
諏訪先生
では、3割負担を前提として、いくつかパターンを出してみましょうか。以下のケースは、当院でおこなう鼻からの内視鏡検査例です。
■ケース1.初診で内視鏡検査と診断のみ、お薬も不要
【費用概算】3割負担で5000円弱。鎮静剤を使っても数百円ほどの追加
■ケース2.初診の内視鏡検査で胃炎などが見つかり、その場でピロリ菌検査を追加
【費用概算】色素内視鏡検査と診断込み、3割負担で6000円から7000円前後
■ケース3.初診の内視鏡検査で胃がんなどが疑われ、組織を摘出し生体検査へ
【費用概算】色素内視鏡検査と生体検査込み、3割負担で1万円弱
■ケース4.初診の内視鏡検査でピロリ菌が見つかり、後日、除菌療法を2回おこなう
【費用概算】除菌治療2回込み、3割負担で2万円弱。除菌療法が1回で成功した場合は1万5000円前後
編集部
どの医院でも費用は一緒なのですか?
諏訪先生
胃痛や胸やけなどの症状がある場合、つまり保険適用となるケースでは、ほぼ同一と考えていいでしょう。経口と経鼻の差もありません。ただし、追加検査の有無によっては、前後することがあります。例えば、胃の症状のつもりで検査をしたら、食道にも異変が見受けられ、両方の臓器から組織を摘出したようなケースです。このような場合、費用がプラスされます。
編集部
胃の内視鏡で検査できる範囲について教えてください。
諏訪先生
胃の内視鏡は、正式には「上部消化管内視鏡検査」といい、食道と胃、その先にある十二指腸の3分の1くらいまでを診ることができます。大腸を内視鏡で調べる場合は、肛門から挿入していきますので、全く別の検査になります。なお、小腸の内視鏡検査を実施しているのは一部の高次医療機関に限られますので、ご注意ください。
胃痛や胸やけなどの症状がある場合、つまり保険適用となるケースでは、ほぼ同一と考えていいでしょう。経口と経鼻の差もありません。ただし、追加検査の有無によっては、前後することがあります。例えば、胃の症状のつもりで検査をしたら、食道にも異変が見受けられ、両方の臓器から組織を摘出したようなケースです。このような場合、費用がプラスされます。
ピロリ菌の検査を受ける場合
編集部
先ほどの「ケース4」にあったピロリ菌とは何ですか?
諏訪先生
胃のさまざまな症状を引き起こすのがピロリ菌です。ピロリ菌に感染すると萎縮性胃炎を発症し、やがて胃がんに至ることが知られています。とくに日本人の保有するピロリ菌は毒性が強いようです。
編集部
ピロリ菌の検査は、必ず内視鏡検査とセットなのですか?
諏訪先生
そのようなことはありません。ピロリ菌検査を単独でおこなうこともできます。血液や便、呼吸している息などから調べていきます。ただし、その場合の費用は自費扱いとなります。
編集部
逆に内視鏡検査なら、ピロリ菌の検査が保険でおこなえますか?
諏訪先生
健康な方の検査は自費扱いになりますね。保険の対象となるのは、治療もしくはそれに準ずる行為です。具体的には「バリウム造影検査で潰瘍が見つかった場合」もしくは「内視鏡検査で胃潰瘍、十二指腸潰瘍、あるいは胃炎が見つかった場合」には保険が使えます。その後の除菌治療も同様に、保険の対象となります。
編集部
内視鏡によるピロリ菌の判定方法について教えてください。
諏訪先生
検査方法はいくつかありますが、一般的なのは、「迅速ウレアーゼ検査」という方法でしょう。切り取った胃の組織を試薬の中に入れると、ピロリ菌が作るアンモニアの量によって変色します。その場で結果がわかるため、文字どおり「迅速」というわけです。
編集部
最後に、メッセージがあればお願いします。
諏訪先生
「ピロリ菌がいなかったから健康か」というと、必ずしもそうとは言い切れません。ピロリ菌検査を単独でおこなうことには、疑問を感じます。やはり、内視鏡で胃の状態を「見る」ことに意義があるのではないでしょうか。形式的な内容で終わらせないためにも、内視鏡検査を有効にご活用ください。
編集部まとめ
胃の内視鏡検査の保険適用については、「症状の有無」が境目になりそうです。症状は、ある意味“自己申告”ですから、上手に折り合いをつけましょう。一方、ピロリ菌検査の保険適用については、異変がない限り難しそうです。ただし、「ケース1」と「ケース2」の差は2000円程度。「ケース1」に自費でピロリ菌検査を追加しても、合計約1万円といったところではないでしょうか。この費用を高いと見るかどうかは、みなさん次第です。