がんは怖いけど、内視鏡検査(胃カメラ)って苦しそう。実際はどうなの?
監修医師:
諏訪 敏之(読売ランド前すわクリニック 院長)
聖マリアンナ医科大学卒業。島田総合病院、聖ヨゼフ病院、聖マリアンナ医科大学病院、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院、メディクスクリニック副院長をへた2014年、神奈川県川崎市に読売ランド前すわクリニック開院。消化器疾患領域の診療を軸とし、治療のみならず、消化器官内視鏡を用いた予防医療に務めている。日本外科学会専門医、日本消化器外科学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、初期臨床研修指導医。日本消化管学会、日本外科系連合学会、日本癌治療学会、日本大腸肛門病学会、日本外科感染症学会の各会所属。
鼻から内視鏡を通すことで抵抗感を軽減
編集部
胃の内視鏡検査は「苦しい」と聞くのですが?
諏訪先生
口から内視鏡を通す経口内視鏡はかつて苦しさをともなうものでしたが、鼻から通す経鼻内視鏡なら、「喉のおえつ感」ははるかに少なくなってきています。個人的な皮膚感覚ですが、口からの苦しさが「10」だとしたら、鼻からの抵抗感は「3」くらいに軽減されているはずです。
編集部
麻酔は使用するんですよね?
諏訪先生
もちろんです。経口にしても経鼻にしても、局所麻酔は用います。それでも、鼻や喉の奥を異物が通過していく感覚は残るのです。したがって、苦しさのより強い経口内視鏡の場合、鎮静剤という眠くなるような薬を併用する場合があります。
編集部
鼻から内視鏡を通す場合、鎮静剤は使わないのですか?
諏訪先生
ご要望のない限り、鎮静剤を併用しないことが多いですね。鎮静剤を用いると、検査後1時間程度は安静にしている必要があるのです。スペースや時間に加え、人の確保もそれなりに求められますし、医療機関の間で差が出る部分だと思います。事前に確認してみてはいかがでしょう。
内視鏡本体と検査技術の進歩について
編集部
かつての胃カメラは、経口だけだったんですよね?
諏訪先生
そのとおりです。経口の場合、舌の奥を圧迫するので、どうしても独特の苦しさが避けられませんでした。その点、経鼻内視鏡は鼻から通していきますし、経口と比べて管も細くなっています。ただ、細いだけに、カメラの画質が劣っていました。そのため、経鼻内視鏡に難色を示す医師が少なくなかったのです。一般に使われだしたのは、ざっと十数年前だと記憶しています。
編集部
現在の画質はどうなのでしょう?
諏訪先生
かなり進歩しています。テレビのCMなどで、画像強調型の内視鏡を見たことはありませんか。同じ時間で得られる情報が多くなりましたので、「異変を発見する」という目的なら、経鼻でも十分に達成できていると思います。また、ワイヤーの軟らかい機器も登場していますので、より抵抗感が軽減されているのではないでしょうか。
編集部
医師による「腕の差」はありますか?
諏訪先生
胃の内視鏡に限って言えば、大腸内視鏡ほど差は出ないと思います。大腸の一部は複雑に折れ曲がっているため、カメラを通す腕が問われるのです。ただし胃の内視鏡でも、喉を通過させるときは差が出ます。私の場合、患者さんにのみ込む動作をしていただいて、そのタイミングにあわせて通すようにしています。
不可能ではなくなってきた胃がんの撲滅
編集部
胃内視鏡の目的について教えてください。
諏訪先生
目的は二つあります。一つは、胃の痛みなどの症状がない段階で見る「健診」で、予防目的になります。もう一つは、症状がある方に対する「検査」。原因を調べて、治療へ結び付けることが目的です。いずれにしても、胃がん対策がメインと考えています。
編集部
胃がんの死亡者はどれくらいいるのでしょう?
諏訪先生
国立がん研究センターの調べによると、2017年の段階で、男性は2万9745人(がん死亡原因別1位)、女性は1万5481人(同3位)、合計約4万5000人の方が亡くなっています。ただし、早期発見によって胃がんによる死亡者が減っているのも事実です。ピロリ菌と胃がんの関係や、除菌治療の必要性が周知されてきたのでしょう。
編集部
内視鏡検査の受診率を上げるためには、何が必要だと思いますか?
諏訪先生
ピロリ菌の正しい概念を広めていくことです。一言でまとめるとしたら、「ピロリ菌によって発症した萎縮性胃炎が、胃がんの温床になる」というメカニズムでしょうか。医療従事者や行政は、この事実を、もっとアピールする必要があるでしょう。そのピロリ菌を効率的に発見できるのが、内視鏡検査になります。特定健診のチケットなどを有効に活用してみてください。
編集部まとめ
鼻を通す経鼻内視鏡の登場により、かつてのイメージは過去のものとなりつつあるようです。もし、「二度とやりたくない」「体験談を聞くだけでも怖い」などと感じている方がいらっしゃったら、この機に再考してみてはいかがでしょうか。検査は半日なのに対し、胃がんは残りの人生全般を左右しかねません。