【漫画付き】呼吸がしづらくなる? タバコが原因といわれるCOPDとは?
なかなか周知が進まないCOPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)という病気。その正体は、主にタバコを原因とした呼吸機能の低下です。草加きたやクリニックの星加先生によると、COPDの特徴は、「呼吸がしづらくなる」ことにあるとのこと。聞くだけでも恐ろしいこの病気の詳細の解説をお願いしました。
監修医師:
星加 義人(草加きたやクリニック 院長)
埼玉医科大学医学部卒業、順天堂大学大学院医学研究科博士課程修了。東京厚生年金病院(現・独立行政法人地域医療機能推進機能東京新宿メディカルセンター)内科勤務、順天堂大学医学部附属順天堂医院呼吸器内科勤務、越谷市立病院呼吸器科医長就任などを経た2016年、埼玉県草加市に「草加きたやクリニック」開院。医学博士。日本内科学会認定内科医、日本呼吸器学会専門医。日本プライマリ・ケア連合学会、日本アレルギー学会、日本禁煙学会の各会所属。
気付いたときには、呼吸がしづらくなっている
編集部
ときどき耳にするCOPDとは、どんな病気なのでしょう?
星加先生
肺が炎症により障害をうけ、十分な呼吸機能を維持できなくなる病気です。炎症の原因は有害物質で、日本人の場合、その9割は「タバコの煙」とされています。
編集部
初期症状にはどのようなものが?
星加先生
呼吸困難やせき、たんなどが考えられるものの、初期症状の乏しい方もいらっしゃいます。また、仮に息切れなどを感じたとしても、「年のせい」にする方が多いですね。あるいは、COPDなのに、「風邪のせきが治まりにくい」などと看過されることもあります。
編集部
気付きにくいとしたら、手遅れになりそうですが?
星加先生
その可能性はあります。COPDのほとんどは「タバコによるもの」と考えていいので、40歳以上の喫煙者であれば、自覚の有無にかかわらず、自発的な検査を受けてみてはいかがでしょうか。
編集部
「40歳」の根拠はあるのですか?
星加先生
日本呼吸器学会が出している「COPD診断と治療のためのガイドライン」では、「20パックイヤーズ」を越えると、発症リスクが高まるとしています。「パック」は1日に吸うタバコの箱数のこと、「イヤーズ」は喫煙年数のことで、こちらを掛け合わせた数字が20を越えると発症リスクが高まるということです。例えば、20歳から1日1箱を20年間吸い続けると、「20パックイヤーズ」になりますよね。20歳の20年後というと、ちょうど40歳というわけです。
COPDによる死者は年間約2万人
編集部
何をもって「COPD」と診断をつけるのですか?
星加先生
「スパイロメータ」という機器を使って呼吸機能検査をしたとき、「1秒率が70%未満」だと、COPDと診断されます。そのほか、画像診断を併用することもありますね。ただし、ぜんそくなどのほかの病気によって「1秒率」が低下している場合を除きます。
編集部
「1秒率」とは何でしょう? あまり聞かない単語です。
星加先生
ヒトが1秒の間にどれくらいの息を吐けるかは、年齢と身長によって予測できます。この予測値に対する測定結果の割合を「1秒率」と呼んでいます。COPDで問題になるのは、息が吐きにくくなることです。
編集部
COPDを放置しているとどうなるのでしょう?
星加先生
呼吸困難、せきやたんの悪化に加え、肺がんリスクが高まります。また、息を吐くときに気管支がつぶれ細くなります。そのような方は、肺そのものが膨れていきます。吐気を十分に出せないからです。
編集部
COPDで死に至ることもあるのですか?
星加先生
大いにありえます。厚生労働省の統計によると、2017年のCOPDによる死亡例は、1万9000人弱でした。同年における病気別死因順位でも第8位となっています。なお、同じ喫煙者を男女別で比較すると、女性の発症リスクのほうが高いですね。
COPDの投薬治療は一生涯
編集部
タバコをやめれば、COPDは改善するのですか?
星加先生
壊れた肺の機能は元には戻りませんが、若干は改善する可能性はあります。また、呼吸機能は年齢と共に低くなっていきます。したがって、タバコをやめても、呼吸機能は低下し続けますが、その低下が緩やかになっていきます。
編集部
治療方法について教えてください。
星加先生
まずは禁煙です。禁煙が第一の治療法。そのうえで、気管支拡張薬で息を吐きやすくしていきます。必要に応じて、口を細めてゆっくり吐く呼吸法など、呼吸リハビリも併用します。ほか、運動により「息が上がりにくい」トレーニングをすることも有効です。
編集部
保険の適用はできるのですか?
星加先生
呼吸機能検査による診断が付けば、治療に保険を適用できます。ただし、自覚症状のない方には、禁煙のみとなります。
編集部
費用の目安は?
星加先生
診察代などを除いたお薬代だけで、3割負担として、おおむね月2000円でしょうか。お薬は原則として、ずっと使用していきます。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
星加先生
喫煙は、お金を払って寿命を縮めているようなものです。喫煙していてもタバコ代がかかりますし、COPDになってもお薬代がかかります。しかも、その支払いは一生涯にわたって続くのです。どこかで、この連鎖を断ち切ってみてはいかがでしょう。私たちに、そのお手伝いをさせてください。
編集部まとめ
「COPD」にかかった肺をわかりやすく描写するなら、「膨らんだまま縮まなくなった風船」といえるでしょう。空気の出入り口にあたる部分は、きつく閉じてしまっています。最悪の場合、死に至ることもあり、タバコと死を結び付けるのは、何も肺がんに限らないのでした。息が吐きづらくなる「COPD」という病気を、この機にしっかり覚えておきましょう。