【ケガ防止策】スポーツをはじめる前後に中高年なら「コレ」だけはしておきたい
ロコモティブシンドロームの周知により、日頃の運動が大切であることは知られてきたようです。しかし、具体的な取り組み方法やグッズ類となると、とたんに「我流」が散見されます。そこで、スポーツ促進の最新事情について、「ちあき接骨院・ちあきスポーツ院」の戸畑先生を取材しました。
注目ワードは「アクティブストレッチ」
編集部
今回はスポーツによる受傷防止策について伺います。まず、運動前に必要なことは?
戸畑先生
当たり前かもしれませんが「準備運動」に尽きます。みなさんはなぜ、準備運動が必要なのか考えたことはありますか。答えは「からだを温めるため」です。よく「ウォーミングアップ」と言いますが、このウォームとは「温める」という意味です。プロのアスリートを見ても、例えば野球選手ならキャッチボールをしてから試合に臨みますよね。
編集部
からだを温めると、筋肉がしなやかになって動きやすいからでしょうか?
戸畑先生
それもありますが、心拍数を上げて血流量を増やしておくという点にも着目してください。身体に酸素が行き渡りやすくなるので、結果として疲れにくくなります。楽に動けるということは、ケガをしにくくなることと言ってもいいでしょう。加えて、脳に「これから、こんな動きをするよ」と準備させることも重要です。
編集部
なるほど。そんな準備の意味もあったのですね。
戸畑先生
はい。運動するということは、筋肉を縮める行為だといえます。これからの運動で筋肉を急速に縮めるのに、ストレッチでゆっくり伸ばすとしたら、逆の方向です。今は「アクティブストレッチ」といって、立った状態で、軽いダンスのような準備運動をすることが主流になりつつあります。音楽を流しつつ、スピードとリズムに乗せながら筋肉を温めることが大切です。
編集部
ウォーミングアップの量や時間的な目安はあるのですか?
戸畑先生
「アクティブストレッチ」の良いところは、音楽の終わりが一区切りになることですね。その間、小汗をかく程度のスピード・リズムで適度なウォーミングアップをしましょう。また、個人的には、「自分の手先、足先、膝、肘、肩などがイメージしたとおりに動いているか」という確認も重要だと考えています。筋肉や脳の働きが落ちてくると、身体を思った場所へ動かせなくなってきます。これもケガの一因です。
運動後のクールダウンは「当然」
編集部
続けて運動後です。ゲガ防止という観点と疲労回復は関係ないように思いますが?
戸畑先生
そんなことはないですよ。競技内容によってですが、まず、中高年の方ほど筋肉組織は確実に傷がついています。そして、破壊された身体が再生するには材料を必要とします。ですから、競技中や競技後はしっかりと栄養を摂りましょう。とくに糖分とたんぱく質です。また、関節の炎症を抑えるためのアイシングも必須になります。ジムなどであれば水風呂に入り、その後に温かいお風呂に入る「交代浴」ができれば最高です。良くある「暑いサウナ→水風呂→オツマミ」という順は、全くもって“逆”ということになります。
編集部
運動後にもストレッチ運動が効果的とされているのはどうしてでしょう?
戸畑先生
ケガの有無と部位の確認、疲労回復、仲間との達成感の共有という意味で大変効果があります。なにより筋肉が破壊されているので、自分の身体と向き合う意味で、運動後のストレッチに取り組んでください。その際、仲間と楽しい会話ができれば、習慣化していくと思います。なお、座って取り組むより“立位”にしましょう。
編集部
立った状態でストレッチ運動をするということですか?
戸畑先生
そういうことです。座ってしまうと、一部の筋肉は重力を受けませんから、不自然な環境に置かれてしまいます。ストレッチとは異なるかもしれませんが、例えば一般的な「横になっておこなう腹筋」と同様の動作は、寝起きの瞬間に限られますよね。日頃、あまりしないような動作に時間をかけているわけです。加えて、座って安定した状態では、バランス力が付きません。やはり運動後でも、ゆったりとした曲による「アクティブストレッチ」が有効です。
編集部
ほかに、運動後の着眼点はありますか?
戸畑先生
運動の直後に限られますが、ストレッチがいつもよりも伸びないようであれば、専門の先生に相談されるとよいかと考えます。また、関節に痛みがあったら、無理せず整形外科などを受診しましょう。とくに関節の痛みは“重く”受け止めてください。ケガにつながりかねません。
健康は「プライスレス」 積み重ねが大切
編集部
ところで、適度な運動はなぜ、必要なのでしょうか?
戸畑先生
運動は10年先の健康のためにおこなうと考えましょう。急にはじめても、すぐに筋肉がついたり、関節の可動域が広がったりするわけではありません。健康はお金で買えない、努力して手に入れるものです。また、50代以降の加齢による運動器の衰え「ロコモティブシンドローム」が注意喚起されていますよね。それより前の40代から、意識的に運動を取り入れましょう。
編集部
昨今、「フレイル」という言葉も散見するようになってきました。
戸畑先生
フレイルは認知機能も含めた広義な「虚弱状態」のことです。社会的関心といった「こころの問題」も含むでしょうか。よって、「運動で外へでかけて、孤立に陥らない」ことも寿命の延伸に関わってくるでしょう。また、LINEでの文字のやりとりはしていても、ビデオ通話機能を見逃していませんか。お友達の顔を見ながら会話するだけで案外、運動・外出の動機やきっかけになるものです。
編集部
運動は生活習慣病の予防策としても重要ですしね?
戸畑先生
もちろんです。ときに肥満防止にもなります。肥満は、内臓へのダメージや血管への負担など、あまり良いことではありません。食事管理と運動管理の両輪をしっかりコントロールすることが重要です。その意味で、専門家とのタッグが望まれます。セルフでの取り組みを否定はしませんが、効果的におこないたいなら、ぜひ適切な指導を受けましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
戸畑先生
健康な身体はお店で買えません。努力して自分で手に入れるものです。不調や体力低下の原因をけっして、年齢や環境のせいにしないでください。感染症が懸念されますが、「1日30分の散歩」でもいいので運動に取り組んでいただくとありがたいです。とにかく「楽しく外に出る」ということを考えてみてください。
編集部まとめ
ぜひ「アクティブストレッチ」を検索してみましょう。要点は、「立っておこなうこと」と「リズム・スピードに乗せること」のようです。普段の動作に近い準備運動をおこなうことが肝要であり、「○○のポーズ」があったとしても、実際にいつ、しているのかという話ですよね。ウォーミングアップの優先順位は、その後に使う筋肉からです。プロアスリートの準備運動の中身が、それを証明しています。
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