「過敏性腸症候群(過敏性腸炎)」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

写真拡大 (全5枚)

腹痛や便通に慢性的に悩まされているという方も多いのではないでしょうか。もしかしたら、過敏性腸症候群(過敏性腸炎)にかかっているのかもしれません。

過敏性腸症候群は以前過敏性腸炎と呼ばれた疾患で、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じたりする病気です。

何らかの原因により腸内に異常が発生し、過敏になっていることで症状が発生していると考えられています。

今回は、過敏性腸症候群(過敏性腸炎)の特徴・治療の内容・自身で行える対処方法などを紹介します。おなかの異常で悩んでいる方は、自分で判断せず最寄りの病院や診療所で相談してみてはいかがでしょうか。

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)はどのような病気?

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)の症状を教えてください。

過敏性腸症候群は以前過敏性腸炎と呼ばれた疾患で、腸が異常に過敏になり、便秘や下痢などの様々な便通異常を引き起こす病気です。過敏性腸症候群(過敏性腸炎)は、その症状の表れ方から「便秘型」「下痢型」「混合型」「分類不能型」の4種に分類できます。
「便秘型」は硬い便またはうさぎのころころ便のような兎糞状便が形状の25%以上で、かつ軟便または水様便が便形状の25%未満の場合に当てはまります。
「下痢型」は軟便または水様便が形状の25%以上、かつ硬便または兎糞が便形状の25%未満です。
「混合型」硬便または兎糞が便形状の25%以上、かつ軟便または水様便が25%以上といったように便通が変動します。
「分類不能型」は便形状の異常の方向性が不明瞭で、「便秘型」「下痢型」「混合型」のいずれにも該当しない場合が当てはまります。
感染性胃腸炎の後に過敏性腸症候群を発症しやすいことが分かっています。

発症すると痩せることもあると聞いたのですが…。

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)が直接影響して、体重減少を引き起こすことはありません。
過敏性腸症候群(過敏性腸炎)の症状である便秘や下痢が影響して食欲が低下することにより、体重が減ることはあり得ます。
過敏性腸症候群(過敏性腸炎)と似たような症状の病気は多く、潰瘍性腸炎や大腸がんなどでは急速な体重減少がみられます。

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)の原因が知りたいです。

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)が発生する原因の最たるものはストレスであると考えられています。ストレスを起因として腸の運動をコントロールする自律神経に影響が及び、異常が起こると考えられているのです。
感染性胃腸炎が原因で過敏性腸症候群(過敏性腸炎)が起こるケースも注目されています。
過敏性腸症候群(過敏性腸炎)と他の腸の病気を明確に区別するためには、内視鏡検査などを受けて可視的・器質的な異常がないかをチェックする方法が有効です。
過敏性腸症候群(過敏性腸炎)は器質的な異常はないため、内視鏡検査などで異常が見当たらないにもかかわらず下痢や便秘などの便通異常が継続して起こる場合に疑わしいと判断できます。

どのような人がなりやすいのでしょうか?

日本消化器病学会によると、日本人のおよそ10%の人がかかっているとされています。
中でも20代女性や30代・40代の働き盛りの世代に多い傾向があるといわれています。ストレスの多い現代社会で活躍する世代に多くみられるということは、過敏性腸症候群(過敏性腸炎)の原因の主たるものがストレスであることがわかるでしょう。
過敏性腸症候群(過敏性腸炎)になりやすい性格には、以下のような傾向が挙げられます。

真面目な人

感情表現が苦手な人

うつ傾向のある人

腹痛や下痢・便秘の症状が表れるため、日常に影響を及ぼしやすい病気です。
その中で社会生活をこなさなければいけないため、症状に対する不安やストレスがさらに症状を悪化させるという悪循環に陥りやすいのも特徴です。

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)の診断と治療

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)を疑った場合は何科を受診すれば良いですか?

過敏性腸炎は腸及び胃に関連する病気であるため、消化器系の治療をしてくれる科に相談するのが適切です。
具体的には以下のような科で受診すると良いでしょう。

消化器科

内科

胃腸科

しかし、下痢や便秘の症状が現れたからといっても過敏性腸症候群(過敏性腸炎)にかかっているとは限りません。同様の症状が表れる病気は他にもたくさんあります。
専門的な診療を受けて、適切な科で治療を受ける必要がある場合も考えられます。

診断ではどのような検査をするのでしょうか?

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)の診断を受ける際には、自覚症状の有無を確かめる「RomeⅣ基準」が基本になります。具体的には、排便の回数や便の形状の確認・排便と腹痛の関係性の確認などの問診を行い判断するのが一般的です。
更に詳しい診断を必要とする場合には、以下のような検査を実施します。

血液検査

便潜血検査

大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)

これらの検査は、大腸がんや潰瘍性大腸炎など、過敏性腸症候群(過敏性腸炎)とは異なる他の病気にかかっていないかを判断するために実施します。
検査の結果、他の病気の疑いが発見された場合には、それぞれの病気に適応した治療を進めていくのが基本的な対策です。

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)の治療方法を教えてください。

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)の治療方法は、生活習慣の改善をベースに進めていきます。食事の内容を改善することや日常な運動習慣を取り入れつつ、薬物療法を組み合わせて治療効果を確かめていきます
食事療法では、辛い物など刺激物を避けながら、腸内環境を整えるための食物繊維を積極的に摂取しましょう。
運動療法では、日常に継続できる運動を行い、腸の蠕動運動を促進する事を目指します。
薬物療法では、神経伝達物質やセロトニンをコントロールして適度な便通を促します。さらに、便に含まれる水分の量を調節するための薬品を取り入れたり、乳酸菌製剤及び緩下剤などを用いたりする方法を採用することが多いです。
食事治療においては、低FODMAP食も有用とされています。FODMAP食とは、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖質の総称のことです。

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)の予後と予防

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)は完治するのでしょうか?

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)は、完治が難しいと考えられています。
症状が出てこないと思っていたら、ストレスなど何らかの要因により症状が再発することもあるでしょう。
しかし、運動療法や食事療法に加え薬物を継続して摂取していたら、いつのまにか症状が表れなくなり治ることもあります。
。ストレスが原因として発症するケースが多い病気ですから、必要以上に神経質にならず気にしすぎないことも病気の症状を悪化させないポイントといえます。

放置するリスクを教えてください。

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)は、便秘など日常に起こりうる症状であるため、安易に考えて放置してしまう方も多いかもしれません。しかし、放置することで重度の合併症を招く恐れがあります。
いつもの事だからと放置するのではなく、慢性的な下痢や便秘、あるいはこれらを繰り返し発症している場合は早めに病院や診療所に行って相談することをおすすめします。
ドラッグストアなどで市販されている薬で下痢や便秘を抑えることはできるかもしれませんが、根本的な治療にはつながりません。

予防する方法はありますか?

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)を予防するためには、まずはストレスをため込まない生活を心がけることが重要です。
ストレス発散方法として飲酒やタバコを愛用する方も多いかもしれませんが、特に喫煙は過敏性腸症候群(過敏性腸炎)の発生因子と考えられており、かえって逆効果です。
日常に適度な運動を行い、基本的な食習慣を改善することが予防に最も効果があると考えられます。
食生活においては、乳酸菌や食物繊維を積極的に取り入れると効果がさらに高まります。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)は、下痢や便秘といった日常に起こりやすい症状を引き起こす病気であるため、軽視されがちです。しかし、他の合併症を引き起こす要因となるケースもあり、決して軽んじるべきではありません。
継続的に便通の関連で異常を感じている方は、早めに最寄りの病院などに相談にいきましょう。
発症を予防するためには難しいことは必要なく、バランスの良い食事や十分な休息・睡眠をとること、及び適度な運動をしてストレスをため込まないことが大事です。

編集部まとめ


過敏性腸症候群(過敏性腸炎)にかかっている人は意外に多いことが分かっています。本人に自覚がない方も多いといわれている病気です。

下痢や便秘などの症状は日常に起こるためいつもの事だと諦めている方でも、過敏性腸症候群(過敏性腸炎)にかかっている可能性があります。

現代社会特有のストレスの多い生活環境において、過敏性腸症候群(過敏性腸炎)は多くの方が経験する病気であると考えられます。少しでも胃腸に異常を感じた場合は、早めに相談することがおすすめです。

過敏性腸症候群(過敏性腸炎)の原因の多くは、ストレスであるといわれています。趣味をみつけて楽しむなど、ストレスをため込まない生活を心がけることが症状を予防するポイントとなるでしょう。

参考文献

過敏性腸症候群|e-ヘルスネット

過敏性腸症候群(IBS)ガイド|日本消化器病学会ガイドライン

過敏性腸症候群Irritable Bowel Syndrome:IBS|まつおか内視鏡内科

急に痩せる(体重減少)|かがみ消化器内科クリニック

過敏性腸症候群|さかきばらクリニック

長引く下痢・腹痛|名駅ファミリアクリニック

過敏性腸症候群の原因と治療方法|えどがわ橋内科・内視鏡クリニック

過敏性腸症候群(IBS)の改善に 低FODMAP食の進め方|セレキノンS 田辺三菱製薬

過敏性腸症候群(IBS)|大腸校門病センター 高野病院

過敏性腸症候群|森外科医院