新型コロナ「第8波に差し掛かったとみて間違いない」 全国的に感染者数が増加傾向
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は11月10日に岸田総理大臣と会談した後、記者団に対して「新しい感染の波に入りつつある」と述べ、懸念されている感染拡大の第8波に入りつつあるという認識を示しました。このニュースについて郷医師に伺いました。
監修医師:
郷 正憲(医師)
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。
新型コロナウイルスの第8波への対策の動向は?
新型コロナウイルスの感染拡大の第8波が警戒されていますが、対策の動向を教えてください。
郷先生
新型コロナウイルスの第8波を警戒する動きは、ここ最近でかなり活発になっています。11月9日に新型コロナウイルス対策を助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、11月8日までの1週間で確認された全国の新規感染者数が前の週と比べて1.4倍に増えたことが報告されました。
この専門家会合の翌日には、専門家会合の脇田座長と政府分科会の尾身会長らが総理大臣官邸を訪れて岸田総理大臣と会談しました。岸田総理との会談では、感染者数の増加傾向が全国的に続いて医療体制のひっ迫が起こり得ることを伝え、若い世代へのワクチン接種促進策や医療提供体制を維持する重要性などについて話し合ったと報道されています。会談が終了した後、メディアの取材に対応した尾身会長は「全国的にみて、スピードの差はありつつも感染は拡大傾向にある。新しい波に入りつつあると言ってもいいのではないか」と、感染拡大の第8波に入りつつあるという認識を示しました。
さらに翌日の11月11日には政府分科会が開かれ、第8波への備えとしてまとめた新たな対応方針を了承しました。この新たな対応方針について、後藤新型コロナ対策・健康危機管理担当大臣は「レベルの見直しなどは、速やかに都道府県に示したい。新規感染者は全国で増加傾向にあり、地域によって大幅に増加しているところもある。都道府県には、発熱外来やオンライン診療、健康フォローアップセンターの拡充などの準備をお願いしたい」と述べています。
新たな対応方針とは?
新型コロナウイルス感染症対策分科会が了承した新たな対応方針について教えてください。
郷先生
新たな対応方針では、これまで5段階あったレベルのうち、感染者がいないレベル0をなくして4段階にしました。
レベル1は「感染小康期」と位置付けられ、病床使用率は0~30%が目安で医療への負荷が小さい段階になります。
レベル2は「感染拡大初期」で、病床使用率は30~50%ほどとされています。発熱外来で患者が急増して負荷が高まり始める段階で、感染者が急速に増え始めることで会社などの職場でも欠勤者が増え始め、業務を続けるのに支障が生じるケースも出てくるとされています。
レベル3は「医療負荷増大期」で、第7波のような医療への負荷が高まっている状態です。病床使用率や重症病床の使用率はおおむね50%を超えるのが目安とのことです。また、レベル3では都道府県が対策強化宣言を出して、症状がある場合の外出自粛や大人数の会食への参加見合わせなどを要請できるようになります。
レベル4は「医療機能不全期」とされ、病床使用率や重症病床の使用率がおおむね80%を超えるのを目安としています。膨大な数の感染者が出て発熱外来や救急外来で受け入れきれなくなり、一般の外来にも患者が殺到して救急車を要請しても対応できないなど、通常医療を含めた医療全体がひっ迫した状態が想定されています。また、レベル4は社会インフラの維持にも支障が生じる可能性があり、多くの医療従事者が欠勤することで入院医療もひっ迫することが想定されています。レベル4に移行しつつあると判断された場合、都道府県は医療非常事態宣言を出して出勤の大幅抑制や帰省・旅行の自粛、イベントの延期などの要請が可能となります。
「第8波に入りつつある」という認識への受け止めは?
警戒されている「第8波に入りつつある」という認識を尾身会長が示していますが、この認識への受け止めを教えてください。
郷先生
第7波の感染状況を鑑みて、感染者の全数把握という方針は改められ、一部の患者のみを把握することになりました。具体的には、「65歳以上の患者」「入院を要する患者(診断時、直ちに入院が必要でない場合であっても基礎疾患などによって入院の必要性が生じる可能性があると判断される場合も含む)」「妊娠中の患者」「重症化リスクがあり、かつ新型コロナウイルス治療薬の投与、または新たに酸素投与が必要と判断される場合」のみを報告することになりました。そのため、現在発表されている感染者数の報告数は以前の数値より少なく報告されることになります。それにも関わらず、この2~3週間ほどは全国的に前週の同じ曜日よりも感染者数が多い日が続いていることに加え、北海道に至っては過去最高の感染者数を記録するようになりました。
感染者数・増加数ともに見ても、今後さらに感染者数が増えると予想されるので、第8波の入り口に立ったと考えて間違いないでしょう。多くの人がワクチンを接種して重症化リスクが低下したとはいえ、ワクチン未接種の人もいますし、ワクチン接種をしていても基礎疾患などから重症化するリスクを持っている人もいます。そのような人たちに感染させないようにするために、経済活動を改善させながらも感染対策をおこなっていくことが必要になるでしょうから、第8波に入ったということを国民一人ひとりが認識するべきであると考えます。
まとめ
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が感染拡大の第8波に入りつつあるという認識を示したことが今回のニュースでわかりました。新しい対応方針も了承されるなど対応も進む中、国民全体で第8波への警戒意識をしっかりと持つことが重要になりそうです。
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