子宮頸がん予防のHPVワクチンの種類を医師が解説 2価・4価・9価の3種類の違いは

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厚生労働省が2013年から8年もの間、積極的な接種推奨を差し控えていた「子宮頸がんワクチン」が、昨年末から「接種勧奨」となりました。今回は、「子宮頸がん予防のHPVワクチンの種類・2価・4価・9価の3種類の違い」について、産婦人科医の村上雄太先生(GYNメディカルグループ 池袋クリニック)に話を聞きました。

子宮頸がんとHPV(ヒトパピローマウイルス)の関係は? ワクチンで予防することはできる?

編集部

子宮頸がんとは、どんながんなのですか?

村上先生

子宮頸部にできるがんのことで、子宮がんのうちおよそ7割が子宮頸がんです。子宮頸部とは、子宮から腟へと細長く突き出たような部分をいいます。年間約1万人の女性が発症している(※)と報告されており、特に最近は20~30歳代の若い女性の患者さんが増えてきています。

※国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス」

編集部

どのような症状が出るのですか?

村上先生

初期には症状のない方がほとんどですが、時折、不正出血や性行為による出血、おりものの増加などが見られることがあります。進行してしまうと、下腹部痛や腰痛などさまざまな症状が見られます。

編集部

原因はわかっているのですか?

村上先生

子宮頸がんにはヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルスと強い関連があります。子宮頸がん患者のほとんどがHPVに感染しており、因果関係があるとされています。ごく稀な例外ケースを除くと、「HPVに感染することが子宮頸がんの原因である」と言って良いでしょう。

編集部

ヒトパピローマウイルス(HPV)とはなんですか?

村上先生

HPVは、皮膚や粘膜に感染するウイルスで、100以上の種類があります。粘膜に感染するHPVのうち、子宮頸がんの患者から検出されているのが「高リスク型HPV」と呼ばれる15種類のウイルスです。この「高リスク型HPV」は子宮頸がん以外にも、中咽頭がん、肛門がん、腟がん、外陰がん、陰茎がんなどにも関わっていると考えられています。「高リスク型HPV」は主に性行為で感染します。

HPVワクチンとは? 2価・4価・9価、厚生労働省で承認されている子宮頸がんワクチンの種類と違いを教えて

編集部

子宮頸がんを防ぐ方法はありますか?

村上先生

HPV自体は、性的接触のある女性の半数以上が、一度は感染するとされている比較的一般的なウイルスです。感染しても、約90%の方は、2年以内に自然に排除されますが、長期的に感染が続くと子宮頸がんのリスクが高くなります。このウイルスの持続感染を防ぐのがHPVワクチンです。合わせて、子宮頸がん検診を定期的に受けることで、異常を早期発見することができます。

編集部

HPVワクチンについて、もう少し教えていただけますか?

村上先生

2022年現在、小学校6年~高校1年相当の女子は、予防接種法に基づく定期接種として、HPVワクチンを接種することができます。公費で受けられるHPVワクチンには「サーバリックス(2価HPVワクチン)」と「ガーダシル(4価HPVワクチン)」の2種類があり、同じ種類のワクチンを、6ヶ月の間に合計3回接種することになっています。どちらを接種するかは、接種する医療機関に相談してください。

編集部

シルガード9(9価HPVワクチン)というのもあると聞きました。

村上先生

シルガード9(9価HPVワクチン)は、2014年12月に米国で最初に承認され、2015年2月にカナダ、2015年6月に欧州連合(EU)やオーストラリアで承認されるなど、海外では既に一般的なワクチンです。日本では2021年2月から販売が開始されているため、任意で接種することは可能ですが、費用は全額自己負担となります。また、万が一、接種によって健康被害が生じた場合は、「予防接種健康被害救済制度」の対象にはならず、「医薬品副作用被害救済制度」の対象となります。

編集部

HPVワクチンはどのくらいの予防効果があるのですか?

村上先生

定期接種の対象年齢(小学校6年~高校1年相当)でみると、子宮頸がん全体のおよそ50~70%の原因となっているHPV2種類(16型と18型)の持続感染に予防効果があります。日本および海外で行われた調査では 、HPVワクチンを接種することで、子宮頸がんの「前がん病変」を予防することが示されています。

HPVワクチンの安全性、副反応は? 子宮頸がん予防に無料で接種できる人もいるって本当?

編集部

HPVワクチンによる副反応はありますか?

村上先生

そうですね。主な副反応として、接種部位の痛みや腫れ、かゆみ、筋肉痛や関節痛、頭痛、発熱などがあります。これらについても、ワクチンの種類によって若干の差がありますので、医療機関に確認してみてください。また、ごく稀に、ワクチン接種後のアナフィラキシーやギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎などの報告がありますが、これらは、ワクチン接種との明確な因果関係はないとされています。

編集部

もし、副反応がみられた場合、どうしたら良いですか?

村上先生

ワクチン接種後、上記の副反応が疑われる症状が現れたら、まずは接種を行った医療機関にご相談ください。また、都道府県ごとに、ワクチン接種後に生じた症状の診療を行う協力医療機関もあります。HPVワクチンは合計3回接種しますが、1回目や2回目の接種後に気になる症状が現れた場合、それ以降の接種をやめることも可能です。

編集部

ワクチン接種の費用はどのくらいかかりますか?

村上先生

医療機関によって差はありますが、自費の場合は、1回あたり約1万5000~2万円です。しかし、先ほど述べた小学校6年~高校1年相当の女子は、予防接種法に基づく定期接種として、無料でワクチンを接種することができます。また、厚生労働省が2013年から積極的な接種推奨を差し控えていたために、接種機会を逃した方への接種(キャッチアップ接種)も公費で行っています。ホームページなどで確認してみてください。無料になるのはあくまでも「サーバリックス(2価HPVワクチン)」もしくは「ガーダシル(4価HPVワクチン)」の場合で、「シルガード9(9価HPVワクチン)」については、年齢にかかわらず自費となり、全3回で約10万円ほどとなります。

編集部

最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。

村上先生

子宮頸がんは、ウイルスとの関連が示され、ワクチンで予防できる唯一のがんです。オーストラリアでは、男子も含めてワクチンを接種することで、子宮頸がんの羅患率を大きく減らすことに成功しています。自分の身体を守る手段として、ワクチンをもっと知ってください。特に9価の予防効果が高く、過去に2価や4価のワクチンを打った方も重ねて接種できますので、自費にはなりますが、検討してみてください。また、ワクチンを打って終わりではなく、定期的にがん検診も受けられるとさらに良いですね。

編集部まとめ

「今や、がんは不治の病ではない」「医学の進歩で、治療が可能である」と聞きますが、治療のみならず、予防も可能ながんがあるのですね。自分の身体を守るため、また、パートナーの身体を守るためにも、ワクチンについて知る必要があると感じました。

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