「更年期障害」の診断基準やセルフチェック、ならないための対策を医師が解説

写真拡大 (全4枚)

「そろそろ更年期かも……」と思いながらも、「疲れやすさ」や「寝つきの悪さ」などが果たして「更年期による症状」なのかどうかわからないと悩んでいる人は多いのではないでしょうか。今回は「更年期障害のセルフチェックや診断基準」について、Medical DOC編集部が産婦人科医の井野先生(江戸川橋レディースクリニック 院長)にお話を伺いました。

更年期障害の症状

編集部

更年期による症状には、様々なものがあると伺いました。

井野先生

はい。閉経前から閉経後にかけて、女性ホルモンである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の分泌が徐々に減り始め、それによって心身の不調が起こるのが「更年期障害」です。原因は共通しているのですが、症状は多岐に渡ります。具体的には、ほてり、のぼせ、発汗などの「ホットフラッシュ」が特徴的で、そのほかにも頭痛、動悸、肩こり、疲労感、めまい、イライラ、不眠などがあり、程度もまた人によって異なります。

編集部

そうなると、不調を感じても、年齢のせいなのか更年期による症状なのかわからなくなりそうです。

井野先生

そうですね。症状の種類も強さも人によって違うので、「気のせい」「年齢のせい」と我慢してしまう人も多いかもしれません。しかし、我慢や無理を続けていると、ますます症状がひどくなることも考えられますので、不調を感じたらまず受診することをおすすめします。

編集部

頭ではわかっていても、「疲れやすい」などで受診するのには少し抵抗があります。

井野先生

「更年期」とは閉経の前後5年ずつ、一般的に45歳~55歳くらいまでの時期を指しますが、この年齢の女性は、子どもの進学や就職、親の介護などのライフイベントと重なり多忙になることも多く、何かあっても「最近忙しかったから」などと、ご自身で解釈してしまう人も少なくありません。自分の症状が更年期によるものなのかわからない、迷ってしまう人には「更年期障害のセルフチェック」がおすすめです。

更年期障害のセルフチェック

編集部

更年期障害が自分でチェックできるのですか?

井野先生

はい。実際に多くの医療機関で使われている「簡易更年期指数(SMI)チェック」というのがあります。下記の10項目について、症状をそれぞれ点数化し、点数によって更年期による症状を評価するものです。

1.顔がほてる
2.汗をかきやすい
3.腰や手足が冷えやすい
4.息切れ、どうきがする
5.寝つきが悪い、または眠りが浅い
6.怒りやすく、すぐイライラする
7.くよくよしたり、憂うつになることがある
8.頭痛、めまい、吐き気がよくある
9.疲れやすい
10.肩こり、腰痛、手足の痛みがある

編集部

自分でチェックできるのですね。

井野先生

そうですね。ただし、「たくさんあてはまったから更年期障害」「チェックがあまりつかなかった、点数が低かったから大丈夫」というわけではありません。あくまで目安として参考にしていただき、何かあったらやはり医師に相談するようにしましょう。

編集部

医療機関では血液検査などで診断されるのですか?

井野先生

少しややこしいかもしれませんが、「更年期」にあたるかどうかは、血液検査で判断できます。閉経に伴い急激に減少する女性ホルモン「エストロゲン(卵胞ホルモン)」などのホルモン値を測定することで、ご自身が「更年期」かどうかがわかるのです。

編集部

では、更年期障害の判断基準はなんでしょうか?

井野先生

更年期障害に明確な診断基準はなく、更年期の女性が心身の不調をきたし、日常生活に影響を及ぼすようになった状態を更年期障害と判断しています。しかし、先ほどのチェックにもありますが、更年期の女性に疲れやすさや動悸などがある理由が必ずしも更年期障害というわけではありません。例えば、甲状腺の機能障害などでは、更年期障害と似たような症状が出ることも多いので、医療機関ではそうした「ほかの病気」が隠れていないかも確認しています。このあたりは、セルフチェックだけでは判断しにくいので、やはり医療機関に相談していただくのを推奨しています。

更年期障害にならないためにはどうしたらいいの? 予防法はあるの?

編集部

更年期障害について、予防法や対策などはありますか?

井野先生

閉経に伴うホルモンバランスの変化は誰にでも起こるので、完全に予防するのは難しいかもしれません。ただし、日常生活を整えることで症状の改善が期待できるとも言われています。具体的には、適度な運動や十分な睡眠、ストレスをためない、など、更年期障害に限らず、昔から言われている「健康な生活」を意識してみましょう。適度な運動をすることで自律神経が整い、イライラなどの精神的な症状の予防にもつながります。特別なことをする必要はなく、まずはウォーキングなどの有酸素運動を少し取り入れることから始めてみましょう。更年期は代謝が落ちがちなので、カロリー管理や運動はとても大切だと思います。

編集部

男性は更年期障害にならないのですか?

井野先生

一般的に更年期障害は、「閉経に伴う女性特有の症状」という認識ですが、近年では加齢による男性ホルモンの減少のために起こる「男性更年期障害」も注目されています。発症年齢や症状なども類似しているものが多く、先ほどの予防法や対策も共通していると言われています。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

井野先生

更年期は誰でも通る道で、極度な不安に陥る必要はありません。しかし、だからといって「みんな同じだから」と、つらさに耐える必要もありません。専門家に相談して、治療すれば楽になる症状もたくさんありますので、不調があったら我慢せず受診してください。ほかの疾患が隠れている場合もありますので、そういった意味でも一度、検査をしてみるといいのではないでしょうか。

編集部まとめ

どんな症状があれば更年期障害と診断されるのか、産婦人科医の井野先生にお話を伺いました。更年期障害について理解が深まりましたし、医療機関で実際に使われている「簡易更年期指数(SMI)チェック」などは大変参考になりました。

近くの婦人科を探す