「喘息」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
喘息とは、何らかの原因により気道に慢性的な炎症が生じ、幅広い年齢層で起こる病気です。咳・疸・喘息発作などの症状がおこります。
身近な病気ではありますが、完治させることが難しい病気とも言われています。原因や治療方法など、詳しく把握しておきたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、喘息がどのような病気なのかを解説します。検査・治療方法・日常生活で気をつけることもご紹介するので、参考にしてください。
喘息の特徴
喘息の症状を教えてください。
この病気の主な症状としては、次のようなものが挙げられます。咳疸
息苦しさ
喘鳴
胸苦しさ
喘鳴とは、呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューと音が出る症状です。症状の重さは、個人差がありますが、症状は発作的に現れます。
そして、夜間~早朝、季節の変わり目に発症しやすい傾向です。そしてあまりにも苦しく、急に動けなくなったり胸の痛みを感じたりするといった症状も現れることがあります。
何が原因で起こるのですか?
この病気の主な原因は、次のようなアレルギーによるものと、アレルギー以外によるものとに大別されます。アレルギーによる喘息は、次のような物質が原因です。ダニ
ハウスダスト
カビ
ペット
花粉
食物
特にハウスダストは、アレルギー由来の中で最も多い原因です。ペットの抜け毛・フケも、ダニが増える原因ともなります。
アレルギー物質は、非常に細かく身近に大量に存在しており、誰しも発症する危険性があります。アレルギー以外の原因としては、次のようなものが代表的です。
ウイルス
タバコ
肥満
過労やストレス
大気汚染
気温・気圧
アルコール
風邪・インフルエンザなどのウイルスにより、炎症を起こす可能性があります。すでに喘息を患っている場合は、悪化の原因ともなります。また、アスピリンなどの解熱鎮痛剤の一部にも、喘息の原因となる物質を含む場合があるため、注意が必要です。
タバコは、身体への有害物質が含まれています。気道の炎症を引き起こし、悪化させる可能性があります。そして副流煙による受動喫煙も、大きな原因です。
肥満との関係は気にされない方が多いですが、アレルギー以外の喘息の場合、肥満を原因とするケースは多いです。肥満度が高くなると発症リスクが高く、悪化しやすいことがわかっています。肥満により気道が狭くなることと、脂肪細胞から分泌される物質が関わっていると考えられているためです。
過労やストレスも原因のひとつです。抵抗力を弱める原因となり、風邪・インフルエンザへの感染を招きます。その結果、喘息を発症するのです。また、ストレスによって自律神経が乱れると、気道が収縮することがあります。このことも喘息の発症リスクを高めます。
PM2.5などの大気汚染によっても、引き起こされる可能性が高いです。汚染物質によって気道が刺激され、炎症が起こるために発症します。
気温・気圧が急激に変動すると、気候が不安定となり発症しやすい傾向です。また、寒暖差も生まれることで風邪をひきやすくなり、発症リスクが高まります。
アルコールとも関係が深いです。摂取したアルコールは、体内に入るとすぐさまアセトアルデヒドに分解されます。この物質は有害物質であり、発作を誘発する可能性があるのです。
喘息と似た他の病気はありますか?
この病気と似た他の病気は、非常に多くあります。次のような病気が代表的です。風邪
インフルエンザ
百日咳
マイコプラズマ
結核
急性気管支炎
肺がん
胃食道逆流症
後鼻漏
百日咳では、2週間以上の発作性の激しい咳を伴います。またマイコプラズマとは、高熱を伴う病気です。
急性気管支炎は、風邪やインフルエンザにより発症することがあります。後鼻漏は、鼻水が気管に流れる病気で、他の病気と同様の症状を伴います。
このように、非常に多くの病気が、似たような症状を発症するのです。また、風邪やインフルエンザなどの感染症がきっかけで喘息を発症することもあるため、注意が必要です。
喘息の検査と治療
喘息が疑われたら何科を受診すればよいですか?
この病気はさまざまな原因によって発症することがあり、さらに似たような症状を示す他の病気も多数あります。そのため、どの診療科目を受診すればよいのかわからないと悩んでいる方もいるかもしれません。基本的に咳が長引くなど、喘息が疑われる場合は、呼吸器内科を受診しましょう。その中でも、特に専門に扱っている医師が所属している病院だと、より安心感は高いです。
あるいは、アレルギー科でも問題ありません。アレルギーが原因で発症していることもあるため、アレルギー科で原因の特定が行えます。
喘息ではどのような検査をしますか?
一般的に、検査は次のような方法です。問診
呼吸機能検査(スパイロメトリー)
呼気一酸化窒素濃度測定検査
血液検査
問診では、症状の内容や重症度、治療薬の使用状況などや、どれだけの症状があり、コントロールできているかも確認します。また一日のうちどの時間帯がつらいか(夜間から明け方)を聞きます。
呼吸機能検査とは、スパイロメーターと呼ばれる機械を使用して、この病気の重症度を調べる方法です。スパイロメーター検査はコロナ禍では感染のリスクがあり、つかいにくい一面があります。
呼気一酸化窒素濃度測定検査は、気道の炎症の程度を調べる方法です。気道がアレルギーなどによって刺激を受けると、インターロイキン4・インターロイキン13と呼ばれる物質が作られます。これらの物質が炎症を引き起こすのですが、同時に大量の一酸化窒素を生成します。この検査方法では、生成された一酸化窒素を測るため、気道の炎症の度合いを把握することができるのです。
血液検査では、好酸球数・総IgE値・抗原特異的IgE抗体などを測定します。好酸球数は、値が大きいほど、気道の炎症が起きていることになります。総IgE値は、アレルギーがあることを示す値です。抗原特異的IgE抗体を見ると、原因となるアレルギー物質を特定できます。
喘息の治療方法を教えてください。
この病気の治療方法としては、次の二つの治療薬を組み合わせて進めていきます。長期治療薬
発作治療薬
長期治療薬とは、発作症状のコントロールを目指して、継続的に使用する薬です。気道の炎症を抑えたり気管支を拡げたりする効果を持ち、重症度に合わせて使用します。薬のタイプには、吸入薬・飲み薬・貼り薬・注射薬があります。
ただ吸入薬の副作用には動悸などの症状があります。量がどんどん増えてしまうと、不整脈が起きてしまいます。使いすぎないように決められた回数は守りましょう。またステロイドを含む吸入薬は口腔内カンジダ予防のため使用後のうがいを忘れずにしてください。
また発作治療薬とは、発作時に服用する薬です。症状を鎮める目的で、短期的に使用します。よく用いられる薬としては、素早く気管支を拡げる効果を持つ薬です。長期治療薬としては、次のようなものが挙げられます。
吸入ステロイド薬
長時間作用性β2刺激薬
ロイコトリエン受容体拮抗薬
長時間作用性抗コリン薬
また、発作治療薬としては、次のような薬が代表的です。
短期化作用型β2刺激薬
経口ステロイド薬
点滴タイプのステロイド薬
上記の薬を、症状の状況に応じて使用します。作用の異なる吸入薬の組合わさった合剤もあり、どの薬をどのタイミングで使うかは、医師へ相談のもと指示に従って使用しましょう。
喘息は完治しますか?
喘息は、現在の医学では完治が不可能な病気です。理由は、体質に由来する病気のためです。一度治ったように感じるほど症状が治まることもありますが、数年後に再発する可能性があります。しかし、適切な薬の利用により、コントロールは可能です。症状を最小限に抑え、健康な人と変わらない生活をおくることも不可能ではありません。
日常生活で気をつけること
日常生活では何に気をつければよいですか?
日常生活で気をつけるべき点は、自分がアレルギー反応を示すアレルギー物質に触れないようにすることです。アレルギーによって発症する場合、どのような場所に行っても、発作的に発症する可能性はあります。そのため、自分にとってのアレルギー物質を把握して、極力触れないようにすることが必要です。
また、季節の変わり目などで、風邪やインフルエンザなどにかかることも、発症のリスクを高める要素です。風邪を引かないように心がけるなど、些細なことでも、日常生活をおくるうえで注意しましょう。
発作時の対応を教えてください。
万が一、発作が起きた際には、落ち着いて対処が必要となります。対応の仕方は、発作症状の度合いによって異なります。まず発作が軽度である場合、まずは落ち着いて薬を吸入しましょう。この状態では、息苦しさはありますが、まだ軽度な状態です。会話もできて歩行は普通~困難程度で意識は正常です。
しかし、症状の改善が見られない場合は、20分後に再度薬を吸入します。発作症状が中程度の場合、横になれない息苦しさを感じ、かろうじて歩ける程度や、会話が困難の可能性があります。そのため、救急外来を受診するようにしましょう。
発作が重症の場合は、動けないほど苦しく、歩けず意識も朦朧とし始める可能性があります。その場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
喘息の予防法はありますか?
この病気の予防方法としては、次のようなものが効果的です。ダニ対策を行う
喫煙を避ける
感染症を防ぐ
飲酒を避ける
食生活に注意するストレスをためない
心肺機能を上げる
ダニはアレルギーの中でも大きな原因です。そのため、ダニが増えないように、高温多湿・餌・産卵できる場所などの条件が整わないようにしましょう。適度な掃除や換気が重要です。
喫煙は、本人だけでなく、受動喫煙も対象です。徹底して避けましょう。
感染症も症状悪化の原因となるため、流行時期は手洗いやうがいで予防しましょう。マスクをすることで、アレルギー物質や感染症から身を守ることが可能です。
飲酒や食生活にも注意しましょう。アルコールや肥満は、発作を誘発するため、摂取量と食事バランスが非常に大切です。ストレスも発作原因となるため、ためすぎないようにしましょう。
適度な運動で、ストレス発散や心肺機能をアップさせることも、有効な予防方法です。
最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。
喘息は、誰しもかかる可能性がある病気です。アレルギーやその他の原因から、気道が炎症を起こして、発症する可能性があります。多少の咳であれば問題ないと思う方も多いですが、悪化すると呼吸が困難になり非常に辛いです。完治は難しいですが、コントロールできる病気です。正しい予防方法を身につけ、治療薬を利用できれば、発症のリスクは抑えられるでしょう。自己判断せず、少しでも異変を感じたら医療機関へ相談し、症状の改善に務めてください。編集部まとめ
喘息は身近な病気ですが、症状の内容や重症度も幅広いため、悪化した場合は非常に負担の大きい恐ろしい病気です。
しかし、治療薬を使えば、症状をコントロールし改善させることは十分できます。また、予防にも気をつければ悪化も防げます。
そのためにも、正しい対処方法や予防方法を身につけておくことは大切です。少しでも異変を感じたら、医療機関に相談し適切な対処を行いましょう。
参考文献
喘息とは?|アレルギーi アレルギーに関する情報サイト
喘息(ぜんそく)の原因|くすりと健康の情報局by第一三共ヘルスケア
ぜんそくの原因|オムロン公式サイト ネブライザーねっと
気管支喘息は何科に行けばよい? 検査内容と診断のポイント|Medical Note
咳が止まらない時は何科の病院に行けばよいか|医療法人社団ファミリーメディカル 横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック
喘息の検査|アレルギーi アレルギーに関する情報サイト
喘息は完治する?しない?|医療法人社団ファミリーメディカル 横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック
気管支喘息|東海大学医学部付属八王子病院
ぜんそく発作の対処法|オムロン公式サイト ネブライザーねっと
喘息(ぜんそく)の予防|くすりと健康の情報局by第一三共ヘルスケア
喘息(気管支喘息)