【闘病】10年片頭痛と思っていた痛みは「脳動静脈奇形」によるものだった

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頭痛がしたら、市販薬で乗り切ろうとは考えず、「必ず専門性の高い医療機関で精密検査を」と呼びかけるアートペイントのアーティストとして活動している宮崎綾音さん。そんな本人は、脳血管の奇形があったにもかかわらず、最近まで片頭痛とみなされていたそうです。そして、手術を受けた今でも、原因不明の脳内にできた水ぶくれに悩まされています。現代医療でも解決しきれない病気があるということと、外見からはわからない闘病者への向き合い方について、貴重な話を聞いてみましょう。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年11月取材。

体験者プロフィール:
宮崎 綾音

大阪府在住、1993年生まれ。家族構成は両親と兄弟3人との6人暮らしで、診断時、飲食業と工場に勤務していた。小学生高学年から頭痛などが続いていたものの、脳動静脈奇形と判明したのは2015年になってから。その後、放射線手術を受けたが、いまだに脳内の浮腫や合併症に悩まされている。現在はアートペインターとして活動中。

記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

頭痛なのに、脳の病気が疑われていなかった

編集部

「脳動静脈奇形」とは、なかなか耳慣れない病気ですね?

宮崎さん

10万人に1人の割合で発症し、脳の動脈と静脈の間にイレギュラーな血管が生えてしまう病気だそうです。このイレギュラーな血管はグルグルした形状をしていてもろく、脳内出血のリスクがあるそうです。また、本来の脳細胞に血液が届きにくくなるため、心臓を必要以上に働かせてしまうのだとか。ですから、肥大型心筋症や心不全も考えられます。実際、脳内出血をしてからこの病気が見つかるパターンも多いと聞きました。

編集部

診断が付く前から自覚症状はあったのですか?

宮崎さん

小学校の5年生くらいから頭痛がしていたものの、当時は片頭痛と診断され、お薬を渡されていました。ところが社会人になった後年、「カナズチで殴られるような頭痛と、視野を失うような目のチカチカ」が顕著になってきたため、救急車を呼んでもらいました。そのとき、たまたま搬送先が脳外科を得意としている医療機関で、なおかつ、大学病院から通っている専門性の高い先生の診察日だったので、詳しく診てもらうことができました。

編集部

そこで、脳動静脈奇形の診断が付いたわけですね?

宮崎さん

いいえ。その先生いわく、「大学病院じゃないと詳しい検査ができないので、明日から転院するように」とのことで、大学病院でやっと診断が付きました。それまでの約10年間、ずっと片頭痛としての治療を受け続けてしまったということです。

編集部

医師からはどのような説明がありましたか?

宮崎さん

脳内のグルグルした血管を「ナイダス」というそうなのですが、まだ小さくて、初期に含まれるとのこと。ですから、頭を開いて摘出せずとも、体外からの特殊な放射線治療でなんとかなりそうとのことでした。ただし、この特殊な治療方法は別の専門性の高い病院でしか扱っていないらしく、再び転院することになったという経緯です。

できるはずのない水たまりが出現

編集部

その後、やっと脳動静脈奇形としての治療がはじまったわけですね?

宮崎さん

はい。まず、手術までの注意点として、(1)睡眠不足にならないこと、(2)ストレスは厳禁、(3)飲酒・喫煙のような血管に負担を与えてしまう行為も禁止との指示を受けました。そのうえで手術に臨んだわけですが、ナイダスを放射線で焼きつぶすという施術内容だそうです。うまくいけば、その後3~4年をかけて、ナイダスは縮小していくということでした。

編集部

生活や通学に支障はあったのでしょうか?

宮崎さん

頭痛のひどいときは、満足に通学や通勤ができません。眠ることも難しいですね。外見的にはいたって普通なので、「ズル休み」と受けとられるのがつらかったです。一方、放射線治療の入院期間は2週間ほどで、後は通院で済みました。もっとも、大事を取って、それまでの勤務先は辞めさせていただきました。

編集部

治療によって症状は改善されてきましたか?

宮崎さん

じつは、術後の経過観察が3年ほど良好で頭痛も合併症も出なかったため、私のほうから通院をやめてしまったのです。ところが今年になって、再び諸症状が現れてきました。恥を忍んで調べてもらったところ、今度は、「ナイダスのあった場所に、出血ではなく、水がたまっているようだ」とのこと。脳動静脈奇形手術の予後にはみられない症例で、「原因不明」と言われました。とりあえず、むくみ対策の漢方薬で対処していくことになったものの、水ぶくれは大きくも小さくもなっていません。

編集部

再び、頭痛や睡眠不足に悩まされる生活に戻ってしまったと?

宮崎さん

はい。加えて、てんかん発作が起きるようになりました。睡眠薬は吐き気がして眠れないですし、てんかんの発作止め薬は意識がボーっとしてしまうので、むしろ投薬治療によるストレスを感じています。「ストレスは厳禁」という注意を受けていましたが、どうにもなりません。

我々の常識こそが、じつは隠れたストレスである

編集部

改めて、現在の心境を伺わせてください。

宮崎さん

同じ脳内出血である「くも膜下出血」の死亡率は50%だそうなので、やはり「死に直面している怖さ」がありました。加えて、この病気に詳しい先生でないと、なかなか見つけられないそうです。その意味で、救急搬送以後の経緯は“ラッキー”でした。ずっと片頭痛の治療が続きかねなかったことを考えると、恐ろしく思えます。みなさんも頭痛がしたら、年齢や程度問わず、精密検査(頭部MRI検査やCT検査など)してみることを推奨します。

編集部

自主的な検査をする目安として、遺伝は関係ありそうですか?

宮崎さん

脳動静脈奇形の場合、遺伝要因はないそうです。もし、がんや糖尿病なら、家族歴がひとつの目安になるでしょう。しかし、頭痛に関して言えば、「あれこれ考えず、すぐ検査」という印象ですね。もし「原因不明」と言われたら、ほかの病院を再受診してでも、納得いくまで調べきっておきましょう。

編集部

若い同世代の女性に向けても一言お願いします。

宮崎さん

循環器疾患は種類によって、妊娠が難しくなります。私の場合、出産時に息むと、脳血管が破裂するかもしれないと言われていました。脳動静脈奇形の好発は20~30代だそうですから、妊娠・出産の時期と関わりますよね。なおのこと、頭痛や片頭痛で片付けず、怖い病気を洗っておいてはいかがでしょうか。もちろん、出産は女性の義務ではありませんので、ご自身の健康管理の一貫として捉えてください。

編集部

つらさ・悩みを共有してくれたキーパーソン、状況を変えた出来事などがあれば。

宮崎さん

母親の存在ですかね。病気にかかっている本人は、悩んだりへこんだりするのが当たり前です。しかし、患者を支える側の人が引いたらドミノ倒しになってしまうので、大変だったでしょう。「できることなら代わってあげたい」といつも言っていました。私自身、治療がつらくて、いつ治るともわからないので、「死んだほうが楽」というキツイ言葉をつい、投げかけてしまいました。反省しています。

編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

宮崎さん

私は病気を機に、考え方が大きく変わりました。じつは生活すること自体に、おおきなストレスが内在しています。人付き合い・世間体ほか、願望をかなえるための努力もストレスの一種ですよね。それよりも、「体をいたわることが優先」なのではないでしょうか。生活の糧にしても、「やりたいことをして稼ぐ」のが理想です。標準的に生きると案外、我慢を余儀なくさせられていて、その環境に慣れてしまいます。そんな現実に、病気が気づかせてくれました。

編集部まとめ

頭痛は身近な症状だけに、軽んじて捉えていたのかもしれません。「脳が含まれる頭の症状」という意味を、いま一度、振り返ってみましょう。そして、脳の怖い病気は、発見するのにも専門性が問われます。頭痛で悩む場合には、鎮痛剤に頼るだけではなく、一度は頭部MRI検査などの精密検査を受けることも考慮すべきでしょう。

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