片頭痛治療の新薬「エムガルティ」のメリット・デメリットとは? 薬剤師が解説
多くの人がその症状に悩んでいる片頭痛。症状が繰り返したり、長時間続いたりすることで生活に支障が出ている人も多いと思います。そんな片頭痛に対応する新しいタイプの片頭痛治療薬「エムガルティ」をご存じでしょうか。今回は新薬「エムガルティ」について、薬剤師の福田さんに解説していただきました。
片頭痛の新薬「エムガルティ」ってどんな薬?
編集部
エムガルティとはどんな治療薬なのですか?
福田さん
エムガルティとは、従来の片頭痛治療薬とは異なる作用を持つ新しい治療薬です。従来の内服タイプとは異なり、注射剤タイプの治療薬です。
編集部
注射剤タイプと聞くと、少し敬遠してしまいます……。
福田さん
そうですね。注射剤タイプは内服薬よりも服用のハードルが高いと思われがちですが、少ない回数の服用で症状を予防できるため、人によっては生活の質が向上します。「症状の回数減少」「発作時の痛み軽減」などの効果を兼ね備えており、従来の治療薬と比較して得られる効果の範囲が広くなっています。ただし、片頭痛症状が出ている人全てが適用になるわけではないので注意が必要です。
編集部
そもそも片頭痛と普通の頭痛の違いは何ですか?
福田さん
片頭痛とは、「頭部の片側だけが痛む」ことに由来しています。普通の頭痛に比べ、頭の左右どちらかだけ痛むことが多いのでその名が付きました。しかし、それでも片頭痛の約4割は頭全体に痛みが出るといわれています。
編集部
片頭痛にはどのような特徴があるのでしょう?
福田さん
片頭痛の症状は女性に多く見られ、痛みがズキンズキンと脈打つように痛む、持続時間が比較的短い、キラキラした光や閃輝暗点といった視覚的な前兆が見られる、発作が4~72時間持続する、日常生活に支障が出るレベルの痛みや吐き気が起こることがある、匂いや音に敏感になってしまうなどの特徴があります。通常の頭痛と比較して、特徴的な症状が見られることがわかります。原因ははっきりとは分かっていません。
エムガルティのメリット・デメリットとは?
編集部
エムガルティにはどんなメリットがあるのですか?
福田さん
エムガルティは月に1回のみ、医師による注射あるいは自己注射を行い、その後は何もする必要がなく楽に過ごすことができます。翌日には高い効果を得られ、慢性的な症状に悩む方やほかの治療薬で効果がない方にも効果が得られています。実際に、6カ月間使用した結果、症状の強さや日数が半減した割合は59%、75%減少した割合は33%、症状が全く出なくなった割合は11%という臨床結果が出ているほどです。そのほかにも急性期治療薬の使用頻度が減るといったメリットもあります。
編集部
反対に、エムガルティのデメリットはあるのですか?
福田さん
エムガルティは誰でも使用できる薬剤ではありません。過去3ヶ月の間で平均して1ヶ月に4日以上片頭痛がないと使用できないので注意が必要です。そして注射剤のため、飲む薬ではありませんが皮膚に針を注射して使用します。痛みが苦手な方にとっては不快感が出ますし、注射部位は人によってしこりなどが残る場合もあります。初回保険3割負担の場合は2万7099円、2回目以降保険3割負担の場合は1万3550円と高価であることもデメリットと言えますね。
編集部
従来の薬よりも新薬エムガルティを使用したほうが良いのですか?
福田さん
必ずしも誰もがエムガルティの使用が最適というわけではありません。なるべく服用の回数や手間を減らしたい方や、高いお金を払ってでも症状を少なくしたい方には適している方法でしょう。しかし、治療効果には個人差があります。従来の内服薬の方が片頭痛症状を抑えやすいという方もいます。自分にはどのような治療方法が合っているのか、ライフスタイルや経済的な状況とバランスを見て、医師としっかり相談しましょう。
エムガルティの正しい服用方法と注意点は?
編集部
エムガルティの正しい服薬方法を教えてください。
福田さん
エムガルティは1か月に1回、皮下に1本(初回のみ2本)注射します。注射部位は、基本的に腹部、大腿部、上腕部、臀部などです。注射直後は、アナフィラキシー反応の発生を確認するために15分~30分程度身体の様子を見る必要があります。
編集部
エムガルティは自分で注射をするのですか?
福田さん
初めのうちは医師が行います。ある程度のレベルの手技が必要になるためです。また、人によっては成分が体に合わず、アナフィラキシー反応が出ることがあり、そのような事態に備え、瞬時に処置が行えるように医師の目の前で行います。ただし、長期間服用しても問題がない方や、手技を正しく理解して適正使用ができる方は自己注射に切り替えることができます。
編集部
従来の片頭痛治療薬を一緒に使うことはありますか?
福田さん
エムガルティと従来の治療薬を併用することはあります。エムガルティは毎日使用することなく、片頭痛発作の発生予防や痛みの軽減を行います。しかし、それでも症状がひどい方の場合は、従来の片頭痛治療薬を追加使用します。従来の治療薬は、症状が出た時にすぐ服用しその症状を軽減する「片頭痛急性期治療薬」やそもそも発作の発生を予防する「片頭痛発作発生抑制薬」があります。どちらも内服薬が主流で、発作が出た直後に服用するか、発生以前に飲んでおくかという方法で使用します。
編集部
注意すべき点や副作用はありますか?
福田さん
エムガルティを服用する場合は、注射部位反応と副作用に注意しましょう。注射部位反応とは、注射を行った部位に腫れや赤みが出たり、しこりが残ったりすることです。一時的な症状で問題がないこともありますが、医師による確認が必要になります。副作用で頭痛が悪化する場合もあるので注意が必要です。また、薬の成分が体に合わないと、過敏反応が出てしまい、湿疹や吐き気、全身の痒みなどの症状が出ます。そのような場合は直ちに医療機関を受診してください。
編集部まとめ
新しい片頭痛治療薬エムガルティの正しい使用方法と、メリット・デメリットがあることが判明しました。それぞれのライフスタイルや経済状況によって、従来の治療薬との併用も考える必要があります。自分に最も適している片頭痛の治療方法を見つけるために、医師とよく相談をして治療に取り組んでください。
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