今季JリーグのMVPと新人王を独自選考。2022年のナンバーワンプレーヤー、そして新人でいちばんの活躍を見せたのは誰だったのか。ライター5人に選んでもらった。

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2022年のJリーグナンバーワンプレーヤーは誰か

MVPに挙がったのは4選手

杉山茂樹(スポーツライター)

MVP:岩田智輝(横浜FM)

 出場試合数計32。そのうち先発は31試合で、出場時間は2715分(追加タイム含まず)を数える。この数字は同じ横浜FMのGK高丘陽平を除くとチーム一だ。先発31試合の内訳(守備的MF12試合、センターバック19試合)に目を凝らすと、その多機能性が目に留まる。

 チームを後方から支えた好選手。一言で言えばそうなる。しかし、攻撃にも自然に絡むことができる、オールラウンダーとしての魅力も見逃せない。適性エリアが広い選手だ。

 ケヴィン・マスカット監督が交代枠5人制に準じ、アタッカー陣をローテーションで起用したのも、岩田の存在感を後押ししたことも事実。だが、この選手がいなければ優勝はなかった、最も替えが効かない選手という視点に立つと、やはり岩田が断トツナンバーワンになる。

小宮良之(スポーツライター)

MVP:水沼宏太(横浜FM)

 水沼は右サイドを中心に、テンポを作ることができた。横浜FMはスピード、パワー型のプレースタイルに変化しつつあり、迫力はあるが、単調でもあった。その点、唯一無二だったと言える。

 単純に右サイドからのクロスはJリーグナンバーワンで、多くのチャンスを演出した。また、性格的にも明るく腐らず、チームの礎となっている。32歳で日本代表初招集は称賛に値する。ちなみに次点は脇坂泰斗、家長昭博(共に川崎)。

原山裕平(サッカーライター)

MVP:水沼宏太(横浜FM)

 過去2年は途中出場から流れを変える役割を担っていたが、スタメンで出られないもどかしさもあったという。しかし今季はその悔しさを晴らすかの如く、堂々と右ウイングのスタメンを確保した。

 精度の高いクロスでアシストを連発し、ゴールの数はキャリアハイに並んだ。大事な場面で結果を出す勝負強さも示し、貴重な勝ち点をいくつももたらしている。

 2020年のオルンガ(柏)や、昨年のレアンドロ・ダミアン(川崎)のように強烈なインパクトを放ったわけではないものの、チームに対する貢献度は彼らにも引けを取らないだろう。3年ぶりの優勝は、常にポジティブなこの男の存在が大きかったはずだ。

中山 淳(サッカージャーナリスト)

MVP:家長昭博(川崎)

 本来なら優勝した横浜FMから選びたいところだが、ターンオーバー制を採用した横浜FMには、突出した個人成績を残した選手はいない。逆に言えば、そこが強行日程の今季を制した理由のひとつになるが、最終節まで優勝を争った2位川崎には、リーグ戦全試合に出場しただけでなく、ゴールとアシストを量産した怪物がいる。それが、2018年の年間MVP受賞者でもある36歳の家長だ。

 今季の川崎は、近年続いた主力の海外移籍や故障者の影響もあり、昨季までのような絶対的な強さを失っていた。そんななか、最後まで優勝の可能性を残せた最大の要因となったのが、家長のパフォーマンスだった。そういう意味で、今季のMVPに選びたい。

浅田真樹(スポーツライター)

MVP:エウベル(横浜FM)

 正直、今季のMVP選びは難しい。横浜FMは、選手のローテーション起用が顕著だったため、選手個人の印象が分散してしまい、川崎の選手にしても、昨季までのインパクトが強すぎるあまり、どうしても物足りなさを覚えてしまう。

 だからといって、その他のクラブに、一昨季のオルンガのような突出した活躍を見せた選手がいたわけでもない。

 最終的には岩田智輝とエウベルで迷ったが、際立った個人能力で局面を打開することの多かったエウベルを選んだ。

 エウベルは、新加入となった昨季からスピードやポジショニングのうまさは目立っていたものの、フィニッシュ時にバタつく印象が否めなかった。しかし、今季はプレーに落ち着きが生まれ、スピードを生かしたドリブルから多くのチャンスを作り出し、特に手詰まり感のある展開で威力を発揮した。

 攻撃において違いを作り出したという点において、MVPにふさわしい。

今季の活躍も将来性も確かな新人王は?

杉山茂樹(スポーツライター)

新人王:藤田譲瑠チマ(横浜FM)

 チアゴ・アルカンタラ(スペイン)とエンゴロ・カンテ(フランス)、さらにはかつてのジャン・ティガナ(フランス)を足して3で割ったような、従来の日本選手の枠を大きく超えた選手だ。

 父親はナイジェリア出身だそうだが、アフリカというより欧州サッカーの匂いを漂わせる。その独得のボール操作、リズム感、身のこなしは、カタールW杯の舞台でも異彩を十分放てたはず。

 五輪チームに留めておくにはもったいない人材だ。森保一監督には、A代表に抜擢する勇気と余裕が欲しかった。

小宮良之(スポーツライター)

新人王:中野伸哉(鳥栖)

 率直に言って、突き抜けた選手はいなかった。

 リーグ戦での活躍度で言えば、得点ランキング上位の細谷真大(柏)、日本代表にも選ばれたボランチである藤田譲瑠チマ、FC東京でレギュラーを取った松木玖生になるだろう。ルヴァンでの活躍も含めると、18歳の北野颯太(C大阪)も面白い。

 しかし将来性で言うと、田中聡(湘南→コルトレイク)、中野伸哉の2人に非凡さを感じ、最後まで躍進した鳥栖でプレーした後者を選んだ。

原山裕平(サッカーライター)

新人王:細谷真大(柏)

 超大物ルーキー松木玖生、優勝チームで存在感を放った藤田譲瑠チマも捨てがたいが、8ゴールと目に見える結果を出した点で、細谷真大を新人王に推す。

 背筋を伸ばした走り姿が印象的で、鋭い抜け出しとゴール前での落ち着いたフィニッシュワークが光った。

 終盤に失速したのは来季への持ち越し課題ながら、常に危険な匂いを醸す若き日本人ストライカーの台頭を素直に喜びたい。

中山 淳(サッカージャーナリスト)

新人王:松木玖生(FC東京)

 高卒ルーキーとして大きなインパクトを残した松木玖生。期待を裏切らなかったことも含め、今季のベストヤングプレーヤーに選びたい。

 前評判がよかったとはいえ、高校年代とプロとでは、プレー強度、スピード、技術、戦術など、大きなレベル差が存在する。だが、松木は開幕戦からスタメン出場を果たしたうえ、シーズンを通して主軸としてプレー。

 1シーズンを戦うスタミナとフィジカルも申し分なく、来季以降の成長も期待できそうだ。

浅田真樹(スポーツライター)

新人王:松木玖生(FC東京)

 これは松木玖生で文句なしだろう。

 高卒ルーキーにしてJ1で開幕スタメンを勝ち取ったばかりか、その後もシーズンを通してほぼフル稼働。リーグ戦30試合以上に出場し、しかも、その半分以上が先発フル出場だった。並みの19歳ができる芸当ではない。

 インサイドMFのポジションを考えれば、2ゴールという数字に物足りなさはあるが、それを割り引いてもなお、特筆に値するルーキーシーズンだった。